エルンの町2
シンに紹介された宿とは全く違う安宿の一室で、キィはアインと向かい合っていた。
「じゃあ、ここまでの状況を整理しよう」
「はい。まず、このエルンの町は『あの町』を襲撃した一味と同じ、あるいは似通った目的を持つ集団に狙われていると予測されます」
「そうだとして、この町の近くにゴブリンアサシンが潜むような場所はない」
「はい。補足すると町の戦力差に関してもこちらの方が遥かに上です」
つまり、流れを辿るならば次はアースワームによる直接攻撃ということになるが……。
「これも予測になりますが、近日中にアースワームに襲撃される可能性は低いです」
「どうしてだ?」
「町の地面に、何らかの術式が施されているのを確認しました。障壁に該当するものであるという計算結果が出ています」
それを聞いて、キィはハッとしたような表情になる。
「そう、か。アースワームが都市崩しなんて呼ばれているなら、当然それへの対策もある」
「はい。危険度の高いモンスター対策は急務と言えるでしょう。アースワームは相当優先度が高かったと予測されます」
「前に居た町は、本当に田舎だったんだな……」
思わず笑ってしまうキィだったが、すぐにその笑みを引っ込める。
「シンのことはどうだ? 何かに俺を使おうと思ってるのは確実だと思うんだが」
「今のところは警戒して対応するのが一番良いかと思われます」
「……やっぱりそうだよな」
前の町では、マイナスからのスタートだった。
ならば今回は最初から見せつける方法で、と考えていたのだが……どうやら、あまり上手くはいっていない。
「今回の失敗要因はなんだと思う?」
「新しい時代に生きる人間の過大評価です」
「……ハッキリ言うなあ」
「必要な進言であると判断しています」
淡々と言うアインにキィは苦笑する。
過大評価。そうなのだろうか。新しい時代に生きるということは、他人を信用しないということなのか。
いや……あるいは。
「そうだな。いや、ひょっとするとこうなる前から、人間はそうなのかもな」
「……」
「やり方が違うだけで、本当に信用できる人間なんて世界が変わる前から居なかったのかもしれない」
だとすると、なんと空しいことだろうか?
世界の変化は、そんな人間の本性をより赤裸々にしただけなのだとしたら。
それなら……人間は。
「……アイン」
「はい」
「俺は、どう生きるべきだ?」
「助言は出来ます。ですが、最終的に決めるのは」
「俺か」
「はい」
「そうか。そうだな……」
キィはそのまま、しばらく喋らず。アインもまた、同様であった。




