覚醒の真実
「あ、うん。よろしく……」
頭を下げるアインにつられるように紀伊も頭を下げて。すぐに「いや、待ってくれ」と声をあげる。
「さっきも言ったけど、どうなってるのか何も分からないんだ。1から説明してほしい」
「1から、ですか。しかし何を『1』と設定すればよろしいのでしょうか」
「何をって」
言いかけて、紀伊はハッとする。確かに何から説明してもらえばいいのか。
アインのこと? 戦闘母艦とやらのこと? それとも……。
考えて、紀伊は一番最初に聞くべき事に思い至る。
「そうだ。マスターキーのことだ」
「マスターキー……マスターのお持ちになっているソレのことですね」
「そうだ、それだ。俺はこれを『覚醒』で手に入れたはずだ」
「間違った認識ではありません」
「……なんで俺だけこんなことに?」
普通、覚醒すればジョブを含む「ステータス」を手に入れる。
なのに、何故紀伊にはステータスがないのか。何故紀伊だけがSFなのか。
何故、そんなことに。全てはそこに集約されてしまうのだ。
そして、その問いにアインは……。
「分かりません」
そう、端的に答えた。
「は? いや、分かりませんって……」
「偶然であろう、と推測する事は出来ます。しかしそれを突き詰めても、マスターにとって何の得にもならないでしょう」
「そりゃ、そうかもしれないけどさ」
確かにその通りではある。あるが……これまで強いられてきた生活を思えば、素直に納得しがたいのも事実ではあった。
そんな紀伊の心情を読み取ったのか、アインは「そうですね……」と前置きする。
「恐らくですが、マスターの得た力は『特別』ではないのでしょう」
「どういう意味だ?」
「この世界に存在する『覚醒』のシステムがクジのようなもの、と仮定するとご理解頂けるでしょうか?」
クジ。恐らくは夜店のクジのような「何が当たるかお楽しみ」なものを指しているのだろうと紀伊にも理解できる。出来るが……。
「まあ、確かにジョブも何が与えられるか不明だけど……それでも俺だけ明らかに違うだろ」
ジャンルも違うし、と言う紀伊にアインは「そうでもありません」と首を横に振る。
「違う、違わないで言えば前衛向きのジョブと後衛向きのジョブでも相当違います。それは単なる差異でしかありません」