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囚われの紀伊

「お前がアイテムボックスを奪った事は分かっているんだ。さっさと奪ったアイテムを出せ!」


 取調室に響く怒号は、紀伊が犯人だと確信しているに違いないと思わせるものだった。

 何度も叩かれる机はしかし……逆に紀伊を冷静にさせていく。

 ゴミを見るような目も、あまりにも慣れ過ぎている。


「アイテムボックスか……そんなものが奪われたのか」

「他人事みたいに言いやがって……!」


 アイテムボックス。それはマジックアイテムの中でもかなり高価なもので、最低ランクでも中級以上に位置する。

 空間魔法によって制御されていると言われるが、具体的には見た目よりもずっと大きな容量の物品を保管する事が可能なマジックアイテムだ。

 上級以上に分類されるアイテムボックスともなれば使用者と融合し、本人が死んでも再び分離することはないとすら言われている。

 つまり……と紀伊は想像する。


「そうか。上級以上のアイテムボックスが奪われたんだな。だから俺を殺さないんだ。アレは殺したら中身を永久に取り出せないって噂だしな」

「……!」

「隊商の荷物を奪った奴からすればカモネギだな。お宝と運ぶ手段が全部揃ってるんだから」

「貴様ァ!」


 顔を殴られ、凄まじい打撃音が響く。

 紀伊は今、アシストスーツを着用していない。だからこそ「ステータス」で強化されている取調官の打撃は恐らく取調官本人が想像していた以上に響き、紀伊の身体は壁に強く叩きつけられる。


「お、おい! 殺したんじゃないだろうな!」

「こんなクズ、殺してもいいだろう!」

「ダメだ! 溜め込んだアイテムを吐き出させなければならんと言われただろう!」


 痛みでグラグラとする意識の中で、紀伊は思う。

 なるほど、隊商が全滅したのも荷物が奪われたのも、どうやら事実であるらしい。

 そして、それが未だ見つかっていないのも。

 となれば……確かに上級のアイテムボックスもその中に混じっていたのだろう。

 マスターキーによってアイテムを取り出す紀伊が「そう見えた」のも理解できる。


―マスター、警告を。その場に留まった場合、100%に極めて近い確率でマスターは死亡します―


「はは……マジか」


―直接サポートユニット・アインの要請を受け超広域スキャンを実施しました。マスターが入手された情報を加味し、犯人の絞り込みを開始しています―


「そうか、それなら……」

「何をブツブツ言ってやがる!」


 転がる紀伊に蹴りを入れてくる取調官を見上げ、紀伊は血を吐きながらもニヤリと笑ってみせる。


「犯人が分かると言ったら……なあ、どうする?」


 紀伊のその言葉に……2人の取調官は、思わず顔を見合わせていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 科学捜査なんぞ無い時代の犯罪捜査なんて怪しいやつや立場の弱い奴を拷問して自白させて犯人に仕立て上げる事が多いけど、それが常識にしては主人公呑気すぎるなあコイツラが異常なのか主人公が常識が無い…
[一言] この物語の舞台は力こそ全てな世紀末世界なのかな 全く法治国家には見えないのだが…
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