カイン、スキル訓練の巻
僕はエリスと連れ立って先日、って言うか昨日やな。に来た洞窟の1歩手前の雑木林まで来ていた。
エリスと二人で訓練がてらにゴブリン討伐の依頼を受けたからだ。訓練の相手としては妥当な相手やろう、ってね。
「カイン、ゴブリン討伐であたしの『バラバラの心』、試す?」
「あ、いや。ゴブリンは僕のスキルの練習しよかなって思ってんねん。変なスキが出来たとしても僕やったらなんとか出来るしエリスだっているけど、エリスのスキル試して、もしサリア以上に動けんくなったらちょっと困るからな。いや、もちろん僕も助けるけどな?」
やっぱエリスが動けんくなったら困るってのもあるし、あんまり言いたくないねんけどエリスにはあんまり攻撃出来る手段がない。
特に『バラバラの心』の特性上、体の数が増えるわけやなくって思考数が増える、って感じやから魔法に特化しとる感じやんな?
つまりエリスにとっては回復の幅やったり複数展開、重複した魔法の発動が出来るようになるんやろう。
つまり、攻撃能力はないって言っても過言じゃ無い感じになると思う。
何が言いたいかって?酷なことやけどエリスには多分ゴブリンは倒せへんやろうな。ってのが僕の予想かな。
「分かった。じゃあわたしはカインがゴブリンの依頼が終わったらでいいから練習する」
「...あいよ」
はあ、やっばそうなるやんなぁ。
...あ、ゴブリンや。早速やけど訓練始めるか。
ちょっと待ってや?そう言えば僕ってレベル1の状態でしかスキルの検証しかしてなかったよな?
纏血のスキルをあれからも大分使ってレベルが上がった今、操作距離とか精度、あとはそやなぁ、展開速度とか上がってないか、とか確かめたいな。
ちなみに今までの活用方法は槍にしてからは固定、が基本やったから全然気にならんかったけど、これからもっと強くなっていきたい、ってなったらこのスキルは結構大事になってくる気がするんさな。ただの感覚やけど。
「まあええわ。じゃあ僕のスキルがどこまで動いてくれるか試してくるわな、ちょうどゴブリンいたし」
「そ、頑張って」
「おう、すぐ終わらせるからな」
草むらの中をガサガサ派手に音を立てながら歩いていたゴブリンに向かって纏血を纏った左腕で突きを放つように腕を振る。
だいたい距離は10メートル程やろかな?以前やったら絶対に届かんかった距離や。この距離が開いた状態で、できる限り早く長く、細く血を伸ばしていく。
そう言えばだいぶん前にこれ検証した時はレベル3で3メートルくらい伸びとったんやったな。
やから、今纏血スキルがレベル6になってるって事はだいたいの長さで6メートル伸びることになるはず、やねんけどなんか絶対6メートル以上あるやろ!ってくらい伸びていってる。ただ6メートルから先はなんでか知らんけど急に制御が難しくなってった。
一応ゴブリンまでは何とか届いて切っ先の部分が刺さったけど特にダメージと言える程は食らってないみたいに見える。
しかも下手に攻撃が中途半端に当たったから当然、刺された方のゴブリンはこっちに気づいて走ってきとる。
...そう言えば『出血』の同じくレベル6スキル、あれも纏血の補助くらいにしか考えてなかったけどあれ纏血の先っぽで発動したらゴブリンの頭くらい吹っ飛ばせへんかな?
ま、とりあえず思いついたらやったってたらええわな!折角の修行の場なんやし!
えっと一旦纏血を手前に戻して、あ、いや。やっぱり切り離した方がええかな。どうせ『出血』分の魔力が帰ってくる訳でもないし。
「もいっちょ、『纏血』!」
また同じことをしようとしている僕を見てアホだなぁ、という顔をして間抜けに走りながら笑っているゴブリンに向かって切っ先をさっきとは別に頭に刺し、『出血』を発動する。
するとゴブリンの頭が徐々に膨らんでいくのと同時にゴブリンはつんのめったようにコケ、そのまま動かなくなった。
『経験値を5獲得しました』
あ、倒したんか。なんか予想とは違う結果になってもうたな。なんか僕の予想やったら頭がパァンってなんのを想像しとってんけどな。現実にはなんか頭が膨張して目玉が吹っ飛んだところで死んでもうた。
あ、あれか?脳みそが血圧に耐えられへんだんかな?それともまた別の原因が?僕も別に医者とはちゃうからな。ようわからん。
まあ、でもグロいよりかはまだ目がぶっ飛ぶくらいですんで良かったって思った方がええな。でもこの技も相手のレベルが上がってって体の硬度が上がっていったら通用しやんくなってくんやろうか?
対策は『出血』のスキルを育てることかな?
...いっか、とりあえず採取するもんとって次のやつ行こ。
それからも僕は纏血を使ったことでどこまでできるかを試していった。一応結果としては形態の変化に約0,5秒くらい、大きさは小学校高学年くらいのゴブリンをまるまる潰せるくらい、細さはアニメで見るような切られても数秒はそのまま切られたことに気づかれへんくらいにはできるようになっていることが分かった。
特にこの切られてることに気づかれへんくらい細くできる、って所がポイントやな。これが出来るんやったら同じ見えへんくらいの細い糸をはって罠にすることもできるし、やろうと思えば凶器が僕の腕の血やから暗殺まがいのこともやろうと思えばできるって事やからな。
あとはこっからどの程度これらの技を素早く換装、同時展開が出来るか、これはもっと修行が必要やな。
まあ今回はこの程度でええわ。エリスも僕の回復しながら自分の番が回ってくんのを大人しく待ってくれとるしな。
「ごめん、またせちゃったな。もう大丈夫やから、次、エリスの方の特訓行こか!」
「うぅん大丈夫、私の方もカインの怪我治す練習ができたから、万々歳」
「おお、そう言ってくれるとありがたいわ!じゃあ行こっか」
よしゃ、じゃあこっからは街道外れに草原があんの見えたから、そこでエリスの『バラバラの心』スキルの訓練やな。
おお、怖。なんか今からなんかドキドキしてきたわ!
あ、あれ?エリスの訓練を書こうと思ってたのにな?
な、ナニカ、ガ、オカシイ!




