マスター・キィの彷徨い3
「……どういうことだ?」
見えているのにアレイアスのサーチを潜り抜けている。
それはつまり……そういうスキルの効果ということだ。
「アレイアス。当機とマスターの視界に人型生命体を1確認。速やかな捕捉を要請します」
―映像による再確認終了。付近に人型生命体を確認できません―
そんなはずはない。キィの目にも、アインの目にも見えている。
なのにアレイアスにだけ確認できない。
それは一体……?
「アレイアス。再度の捕捉を要請します。報告する座標に人型生命体が存在すると仮定し、あらゆる方法でサーチを実行してください」
―要請受諾―
「アレイアスが映像で確認できないのに、俺達には見えている。ということは……」
「見せている。そういうことですね」
「ああ。しかし……」
入ろうとして入れないのか、車体にペトリとくっついているのがキィにもアインにも丸見えで、その姿がなんとなくおかしく見えてしまう。
「……もう少し放っておいても良い気がしないか?」
「あまり趣味がよろしくないと進言します」
「それもそうか」
頷くと、キィは外部へのスピーカーをオンにする。
「あー、そこの人。何か用か?」
『あ、やっぱり中にいるのね!? ちょっと、これドア何処よ⁉』
「知らない人を簡単に中に入れられないよ。君は誰だ?」
『アンタが知らなくてもアタシはアンタを知ってるわ』
前の町での知り合いか、とキィは一瞬考えるが……そんな知り合いは記憶にない。
なら、一体誰なのだろうか?
「すまない。記憶にない……誰だ?」
念のためアインに視線を向けてみるが、アインは黙って首を横に振る。
『アンタ……アースワーム倒したでしょ?』
「それを知ってるってことは、前の町の関係者か」
『違うわ』
キィの言葉を、少女はアッサリと否定する。
しかし、それならますます分からない。
一体この少女は何者だというのか?
『あのアースワームは、アタシの配下よ』
少女から放たれたその言葉に、キィは思わず座席から腰を浮かしかける。
アースワームが配下。
なら……この少女はテイマーだというのだろうか?
『一応言うのなら、アタシはテイマーじゃない』
「テイマーじゃない? なら、君は一体……」
『ジョブ無し、妄想覚醒の日暮紀伊』
少女が放つ名前は、確かにキィが捨てたもの。
それをわざわざ今掘り起こす理由。此処にキィがいると知っている理由は。
『……旧時代のものに似て非なる道具を呼び出す、ジョブではないその力……』
少女はゆっくりと、自分の胸に手をあてる。
『アタシがアンタに近い存在だと言ったら……どうする?』