アシストスーツtypeα
そしてアインの誘導に従いながら、紀伊とアインは森の中を駆けていた。
途中襲ってくるゴブリンアサシンは、すでに敵ではない。
(分かってみれば単純だ。力も強くないし……必ず死角を狙ってくる)
囮のように正面から襲ってくるゴブリンアサシンは怖くもなんともない。
レイブレイドを振るえば打ち勝てるのだ。真正面から来るのであれば、今の紀伊でも十分に当てられる。
そして……紀伊に視認できない敵は、アインの銃撃が撃ち倒してくれる。
「うおおおおお!」
「ゴブッ!」
「ゴブアアアッ!」
レイブレイドが光の軌跡を描き、ゴブリンアサシン達を打ち倒していく。
森の中に何故これほどのゴブリンアサシン達が潜んでいたのか。
それは分からないが……もはや街道整備の人間が襲われた理由はハッキリした。
これ程の数のゴブリンアサシンがいたのでは、覚醒していても逃げる事すら難しかっただろう。
―アシストスーツtypeαの機能を解放します―
「ぐおっ!? き、きた!」
「サポート強度を高めます」
インストールの痛みに動きを止めた紀伊を庇うように、アインは銃を撃つ速度を高めていく。
リボルバーという装填に手間のかかる武器を使いながらも、それを感じさせない装填速度。
それはかつてオートマチックと呼ばれる形式の銃が存在した頃のそれと、何ら変わりない……いや、超える程の速度を実現していた。
「速射式弾、残数ゼロ。通常弾に切り替えます」
弾種の変化により生まれるのは、恐らくはコンマレベルでの攻撃速度の誤差。
しかしそれをアインは許容しきれず……不満そうに僅かに眉をひそめる。
「……効果・中。予測結果と一致します」
紀伊のサポートをするには、まだまだ弾数も弾種も足りていない。
しかし……こればかりはアイン単体でどうにか出来る問題でもない。
(アレイアスに依頼してはいますが……何より優先はマスター。仕方のない部分ではあります)
紀伊の基本武装がレイブレイドである以上、アインのサポートは中距離中心にならざるを得ないし……何より、アインの基本能力もそれに準じている。
それに不満はない。アレイアスが「紀伊はそうなる」と予測しているのだ。
ならば、そうなるであろうことは間違いない。
「アシストスーツtypeα、展開完了!」
紀伊の服が全く別の何かに変化して……隙を狙ったらしいゴブリンアサシンのナイフが、アッサリと弾かれる。
「すげえ……なんだコレ!」
今までよりも格段に速度の上がった紀伊の一撃がゴブリンアサシンを切り裂く。
強くなった。それを確実に実感できる……そんな変化だった。