遺言
今回、話だいぶ暗いカモネ。
書いててちょっと悲しくなっちった
「は?今、なんて言ったの?」
場所は夕方の冒険者ギルド、依頼を達成し報告に来たコリンさんにお母さんの遺言を伝えるのだ。
コリンさんは冒険者になって三年目らしくそれなりにベテランだ。ちなみにランクはCらしい。見た感じやっと大人の女の人になった、っていう感じの年齢かな?
「君のお母さんが死んだ。死因はゴブリンに攫われた上で乱暴され、僕らに介錯を頼んできた」
「...それで?殺したの?」
「ああ、殺した」
「何で!?生きてたらまたやり直せたのに!お前達もなんで止めてくれなかったの!?」
はあ、気が重いわ。やっぱりこういう展開になってくるよな。まあお母さんは僕が殺した、って言ってもあんまり間違いじゃ無いからな。
頼むからお母さんの言ってた通りにして僕らに復習すんなよ。
「お前も冒険者やってんやったらゴブリンにさらわれた女性くらい見たことあるやろう。酷い場合壊れてる人もいたくらい辛いんやぞ?そんなん見たらやって上げたくなるやんけ」
コリンさんもそのことは分かっているらしくめちゃくちゃ渋い顔をしたまま押し黙ってしまった。
出来ることならば何か怒鳴っていてくれた方が良かったな。こうやって推し黙られると、思ってないんかもしれやんけど、無言で怒られてる感じがすんねんかな。これが無言の圧力って奴か。
いや、実際問題こうやってふざけてる余裕は全然ないんやけどな?今だって冷や汗がめっちゃ酷いし。
「で?お母さんが死んだのは分かったわ。それで、あんた達はお母さんを殺したっていう報告をする為にわざわざ今まで待ってたの?」
「いやいや、お母さん関連の報告でもう一つ、遺言や。もちろん聞くやんな?」
「当たり前よ!勿体ぶらずに早く言いなさい」
「おう、それじゃあ言うで?ゴホン、『復讐には生きないでね』これだけや」
「...ホントにそれだけなの?」
コリンさんにとってはもう少しお母さんの言葉を聞きたかったんやろう。この子にとってお母さんとは、いつかは死ぬとはわかっていてもそれがホントになるとは思ってない、そんな感じやったんやろうな。
で、そう思ってたのが裏切られて自分が見てないところで死んでしもうたからな。そらちょっとでもお母さんが言ってたことを知りたいんやろう。
ちなみに僕もおじいさんが死んだ時に似たようなこと思ったからな。その時は幸い最後には僕も居合わせられたからまだ良かったけど。
「ホントにそれだけや、すまんな。でもあんたのお母さんも体力と心、特に心の限界やったんや。許してくれ、これ以上遺言考えて喋ってくれって言うのが可哀想やったんや」
「はあ、しょうがない、とは言いたくないわね。お母さんはねいつも貧困な村を回って格安で食べ物を売りに行っていたわ。それでね、いつもお金が無いからって護衛も最小限でね。それが今回は祟ったんでしょう。分かってたことだわ」
そうコリンさんは悲しいような、寂しいような、そして呆れているような顔をしてそう呟いた。どうやら僕が介錯をしたことについては許して貰えたらしい。
「カイン、だっけ?ありがとね、お母さんの遺言を届けてくれて。感謝しているわ。それと怒鳴ったりしてごめんなさい」
「いやいや、それが普通のことやからな。家に帰ったらしっかり泣いとくんやぞ」
「何よそれ」
その表情はここまで話を進めていくうちに暗くなって行った顔を取り返すようなそんな明るい笑顔だった。
ただ、無理をしているようにしか見えないが。
「一回泣いとかんと、あとが大変やって言うからな」
「あっそ、参考にしておくわ」