これが、本当の悪役令嬢!?
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悪役令嬢ってやっぱりヒロインを虐めたり、ツンツンしてたり、権威を振りかざしたり?
私、エリザベス・ティラー、ティラー公爵家の次女16歳でございます。生まれながらに悪役令嬢らしいのですが、どうやったら悪役令嬢らしいのか全く分かりません……。
何故生まれながらに悪役令嬢なのかと言うと、私がお腹にいる時屋敷に招いた魔女が言ったらしい……。
この子は将来悪役令嬢と呼ばれると……。
魔女の言葉を信じる両親の事もよく分からないけど、悪役令嬢と噂になる前に結婚させて嫁がせようと思った両親は、生まれて早々に友達のマキロン公爵家の嫡男エラン様と婚約させた。
でも両親を酷いと思わないで下さいね。お父様もお母様も私を深く愛してくれてますから。行き遅れるよりは、きちんとした家に嫁がせたいとの親心ですね。
婚約から16年目、悪役令嬢の私にとうとう婚約者から婚約破棄を言い渡されてしまった。
舞踏会の参加者達の視線が物凄く痛い…。
皆様人の不幸は蜜の味、興味津々ですものね。
「エリザベス、君には申し訳ないけど、婚約破棄させてくれ。俺はこちらのマリリンを愛しているんだ!俺の事は諦めてくれ!この書類に署名してくれ」
婚約者のエラン様から婚約破棄の申し出でした。仕方ありません。
「分かりました。了承致します。署名致します」
「え?いいのか?すぐに答えを出して…」
私の即答にエラン様は驚いていた。
「はい。だってそちらのマリリン様を愛しているのですよね?私に邪魔をする権利はありませんわ。お幸せになって下さい」
エランの隣に立つマリリンは俯いている。何故か涙も浮かべている。
「あ、ありがとう」
「それでは私は失礼致します」
用事も終わったし、屋敷に帰り数日後には領地に戻りゆっくりしようと考えながら扉に向かっていたら、大きな声がしました。
「ちょっとまったぁ!!」
「「「……!?」」」
その声に招待客は驚き一斉に視線を向けた。
「エリザベス嬢お待ち下さい!!」
ヒューイ殿下、どうされたのですか?
この国のヒューイ王太子殿下でした。
「エリザベス嬢は婚約破棄された今はフリーの身ですよね?僕は貴方に婚約を申し込みます!」
金髪の青い目の王子様はエリザベスの前で膝をついている。エリザベスがYESと答え、手を差し伸べるのを待っている。
そんな最中……。
「ちょっと待ったぁ!!」
またまた?どうした?どうした?
「エリザベス嬢には俺が婚約を申し込もうと思って婚約破棄の話を聞き急いでエストリア国から来たんだ!」
「ちょっと待ったぁ!!!
エリザベス嬢はフリーなんだ!俺にだって立候補する権利はあるはずだ!」
実はエリザベスは自国、他国含めて人々から人気があった。小さな頃から両親について他国に行った為、言葉も覚え、数ヶ国語を理解している。
素直さと美貌に加えて頭脳明晰で身体能力まで高いエリザベスに出会った者は、男女共にすぐに隠れファンになった。なぜ隠れファンなのかは不思議だが……。
婚約破棄会場は『ちょっとまったぁ!』の言葉があちこちから聞こえた。
「皆様、お気持ちは大変嬉しく光栄に思いますが、この場でのお答えは出来かねます。私は明日領地に両親と戻りますので、この件は領地の執事に問い合わせ願います。
それでは皆様失礼致します」
エリザベスは素晴らしいカーテシーをし、その場を去ろうとしたら、今度は元婚約者が声を上げた。
「エリザベス!お前遊び人の悪役令嬢だったんだな!?婚約破棄したばかりのこの場で沢山の男どもに求婚されるなんておかしいだろう!!」
会場は一段と静まり返った。
そんな時、マリリンがエランの左頬を殴り、上からは拳骨を食らった。
「……!?」
「やめてください!」
「やめないか!」
2人の声が重なった。
マリリンとエランの父マキロン公爵の声。
「エリザベス様は私の憧れの方です!その方を貶める言い方は大好きなエラン様でもやめてください……。
私はエラン様を好きになり、私のせいで婚約破棄されるのも本当は辛いんです。私は愛人の立場だって良かったんです。
…… でもこの子を孕ってしまって。どうしたら良いのか分からなくなって……。
エリザベス様!!ごめんなさい!!!」
「マリリン様、気になさらないで。私は大丈夫ですから。元気な赤ちゃんを無事に産んでお幸せになって下さいね」
女神のような微笑みでマリリンに声をかけた。
マリリンは優しい言葉に涙が止まらなかった。
「エリザベス、バカ息子が申し訳なかった。今回の件はこちらからキチンと謝罪させてもらう。我が領地は君のお陰で危機を脱しただけでなく、潤わせて貰ったのに…。
本当にすまなかった。」
公爵はエリザベスに深く深く頭を下げた。公爵が小娘に頭を下げる事など普通ではあり得ないが、先代の借金が膨れ上がり、窮地の所を婚約中のエリザベスが知恵を出し、領地経営を一緒に見直し、他国にまで生産品を売り込んでくれたお陰で今の公爵家があるのだから。
それを全く知らなかったのはエランだけだった。
「こいつは領地に連れ戻り再教育をする。マリリン嬢のお腹にはこのバカの子種が宿っているそうだから、責任を取らすよ。申し訳なかった!」
公爵は何度も何度も謝罪した。
「お義父さま…、いいえ、公爵様、気になさらないで下さい。私を認めてくださって私は幸せでした。これからは深い愛情をマリリン様とお子様に向けてあげて下さいませ」
エリザベスは会場を後にした。
♢♢♢♢♢
後日両親と領地に帰り着くと兄が笑顔で出迎えてくれた。
「お帰り、エリザベス!やっと帰ってきたな。先日からお前を娶りたいと沢山の人が屋敷に釣書を持って訪れているぞ。婚約破棄されたとは思えないな。はははっ!」
アンリお兄様は豪快に笑う。
「婚約破棄されたくらいでは、私にかすり傷一つつきませんから、ご安心下さいな。ふふっ。」
エリザベスも笑顔で返す。
今後エリザベスが誰を選ぶのか……。
誰を選んだとしても自分も相手も周りもエリザベス自身が幸せにする事だけは分かる未来に続く。
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