冒険者、が、現れた!
オークが見つからず、鹿肉を焼いているところで近くにあった薮が動き何かが出てきた。
「2人とも警戒しや!なんか来るぞ!」
「えぇ、まだ鹿肉が生焼けなのよ?ま、しょうがないわね あたしもちょっとは気を張っておくわ」
「私も頑張って応援する。ガンバレ」
いやいや、そんなこと言ってる場合じゃ無いやん!?結構大事な事やと思うねんけど?
まあ2人がそういうんやったら、うん、しゃあないか。僕が何体かはわからんけど出てきただけ倒せばええんやしな!
「そろそろ出てきいや?」
「あ、ああ。すまない、出ていくタイミングを失ってしまってな。なかなか出て行けなかったんだ」
そこまで間を貯めて出てきたのは一人の冒険者風の男で、適当に髪を切ったように乱雑な髪型をした冴えない奴だった。ちなみにあまり強そうには見えやんな。
「で?なんの用や?こっちは今昇格試験の真っ最中で忙しいねんけど?」
「いやいや、こっちも依頼の途中だったが肉のやける匂いが漂ってきたからな。そこまで行って忠告してやろうと思ってな。で、その忠告だが、ここで肉を焼くのはやめた方がいい。なんせモンスターやら獣やらが多く寄ってくるからな。それに集まって来た魔物と俺らがぶつかったら、俺らがやられるかもしれんしな」
いや、そんな事は百も承知やねんけど?って言えたらええんけやけどなぁ?善意で言ってくれてる以上は無為にはできやんし...。
「あぁ、そうですよね。すんません、他の人のこと考えてなかったんですわ。なんせこの試みは今回初やったんでなんも考えやんとやってまいましたわ。スンマセン」
「チッ、分かったんだったらいいけどよ、今度からは止めてくれよな?俺じゃなかったら相当切れてた奴もいるはずだぞ?」
そう言って名前を聞く暇もなく冒険者は立ち去っていった。
そうは言ってもなあ?ここ他の冒険者もいるんやったら更にオークの競争率なんて高そうやし、今回はアカンかもしれやんな。
えっ?そうなったらどうなんや?また依頼を一定の数こなさんと試験受けられへんとかないやろな?もしくは何回かの講習受けてからとか!
うっわ、それマジで最悪やな、絶対受けたくねえ!
「カイン、そろそろ移動する?ここにはあまり生き物自体がいないみたいだしね」
「ううん、そうするか?まあ確かに受付の人にも絶対ここで狩れって言われてるわけやないからな?どう思う?エリス」
「うん、移動するのはいいと思う。だけど移動するなら向かいの森にすべき。あまり離れるのは良くない気がする」
向かいの森とは街道を挟んで向こう側のことやろうな。あんまりエリスは喋らんかったから分からんけど、多分試験場から離れるのはあかんよって言ったんかな?
いや、分からんけど。
「分かった、じゃあここでの探索はここまでにして、向かいの森にオーク狩りしに行こっか!すぐに見つかるとええんやけどな」