ようこそ!裏通りの宿屋へ!
「ねぇカイン?宿、まだつかない?」
「そやなぁ。宿っぽいとこ入ってったけど、どこもいっぱいいっぱいやったやんか、はよ宿を見つけやんことにはどうにもこうにも何ともならんからなぁ?」
僕たち3人は何時間も大きな道で宿屋を探したがどこも部屋が空いていないらしく、どこの宿屋にも入室を断られてしまっていた。
一応街の人に聞き回っておすすめの宿とか行ってみたんやけどさすが人気のある宿っていうくらいで、昼にはもう満杯になってしまっていたらしい。
こうなったら裏路地にあるような宿に泊まることも視野に入れやんとあかんかな。2人も結構限界が近いみたいやし。
...いや、視野に入れるんじゃまたいっぱいです。ってなってまうかもしれやんのやな。
よっしゃこのままこの通りを右に曲がって裏路地に入ってみるか!
「なあ、流石にこのまんま表通り探してても見つかりそうにないからさ、ちょっと治安は悪くなるやろうけど裏通りに入ってそこで宿探してみるか?」
「うぅん、それもいいかもしれないけど、もし危ない場所に入ったら、って考えるとねぇ」
「でも姉さん、私は賛成だよ。どうせこのまま大きい道を歩いてても多分見つからない。じゃあちょっと危なくても行った方が良くない?」
うん危ないのもわかるけど、そうでもしやんともう宿は見つからんやろう。
まあこれは完全に僕が悪いな。僕が先にギルドに行かずに宿探してればな...。
まあ今言ってもしゃあねえな、次にいかしたらええわ。今は一刻も早く他の誰かに取られる前に宿取らんと!
「他に選択肢なんて無いんやから、ほら!行くで!そんな不安なんやったら僕の手でも握っとったらええ!」
「じ、自分で歩けるわよ!それにあたし、全然怖くないし!ほら、さっさと行くわよ!」
いやいや、それにしてはさっきまでめっちゃ嫌がっとったのはなんやねん!...ははぁ、さてはサリアメッチャ負けず嫌いなんか?こりゃあサリアの御し方わかったかも...!
そして一人でニヤニヤしているのだった。...周りの視線に気付かぬまま。
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裏の通りで宿を探し始めてからしばらく経つのだが一向にいい宿が見つからない。これはホンマにサリアの言う通り、ずっと根気強く表通りで宿を探していた方が良かったかもしれんな。
あ、ちなみに裏通りの悪い宿の例を出すと入ってもなんも声をかけられへんところから始まって、明らかにダニが湧いてるような宿屋でアホほど高い、入った瞬間にこっちを見て店主がニヤニヤしながら格安料金を提示してくる。これは明らかに怪しいって言ってるようなもんやんな!?
そろそろ諦めて表通りに戻り、まともな場所を探そうかと思い始めた時、ようやくいい雰囲気の宿屋を見つけることが出来た。
外見は裏通りにしてはまともでありむしろ蔦がいい感じに張っており、むしろ良いと言える。
その宿屋の前では少女、だいたい10代前半ほどだろうか?が箒で家の前に溜まった葉っぱを掃除していた。
「なあ、ここってまだ宿の空き部屋ってあるか?あるんやっあら1泊いくらか知りたいんやけど」
「うん、まだあるよ!ちょっとまっててね!お母さぁん、お客さんが来たよ!もうちょっとで来るからね!あ、私アンって言うの。よろしくね?」
そこからしばらくアンちゃんと話していると宿の中からドタドタした音が聞こえ始め、アンちゃんと似た顔で20代後半くらいのお姉さんが出てきた。
「アン!ちゃんとお客さんの案内はできた?...いらっしゃいませ!ようこそ『癒しのロウソク亭』へ!お泊まりですね?3人とも同じ部屋でよかったかしら?」
「え?イヤイヤ!一人部屋と2人部屋でお願いします!」
「えぇ?照れちゃってぇ!お兄ちゃんたち恋人さんなんでしょう?だったら同じ部屋の方が良くないのぉ?」
それを聞いたサリアは赤い顔をして、
「そんなわけないでしょ!?そ、そりゃあこいつにはさんざん助けられたわよ?でもそんな、恋人なんて!ありえないわ!」
いや、サリアさん。そんなこと言ったら貴女の気持ちを勘違いしそうになるじゃん!確かに今は全然人と関わる経験がないから初めてであった人をそ、その、好きだと思っちゃうのは仕方ないとも思うけどな?ただ恋とは若干違うと、僕は思うで?
なんて僕も顔が赤くなるのを自覚しつつ思う。
「とにかく!一人部屋と2人部屋、その二部屋でお願いします!」
「はい、わかりました。お部屋は2階に上がってすぐ両脇にありますのでお使いください。ではごゆっくり。...アン、あんたはちょっと来なさい」
「えっ?いやそのぉ。もうしないから許して?ニコッ!」
「そんなの口で言ってもダメですちょっとこっち来なさい!...ほんとにもう最近本当におませさんになっちゃったんだから」
すみません。
また一週間休ませてもらいますね