期待が重い
「……モンスターは」
「ん?」
「通常の生態系に属してはいません。確かな実体を持ちながら、生命が通常持つべき進化の系統樹に属さない……文字通りのアンノウン。故に、殲滅の可能性は非常に低いと言わざるを得ません」
それは、ずっと言われてきたことではある。モンスターが何処から来た何者なのか。その謎は解けないまま、現在では「そういうもの」とされている。
科学が滅びてから、そんな理屈っぽい事を考える者は少なくなってきてもいる。
「あー……つまり、アレだ。モンスターがいる日常を受け入れて生きていくしかないってわけだろ?」
「はい。そしてマスターの生活向上の為、モンスターをなるべく多く狩る必要があります」
「だな。俺がモンスターを倒せば『戦闘母艦アレイアス』の機能が解放される、だったよな?」
「その通りです。もっと正確に言えば必要な『経験値』の蓄積により解放される、です」
言いながらアインは銃を抜き、飛び掛かってきたグラスウルフを撃ち抜く。
3体のグラスウルフをそれぞれ一撃。アインの腕に、紀伊は思わず息をのんでしまう。
「……そうすれば、当機による直接サポート能力も向上します」
「そりゃ頼りになるな」
「はい。ところでマスター」
「ん?」
「此処で戦えば自然と官憲の興味を引きますが。よろしいのですか?」
なるほど、紀伊の視線の先では門番をしている衛兵がじっと興味深そうな目で紀伊達を見ている。
普通ならば目立ちたくないだろう、と。そうアインが気を使ってくれているのは明らかだ。
「いや、それでいい。見えない所で戦っても、アインに頼り切りだとか……最悪手柄を奪ったとか言われるしな」
「……否定はできません」
「だろ?」
だが、此処であれば紀伊のレイブレイドも否が応でも衛兵の目に入る。そこから始まるかもしれないトラブルを考慮に入れても、今は紀伊の戦いを見せておく方がいい。
「俺が戦う力を手に入れた。それをまずは認識してもらわなきゃな」
「了解いたしました。では当機はマスターの援護をメイン行動に設定します」
「ん?」
「マスター、ご武運を」
「お、おう」
それはそれで期待が重いな……とは、口が裂けても言えはしなかった。