天より来たりて
「う、うおおおお!?」
舞う粉塵と、粉砕されて飛ぶ土。爆発じみたその現象に、オーガナイトたちを含む誰もが動きを止めてその中心を見る。
オーガナイトが潰され弾け飛んだ、その場所にあるのは……巨大な金属の筒……のようなもの。パシュン、と軽い音をたてて展開していくソレから出てきたのは……銀の長い髪をたなびかせる少女だった。
紀伊を庇うように立つその少女の顔は、紀伊には見えない。しかし響いてくる感嘆の声から相当の美少女であることは簡単に想像できて。しかし、そんな少女がメイド服と呼ばれる類の服を着ているのが紀伊の思考を混乱させる。
「アイン、現着。攻撃を開始します」
少女が取り出したのは拳銃……リボルバーと呼ばれる類の武器だ。
幻想過渡期において真っ先に廃れた「ガラクタ」を、アインと名乗った少女はオーガナイトへ向ける。
「貫通式弾頭、発射」
ほぼ連続で響く銃声、そして衝突音。しかし「銃」と呼ばれる武器を過信した者達の末路は教科書でも教えている。ショットガン、マシンガン、その他諸々。どんな「銃」も「弾」も、モンスターの前では無力だった。
だというのに。そうだというのに。
「効果・中。予測した結果を下回っています」
グラリと、力を失ったようにオーガナイトの1体がアーマーボアから落下する。主を失ったアーマーボアは恐怖したようにアインから背を向けて逃げ……その途中で、イラついた様子のオーガナイトリーダーに叩き潰される。
もう、他の戦闘音は聞こえない。街の門は閉められて、増援も期待できない。
そんな中、アインとオーガナイト達だけが立っていた。
「マスター、立てますか?」
「君、は……」
「自己紹介は後程。当機の現在の戦力では、あのリーダー個体を打倒できません」
「……!」
いとも簡単にオーガナイトを屠ったアインでも、オーガナイトリーダーを倒せないと言う。その事実に紀伊はゾッとするが……それでも、なんとかレイブレイドを握って立ち上がる。
「今は当機を警戒していますが、すぐに自分を倒す力がない事に気付くでしょう」
「なら、どうすればいい。俺の腕じゃアイツに当たらないかもしれないぞ」
「同意。マスターの現在の身体能力ではリーダー個体に掠りもしないでしょう」
「ならどうするんだ」
「レイガンの解放を。時間は当機が稼ぎます」
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