特典DVD 恐怖のかくれんぼゲーム
時計の針が深夜2時をさす。
丑三つ時。そんな時間に俺は、昨日買ってきた映画の中古DVDを見ていた。
その映画は大変有名な作品で、国内外でも大ヒットを記録したファンタジー映画だ。
しかし、その映画には都市伝説がある。
映画のDVDが発売された際、最初の数本にだけ、恐ろしいかくれんぼミニゲームが入っているというのだ。
本来のDVDにも、本編と異なるディスクにミニゲームが入っているが、例のミニゲームとは内容は全く違う。
映画本編とはほとんど関係のない、殺風景な砂漠。メニューには「ギャラリー」「字幕」「ゲーム」の3つの選択肢があり、「ゲーム」を選ぶと、恐ろしいミニゲームができるという。
俺は不覚にも、その隠しゲームが入っているDVDを買ってきてしまったらしい。そして好奇心に負けた今、本編と別のディスクを入れ、画面を見ている。
殺風景で、暗い砂漠が映し出される。スピーカーから、おどろおどろしいBGMが小さく流れている。下に小さく「ギャラリー」「字幕」「ゲーム」と書かれる。やっぱり、と思った。
まず、「ギャラリー」を選択する。
すると、「Cast」の言葉が浮き上がったと思うと、痩せこけ、青白い顔に髭を生やした男の写真が浮かび上がる。まるで犯人の写真だ。
「Next」を選んでゆくと、未知の怪物の絵や、幽霊屋敷のような写真が次々と出てくる。
「なんだ、これ……」
俺はバツボタンを押して、ギャラリーを見るのをやめた。
選択画面に戻り、ついに「ゲーム」を選択する。
スっと、画面が広くなるのを感じた。気づくと俺は、画面の中にあったはずの暗い砂漠の上に立っていた。
「なんだ!へ、部屋が!」
変な冷や汗が出る。緊張で指先が冷たい。
すると、景色が一瞬真っ暗になり、気づくとボロい部屋の前にいた。そして目の前に文字が現れる。
「黒い物体から逃げて隠れろ」
物音を感じると真っ暗な部屋の向こうから、爪をむき出しにして何かが迫ってきた。
慌てて扉を閉め、後ろを振り向く。長い螺旋階段があった。
一気に階段をかけおり、どこに行くかわからないまま、ただ前へと走る。
殺される。直感でそう思った。
俺は今広い屋敷の中にいるようだった。
あらゆる方向に走り、物置を見つける。俺は物置に隠れた。
どのくらい経っただろうか。近くから怪物の荒い息づかいが聞こえる。
マズイ。そう思い、物置の扉を勢いよく開け、また走る。
無我夢中で走り続けると、前に扉が現れた。
どこに続いていてもいい、あの怪物にさえ追いつかれなければ。勢いよく、扉を押し開ける。
「おりゃあ!」
足を止める。
目の前に、先程「ギャラリー」で見た男が立っていた。
「ゲームオーバー」
男はそう言うと、右手に持っていたハンマーを俺に向かって振り下ろした。
テレビから、アナウンサーの声が聞こえる。
「次のニュースです。東京都内の廃墟にて、男性の遺体が発見された事件について、新たな情報が入りました。頭部に殴られたような跡があり、凶器はハンマーの可能性が高いということです。警察は調査を進めていて…」
俺はテレビを止めた。
テレビを見ているうちにいつの間にか寝てしまい、事件の概要を耳で聞いているうちに悪夢に繋がってしまったらしい。夢の内容があまりにリアルだったからか、頭痛がひどい。
一息ついて、俺は朝食の準備を始めた。
ふと、テーブルに目をやる。
夢で見たDVDケースと同じものが、そこにあった。
耳の中に、男の声がこだまする。
「みーつけた」




