覚醒の真実2
「でも俺にはステータスもないんだぞ?」
「はい。確かにステータスは有能な特殊能力です。レベルを上げる事で身体能力が強化され、それによるデメリットもゼロ。非常に大きな恩恵です」
それが紀伊にはない。それはアインも認めるところだ。しかし、とアインは考える。
「ステータス、ジョブ。それらによって得られる全ての恩恵が戦闘母艦アレイアスと釣り合っているのでは、と。当機はそう判断いたします」
「釣り合ってる……?」
「はい。それ故にマスターはステータスもジョブも得られない。いえ、得る必要がないと判断されたのではないでしょうか」
「判断って……何に?」
「覚醒なるシステムに、です」
なんだか難しい話になってきた。そんな事を思いながら紀伊は頬を掻くが……それならば、とも思う。
「もしそうなら、なんでアレイアスとやらは今まで俺に健康診断みたいな機能しか渡してくれなかったんだ?」
せめてレイブレイドだけでもあれば随分違ったのに、と紀伊はぼやく。
レイブレイド。あの光の剣だけでも紀伊にあれば、無能だとか覚醒詐欺だとか妄想覚醒だとか、そういった事を言われずに済んだはずだ。
勿論アインが悪いわけではない事は分かっている。
分かっているが……紀伊は、そうぼやかずにはいられなかった。
「それに関してですが……通常の人間が得る『経験値』がマスターの場合、戦闘母艦アレイアスに流れているのだと判断します」
「えっ、それってアレか。俺じゃなくてアレイアスがレベルアップする的な」
「はい。ただし機能の解放、が正しい表現であると進言します」
「機能の解放、ねえ……」
レベルアップには資質により限界がある、とも言われている。もし戦闘母艦アレイアスなるものが紀伊の資質の限界であるのならば……それは相当高いのではないだろうか?
「だとすると、さっきの戦闘で何かの機能が解放されててもいいんじゃないか?」
「当機の起動により、一時的にサポートシステムがダウンしています。まもなく復帰するものと思われますが」
―機能回復。レイガンの使用を確認。レイガンのオプション機能を解放します―
タイミングよく紀伊の頭の中に響いたのは……そんな、アレイアスからの「声」だった。




