ストーリー:2
こんにちは!ポイントです!
またまたやってきました!お粗末ラブコメ第2弾!!
PS 前回感想くださった方々ありがとうございます!!
「にしてもさ、羽根丘中って聞いたことないよな?」
あの衝撃事件から早一週間が経ったある日の帰り道。
男二人で気持ち悪く歩いていて颯太は不意に感じた。
「あ〜…そいや聞いたことないな。どこなんだろ?」
「お前が知らないのを俺が知るかよ…保志以外にその中学出身のやついないから、どうにもなぁ。俺ら聞こうにも聞けないしな」
あの日から颯太は楓に避けられているのだ。
というよりも睨まれている。
最初の笑顔はどこへやら…
それに見かねた誠が一度近づこうとしたのだが、
彼いわく
「…あの、ごめんなさい」
と話す間もなく避けられたそうだ。
理由は多分、颯太といつもつるんでいて、彼女の[ヤバイ人リスト]にでも勝手に登録されてしまったのだろう。
そして、やはり容姿端麗で性格もいい人の近くには、たくさんのファンが付き物のようで休み時間になるたびに彼女の周りは男女関係なしの人だかりが、できており、彼女が颯太たちを避けているのを知っている彼らは暗黙の了解のように避けているのだった。
もはや恋だの言ってられない。
「はぁ〜あ」
かっこ悪くため息だって出ちゃうさ。
「ま、女は保志ちゃんだけじゃないって〜…そんな気落とすなよ。じゃな」
とか言いつつ、誠の背中はどことなく元気がなかった。
きっと女子相手には百戦錬磨(顔も悪くないし、背だってある)のプライドが、楓も見向きもしない態度で見事に砕け飛んでしまったのだろう。
おいたわしや、おいたわしや。
心の中で友に同情をしつつ自分も帰路についた、その時
「安岐くんっ!」
「ぬぉわ!」
突如、後ろから名前を呼ばれ、肩を叩かれ、マヌケにも驚いてしまった。
「あは!驚いてる驚いてる♪」
ヒラヒラと手を振り、少女は楽しげに笑ってみせた。
「安岐くんも、こっち方面なんだねぇ〜。私もこっちなんだぁ」
格好は颯太と同じ学校の制服で顔は…どこかで見たような?
でも
「コイツ誰だっけ?」
「!?」
「みたいな?」
コイツ、人の考え、読みやがった!
しかも可愛らしく小首まで傾げてやがる!
ちょっとだけドキッ!
読みが当たったとわかったのか、イタズラっぽく笑ってみせ、
「超能力ッス♪…なぁんちゃって。冗談だよ。顔に書いてあるよん?」
…そんなに俺は顔に出るんだろうか?
ちょっと悲しくなった。
「でもひどいなぁ。ちゃんと自己紹介してたのにぃ」
今度はむくれてみせる。
表情がコロコロ変わる子だな。
少女は、颯太の少し前で足を止め、くるりとスカートを翻して、回れ右をして振り向いた。
「では改めて自己紹介!私の名前は白崎凌央!西中央出身で好きなものはアンチョビといもけんぴ!夜露死苦☆」
一気にそれだけハキハキと言い、挨拶(特に夜露死苦らへん)に合わないスカートの裾を、ちょんと持ち上げ、足をバレリーナみたいに組んで、お辞儀をした。
「よ、よろしく…」
控えめに返事をする颯太の両手を無理やり握り締め
「よろすぃく!よろすぃく!」
肩の関節から抜けそうな勢いでブンブン振り回す。
…人間、踏ん張れる足があって良かった良かった。
が、しかし
…――ゴキ!
大変いい音をたてて、関節は外れたのだった。
「んもぅ、安岐くん。これくらいで関節外してちゃダメだぞ!修行がなっとらん!」
痛みに悶える颯太を見て、半笑いで肩に手を添え、
―コキッ☆
治してみせた。
自分で他人の関節外しといて、さらに自分で治してみせた。
てか、女の子に関節外される俺って…
関節ついでに男のプライドも密かに壊された颯太に
「あ〜…まぁ、そんなに落ち込まずにさ。私、みんなの中では力あるほうみたいだから、たまたまだよ。だから元気出してさ」
それくらいで戻るほど安くはできてないのだ…くすん。
「ありゃ?マジへこみですか…じゃあ仕方ない!」
グイッ
「お、おい!また関節が…」
「大丈夫、大丈夫!今度はちゃんと調節してるから。それより速く速く」
確かにさっきのバカ力ではない力で引っ張られている。
二人の帰り道。
この先は確か…
「ふぅ〜着いた着いた」
到着したのはコンビニで、ここは颯太もよく行く場所だった。
店内に入ると、やる気のない店員の挨拶と最近よく聞くJ-POP。
凌央はすぐさま菓子コーナーへ走っていく。
待っている間、雑誌でも読んでいようと足を向けると
「安岐くん!こっちこっち!」
そんなに広くもない店内で大声で呼ばれ、周りの客の冷たい視線を浴びつつ、渋々でも大また凌央のほうへ行く。
「そ、そんなに大声出さなくても聞こえてるよ。何?」
さすがにここまでくると颯太でも頭にくる。
「あれ?不機嫌?」
そりゃ不機嫌にもなるさ。てか空気読め!
「ん〜、まぁ、いいや。あのさ何買おうか迷ってたんだ。何かおススメある?」
颯太的にはどうでもいい。てか早く帰らせろ!
だから
「じゃあ、これでいいんじゃね?」
というわけで押し付けたのはメジャーな赤い袋パッケージのお菓子(うす塩味)。
ジャガイモが国産とかなんとか…
「じゃ、俺帰るから!」
踵を返し、店内から出ようとする颯太に
「ちょ、ちょっと待ってよぅ!」
凌央の声が後から追いかけたが遅かった。
外に出ると西の空が少し赤くなって夕方を知らせている。
学校が終わって、すぐに帰路に着いたはずなのに、こんなにも時間が経っていたらしい。
「さて、アイツが来るまでに帰…」
「安岐くん!」
大急ぎで出てきたのか息を切らせながら凌央が追いついてきた。
いい加減、我慢できん。
「〜あのな!」
「はい!これ!」
キレようと勢いよく振り返った鼻先に突きつけられたのは、さっきのお菓子。
「あのね安岐くん、さっきはゴメンね。安岐くんと話せてあんまりにも嬉しかったもんだからつい舞い上がっちゃって…だから、これ…」
なるほど。それで突如コンビニか…
さっきまでの気持ちが一気にクールダウン。
「その…俺もさっきは悪かったな。…怒ったりして」
申し訳なさそうにうつむいていた顔をパァーと輝かせて
「うぅん!全然気にしてないよ!良かったぁ」
などと言うもんだから颯太も許すしかないってもんだ。
結局その日、家に帰りついたのは夕飯前。それまでずっと近くの公園で話していた。
帰り際に、ケイタイの番号とメルアドを交換して、この日はずっとメールをしていた。
『じゃあ明日また学校で』
可愛らしくデコられたメールでこの日は眠りについた。
また明日になれば白崎に会える。
そんな当たり前のことが無償に嬉しくて颯太は明日を楽しみにしながら眠りについたのだった。