オーバーキル
そうして、紀伊達が森を進んだ先。森の中を突っ切る街道が終わろうとする、丁度その辺りに「何か」がいるのを発見していた。
当然、サーチでそれを知っていた紀伊達は馬鹿正直に街道を進む事はせずに森の茂みの中を進んで様子を伺っていた。
そして、そこにいるのはオーガ達と……それに護衛されているように座っている、巨漢の犬頭を持つ人型モンスターであった。
纏っているのは立派な金属の防具……そして、大抵のものは真っ二つにしそうな大剣を持っている。
「アレって……」
「ゴブリンとは特徴が一致しません」
「コボルトだな。それもコボルトキングだ。まさかアレが指揮官なのか……?」
言いながら、紀伊は考える。
町を襲ってきたのはオーガナイトリーダー率いるオーガナイト達。
森の中に潜んでいたのはゴブリンアサシン。
そして今、視線の先にいるのはコボルトキング。
モンスターとはいえ、種族がバラバラだ。
「周りに居るのは……オーガが4体、か……」
「何か違和感が?」
「いや、普通のコボルトが居ないなって思って。普通キングは自分の種族を従えてるものだと思ったから」
「確かに周囲にコボルトはいませんね」
「……アレイアス。サーチを」
―非常に近い距離に5体。そのうち1体は強力なモンスター反応です―
やはり、周囲に別のモンスター反応はない。
となると……この集団のリーダーはコボルトキングで間違いないということになる。
「……マスター。コボルトキングの座っているアレは、人間の死体ですね」
「は?」
言われて初めて、紀伊はコボルトキングの座っているモノを注視する。
今までコボルトキングの威容に圧倒されて気付かなかったが、確かにコボルトキングが座っているソレは……人間の死骸を集めて重ねた、そんな悪趣味なものだったのだ。
「うっ……」
思わず吐き気を催し、紀伊はなんとか耐え抜く。
何故コボルトキングがあんな所にいるのかは分からない。
しかし、分かることもある。アレは間違いなく人間の敵で……此処で、倒さなければならないということだ。
「……アイン。やろう」
「はい、マスター。お望みのままに」
アインが応え、紀伊は動き出そうとして……しかし、アインに肩を掴まれ止められる。
「ど、どうしたアイン?」
「提案。レイガンの使用を推奨します」
「レイガン? いいけど……でも此処でアレを出すと」
光るから確実にバレないか、と。そう言う紀伊にアインは「問題ありません」と答える。
「そ、そうか? なら……マスターキー解放」
紀伊の腕から発され展開していく光は、当然のようにオーガやコボルトキングの注意を引いて。
「レイガン、展開完了!」
「オガアアアアアアアア!」
コボルトキングの指揮の下、襲い掛かってくるオーガ達へと紀伊はレイガンを向ける。
そして……発射された光線はオーガを、そしてその先にいるコボルトキングをも貫き、一撃で絶命させる。
「……は?」
「御覧の通りです。何も、問題ありません」
「いや、問題しかないだろ……」
全身から力が抜けたように座り込んでしまった紀伊がそう呟いたのは……無理もない事だろう。