反動
いや、「ように」ではない。実際に、全身から力が抜けているのだ。
前回撃った時にも動けなくなってしまったが、それよりも更に酷い感じだ。
「全然動けないぞ……どうなってるんだ、これ」
「アレイアスに問い合わせ完了。レイガン使用の反動です」
「反動?」
「はい。レイガンを最大出力で撃つ際のエネルギーの不足を、マスターの生体エネルギーより補填しています」
「ごめん。初耳の事が多い。つまり?」
「出力調整が必要です」
最初に説明してくれ……と言いたくなる紀伊だが、威力が威力であるだけに文句を言えない。
「まあ、その辺の説明は後で聞く。それよりこの後、どうするかが問題だよな」
指揮官と思われるコボルトキングは倒した。
しかし、この後どうしたものか?
こんな巨大な死骸を持って帰るのは、少しばかり辛い。
そもそも討伐したと言って信用して貰えるだろうか?
―アレイアスより要請。新規解放可能な機能があります。解放しますか?―
「え? いや、待った。何が出来るんだ?」
―エアバイクtype1・タトライズを使用可能です―
「えあばいく」
―地上の僅か上を重力制御により疾走可能な移動用ユニットです。地形に左右されにくいですが、他タイプと比べると走破性に欠けます―
よく分からん。それが紀伊の感想だった。
かつての科学時代にだってそんなものは無かったから仕方ない。
しかし、あれば相当便利であるのも理解できているし、相当目立つであろうことも理解できた。
「……分かった。やってくれ」
―了解しました―
「おっぐあああああああ! きたあああああ!」
痛みにのたうち転がる紀伊を支えながら、アインはじっと考える。
エアバイクは現在の魔法文明からしてみれば、異質に過ぎるものだ。
一定以上の年齢層からすれば科学文明に属する何かであると……実際には違うが、そう予測するのは容易であろうし、目立つのは間違いない。
そして、紀伊がそれに気づいていないはずもない。
「目立つつもりですね、マスター」
「え? ああ。そのつもりだ」
「確かに、エアバイクはマスターが今までのマスターではないと知らしめるのにこの上なく最適です。しかし」
「狙われる危険性も高くなる……だろ?」
「肯定します」
「それでなんだが、実際俺の武器とか道具って奪えるのか?」
「不可能です」
レイブレイドもレイガンも……アレイアスも、紀伊の能力として生じたものだ。
いわば紀伊の一部であり、それを奪う事など不可能だ。
「なら、安心だろ? 精々派手に帰ろう」
コボルトキング討伐の栄誉は捨てることになる。
しかし……コボルトキングによって得たエアバイクは、それに勝る結果を得るであろう事は、アレイアスに計算を要請せずとも簡単に分かる事だった。