順調な狩り
それから数日後。
森の街道の先で街道整備や護衛、そしてそれを襲ったと思われるモンスター達の死骸が見つかったというニュースで町が騒ぎになっていたが……紀伊とアインはそれを気にすることなく、モンスター狩りに勤しんでいた。
今日は森とは反対方向にある荒野に出現する岩の身体を持つモンスター、ロックワーム狩りだ。
幾つかの小さな岩が集まった不定形なモンスターだが……蛇やミミズのような姿をとることが多いことからそう名付けられている。
身体を構成する岩を飛ばす攻撃が厄介な上に堅く、それでいて有用な素材が何も取れないことから経験値稼ぎとしては効率の悪いモンスターと見做されている、のだが。
「ROOOOOOOOOOOO!」
叫び放たれる岩の群れを、放たれた光線が撃ち砕き、本体であるらしい頭部をも光線が撃ち抜く。
制御を失い崩れていく岩の身体を見ながら、それを放った男……紀伊は小さく息を吐く。
「お見事です。威力の調整も完璧です」
「まさか思考制御とは思わなかったけどな……」
苦笑しながら紀伊は手の中のレイガンを示してみせる。
レイガン。文字通りの光線銃だが、威力調節用のレバーもボタンもつまみもなく、威力は紀伊が意図的に「このくらいの威力」と思考することで調整されていた。
とはいえ、最大威力には制限があるようで……最初に紀伊がオーガナイトリーダーを倒した一撃が最大威力であるようだった。
「……とはいえ、あまりコレも乱射は出来ないな」
「はい。当機はマスターの懸念を肯定します」
レイガンは確かに威力は申し分ない。
ないが……放つと多少であるが疲労が蓄積する。
それはアイン曰く、僅かではあるが紀伊の生命エネルギーを削っているからであるらしい。
「しっかり休めば回復するものではありますが、レイガンはレイブレイドよりも生命エネルギーを多量に消費します」
「ま、そうでなきゃ便利すぎるものな、レイガン」
究極的な話、エアバイクに乗ってレイガンを乱射すれば勝てない相手はそんなにいないのではないかと紀伊は考えている。
アシストスーツで強化された身体能力をもってすれば、騎乗射撃も十分に可能だ。
しかし、それをするにはレイガンは少々疲れるのが早すぎる。
「普段使いはレイブレイド。これは確実だな」
「はい。そしてそのサポートの為に当機は存在します」
「ああ、任せたアイン」
「了解しました。対物破砕弾、実証開始します」
銃撃音と、レイブレイドがロックワームを切り裂く音が響く。
そして……。
「あり得ねえ……なんだ、あの武器……?」
岩陰から見ていた男もまた……1人。
それが何をもたらすかは……その日のうちに、分かることになる。