大きなベッドで「おやすみ」
翌日、朝早くから家具の搬入が始まった。
業者が二人の寝室にベッドを置き、遊び部屋には多くの本棚を置いた。
「高校生で同居か結婚してるのか知らないけど、羨ましいわ」
と業者の人たちは口々に言っていた。
午後になると、オンラインで買った大量の本、漫画、ラノベが届いた。
すべて110円で買ったためおよそ300冊届いた。
本棚に並び終え、僕達は互いに読みたがっていたものを黙って読むのであった。
いつの間にか夕方になり、僕達は夕食の買い物へ向かった。
「明は何食べたい?」
「茜の料理なら何でもい...」
「何でもいいは無しね」
「はい。強いていうなら、ハンバーグかな」
「今から作ると少し遅くなるけど大丈夫?」
「いいさ。それまでに掃除と洗濯とお風呂を済ませちゃえばいいんだから」
「それもそうね。じゃあ、お肉コーナーに行こ」
「どっちにあるんだっけ?」
「なんでまだ知らないのよ」
茜はそう言いながら僕を引っ張って行ってくれる。
「僕、そういう優しい茜のことが好きだな」
僕はボソッと呟くように言った。
「何?なんか言った?」
「いいえ、別に」
「そっ」
茜はそう言いながらも、耳を真っ赤に染めていた。
夕食を終え、遊び部屋でゲームをしているといつの間にか寝る時間だった。
「そろそろ寝よっか」
「そうね」
「じゃあ、おやすみ茜。大好き」
僕はそう言いながら自室に向かったが、茜に腕をつかまれた。
「今日から一緒に寝れるっていうのを楽しみにしてたのに、明は忘れてたの?」
茜は怒りながらも少し寂しそうな顔をしていた。
僕はすっかり忘れてたのだ。
「ごめん。忘れてた。これからは毎日一緒に寝れるんだもんね。忘れてて本当にごめん。僕も楽しみだよ」
「一緒に寝れるなら許す。明も私と一緒に寝たいんでしょ。今夜は寝かさないからね」
「茜、その言い方は少し、やらしく聞こえちゃうよ」
茜は数秒考え、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。
「バカなこと言ってないで寝るわよ」
茜はそういうと、早歩きで二人の寝室へ向かった。
僕たちはベッドに入ったが、互いにうまく寝付けなかった。
「ベッドが大きくて落ち着かない」
「そうだね」
「私、これじゃあ1人で寝てるのと変わらない」
「そうだね」
「一緒に寝てるんだから、もっと近くによって寝たい」
「そうだね」
「明はさっきから、そうだねしか言ってないけど、本当に思ってる?」
「そりゃあ、そう思ってるよ。一緒に寝てるって実感がないから僕はこうして寝ようかな」
僕はそういうと、茜を抱きしめた。
茜は最初慌てて少し恥ずかしがっていたが、素直に受け入れてくれた。
「毎日こうしてくれる?」
「茜がお望みならば、もちろん」
「よろしくね」
「お任せください」
「変なしゃべり方。大好き」
「僕も大好きだよ」
「おやすみ」
「おやすみ」
僕達は互いに暖かく居心地が良かったため、3分もたたず寝てしまった。
そして翌朝...
「二人とも寝坊なんてありえない。まさか2人とも一緒に大きなベッドで寝ることに緊張してて、目覚ましをかけ忘れるなんて」
「ベッドに入る前に確認すればよかった。ごめん」
「明だけが悪いわけじゃないし、私にももちろん非があるんだから謝ることないのよ」
「これからは互いに気をつけようね」
「うん‼」
僕達はそんな会話をしながら、2人そろって仲良く遅刻したのであった。