マスター・キィの建国8
キィがメッセージを伝えてから、およそ1か月後。
あの時来た冒険者パーティが、今度は真正面からやってきていた。
門をじっと見つめる彼等をキィは監視カメラで見て……そのまま、武装ドローンを飛ばす。
やがて門を越え辿り着いた武装ドローンに、剣士の男が叫ぶ。
『マスター・キィ! 俺はギルス! 今回は周辺都市からの使者として来た!』
ドローンを通じて聞こえてくるその言葉に、キィは思わず首を傾げてしまう。
「……周辺都市? やけに時間がかかったと思えば、そんな事してたのか」
「ま、当然でしょうね。1つの町でやるには話のデカすぎる交渉だもの」
「そうか……」
「でも、逆に言えばそう思わせたって事。ここまでは順調ね」
キィは頷くと、マイクをオンにする。
「マスター・キィだ。使者とのことだが、どのような要件だ?」
『直接会って話をしろと言われている。開けてもらえるだろうか』
「悪いが、そこまでの信頼関係が築けているとは思っていない」
『国王なんだろ!? ビビってんのか!』
『おい、やめろ。俺達は使者なんだぞ』
『でもさあ! 直接話も出来ないってんだぜ!』
『やめろ。すまない、腕がいいから連れてきたんだが……失敗だった。心から謝罪する』
マイクをオフにした状態で、ナルミが溜息をつく。
「……茶番ね」
「グッドコップ&バッドコップ……だったかな?」
「何それ」
「昔ドラマか何かで見たんだけどな。善人役と悪人役を用意して、善人へのイメージアップを計るとかなんとか。違ったかもしれん」
「まあ、言いたいことは分かる。それで仲良くなって情報を引き出す、と」
「ああ。まあ、前回も暴走したあの子を連れてきたのは、そういうことなんだろうな」
そこで再びマイクをオンにして、キィは告げる。
「ああ、ビビっているよ。使者として来たのにケンカ腰の挑発。更には国王と認識していながらの罵声。使者じゃなくて暗殺者かと思った」
『なっ……!』
「用件があるなら、そこで言ってくれ。言えるような内容なんだろう?」
剣士の男は少し迷うような様子を見せると、「では……」と切り出す。
『周辺都市のそれぞれの長は、ジパングと話し合いを持ちたいと考えている。エルンの町で』
「断る」
『な、何故!』
「言っただろう。そこまで信頼関係が築けていると考えていない」
呼び出されれば、確実にこちらを潰しに来るだろう。
ならば、要求すべき事は1つだ。
「こちらで話し合いの場を持とう。そちらの権限ある代表者を寄越してほしい。こちらも歓迎の準備をしておこう」




