ダンジョン、探索するとは言っていない
他人事な受付ちゃんからダンジョンでの光石集めの依頼を受け、急いで街をぬけダンジョンに来ていた。なんせ夕方までに戻らんとコリンちゃんが依頼から帰ってきてまうからな。
雰囲気からしてあの受付嬢に当たって、僕らいやんって分かったらサラッと僕らが言う予定やった母親の死を例の他人事な喋り方でいってまうかも知れやんからな。
「あ、あれじゃれじゃない?壁に穴がぽっかり空いたみたいな見た目してるって言ってたし、きっとコレね!早く入りましょう?」
確かに事前に教えて貰っていたダンジョンの情報と照らし合わせても違いはない。ここがダンジョンで間違いはないんだろう。
ただちょっと待って欲しい。僕の中でのダンジョンといえば、恐ろしい口のような、いや、僕たちを飲み込んでしまうような恐ろしい見た目を想像してたんよ。
ただ、『不死者の楽園』ダンジョンもそうやったけどもこの世界のダンジョンって普通の洞窟みたいな見た目をしてんねんかな。この世界のダンジョン、もしかして入口がちっちゃくって通れない、みたいなダンジョンもあったりしてな!
「早く入ろう?少なくても日が暮れる1時間くらい前には街に戻らないと」
「ああ、確かにエリスの言う通りやな、ちょっと惜しいけど今日のところはパッパと採掘して街に戻らんとあかんしな。探索は今度依頼を受けやんとゆっくり来よか」
「そうと決まれば早く行くわよ!光石がすぐに見つかるとは限らないんだかね!」
そう言ってサリアはズカズカとダンジョンの中に入っていった。それを追いかけ、僕達も急いでサリアの後に続いてダンジョンに入る。入場!...ちょっとちゃうか。
ダンジョンの中は薄暗く、霧すらかかっているように見えた『不死者の楽園』とは違い、20メートル程先にある洞窟の曲がり角までしっかりと見えるほどだ。
おそらく壁側に生えている結晶が光っているのでこれが例の光石だろう。
ギルドからは完全に採掘してしまうとそこからはまた生えてくるのに時間がかかってしまい、その間魔物に奇襲される等で危険になってしまうので採掘をする場合はハンマーなどの鈍器で折るように採掘して欲しいと頼まれた。
「カイン、多分これが光石よね?お願いするわ」
「おう、任しとき」
そう、僕達はハンマーなどこのためだけに帰るほどリッチでは無いので纏血をハンマー代わりにすることで光石を採取しようとしていた。
ゴッ!!
「取れたわ!...へぇ、取ってからもちゃんと光ってるのね」
「多分、魔力を吸収して光ってる?」
「これ使ったら懐中電灯作れんかな?」
「カイチュウデントウ?何それ?」
「あっ、いや、なんも無いわ」
「ふぅん?そう」
アカンアカン、そんな異世界感もへったくれもないもん作ったら、せっかくの異世界、台無しになってまうもんな!
「まあそんな事どうでもええやんか。こうも簡単に取れるしそこらにまあまああるんやからさっさと採取して帰ろか」
「なんか誤魔化されてると思うけど、そうよね。あたし達が警戒しておくからちゃっちゃと取っちゃってよ。どうせ早めに帰らなくちゃ、なんて意識しながらダンジョン探索なんて楽しくないでしょうからね」
「ん、ダンジョン探索は時間がある時、のんびり楽しみながら、潜る」
そうして僕達は必要数を少し上回ったところで止め街に帰還した。
え?何で多めにとってるのかって?もちろん売るためですよ。グヘッヘッヘ!