おいでませ、ラトリアへ!
結構この回はお気に入り
今僕らは長い道のりに耐え、ロトリアの検問所に並んでいた。
そこで僕らも街に入るための検査を受けるのだが、ならんでいる人がめっちゃ多い...。だいたい30人位はいるか?まあ現代日本やと全然普通やねんけど魔物がいるこの世界で馬車をまだ使ってるくらいの文明やろ?それでこの人数は結構やと思うねんかな。
もしかして、なんか祭りでもあるんか?
「それにしても人が多いですね。この時期って何かイベントがあるんですか?」
「いいえ?そんな事ありませんよ。この街は普段から周りの村から夢を見て冒険者になりに来るもの、依頼を終わらせ帰路につくものなど、冒険者は元から多いのですよ。あぁ、ちなみにここ、ラトリア周辺ではそんなに強い魔物は出現しません。なので他の町からも初心者が集まって来るのでほかの町よりかは若い人が多いかもしれませんね」
へえ、言われてみれば確かに若い人が多いな。最初女の人も多いし、新婚旅行といえばここ!みたいなんで有名なんかなって思たわ。
これやったら僕らもここになんの身分証明出来んと来てもあんまり違和感無いかもしれへんな。
まあ、仮面被っとる新人君なんて1人もいやんけどな!言い訳については目立つためっていうことにしとこかな?
「そうだったのね!じゃあこの前のコボルトは本当に珍しかったんだ!」
「はい、そうなんですよ。コボルト自体はこの周辺にもよく出没するのですが、まず団体になってることは無いんですよ」
「おう、そうなんだよ。俺らのパーティでもこの辺の護衛はよくやるがあんなのは初めてだ。もしかしたら何かあるのかもしれんな」
「何か、って何よ?」
「それはあれよ、サリアちゃん。例えばなんかの上位種が生まれた、とかどこからか強力な個体がこっちに移り住んだ、とかだろ?」
「なるほどね!気をつけておくわね!」
なるほど、この辺は要注意、っと。心の中にメモやな。メモといえば街に着いたらメモ代わりになるのも買わんと!
なんせ僕めっちゃ忘れっぽいからなぁ。
あ、あとあれや。仮面、このこと2人に伝えとかんと、僕の中の設定誰かに話したとして2人が不思議な顔してたら明らかおかしいもんな。ふう、危なかった。完全に忘れとったわ。
「そやそや。エリス、サリア、話変わんねんけど僕の仮面については他の人に覚えてもらいやすくしてもらう為に自分の村で作った事にしてくれ」
「わかったわ。カイン、今でも相当目立ってるしね」
そやねんかな、正直恥ずかしい。でも言い訳それにしよって思たんはそれもあるねんかな。今でも皆がこっち向いて不思議な顔したあとに仲間の人とヒソヒソ話しとるし。
あぁ、恥ずかし!
そんなこんなでジロジロ見られること数分、ようやっと僕らの番が来た。
「次!」
「私たちの番ですね。今までありがとうございました。今回の護衛料です。少ないですがどうぞ」
銀色の硬貨を5枚貰った。所謂銀貨、ってやつやな、多分。ちなみにこれってどれくらいの価値があるんやろう?
「ありがとうごさいます!僕らもいい経験が積めたので良かったです」
「では、お先に失礼します。ありがとうございました」
そう言ってザックさん達の商隊は先に検問へ向かっていった。
さて、ザックさんとのお別れも終わったしここからが正念場やぞ。身分証明って言われたら上手く誤魔化さんとあかんからな。
「次!身分を証明できるものは何かありますか?」
ここや!上手く誤魔化さんと...
こう言うのって僕めっちゃ苦手なんやけどな。
「いやぁ、それが持ってなくて冒険者になりたくて村から飛び出して来ちゃいまして、これだけしか無いんですよ。あ、ちなみにこの2人も僕の幼馴染で一緒に着いてきてくれた子達です!」
「あぁ、あんたらもその口か、冒険者は夢があるからな。ただ、ないとは思うが一応隣にある事務所に入って指名手配されてないかのチェックを受けてこい」
勝った...!僕に犯罪歴なんてこの世界に来たばっかりやし勿論無いわけで、つまり、無事に通り抜けられるっちゅうことやな!
「ありがとうおっちゃん!じゃ、行ってくるわ」
「おお、行ってこい、若いもん!あと、俺はまだおっちゃんなんて歳じゃないぞ!おっと最後に、ゴホン。ようこそラトリアへ。ここは新人冒険者が集まる街、新たな出会いが君たちを待っているだろう!」
「おお、かっこいいやん。何それ?」
「ん?これか?これはな、隊長に新しい人が来る時に冒険者になるならかっこいいから言えって命令されたやつだな。俺としては恥ずかしいから辞めたいんだけどな...」
なるほど...!ここの隊長、なかなかやるな!
さてと、かっこいい言葉を貰った所で、事務所に行くかな。変なこと聞かれやんといいけど...。
因みに事務所って言っても見た目は独立した建物じゃ無くって城壁の一部って感じやな。
事務所に入ると簡易的なエントランスがあり受付の人(厳ついおっちゃん)に個別の部屋へ通された。
そこでは机を挟んで向かい側に、細身のお兄さん2人と机の上に水晶玉が乗っていた。
そのうち1人は僕らの顔を紙に移していた。多分犯罪が起こった時はここに書いた顔のヤツを真っ先に調べるんかな?大変そやけど、まあ頑張ってくれ!
「ようこそラトリアへ、ここではいくつか簡単な質問と犯罪歴がないかの確認をさせていただきます。ではまず、あなた方は何をするためにここへ?」
「僕が答えていくで、良いか?」
「良いよ、私達じゃ上手く、答えられないから」
「ういうい。...ええと、ここには冒険者になる為に来ました」
答えると事務員の兄ちゃんがサラサラとメモを取っていく。
「では、あなたは何故、仮面を?」
「あぁこれですか。これはキャラ付けという奴ですよ。近所に住んでた人に、冒険者は目立ってなんぼ!って言われましてね」
「ではその仮面を取って顔を見せてください」
背中から冷や汗が流れるのを感じる。
「嫌です。ここから僕のキャラ付けは始まっているのでね」
「なるほど、あまりよくありませんが、まあいいでしょう、どうせこんな偏狭な場所には犯罪者も来ないでしょうからね...。ではそのままで大丈夫です。最後に、この水晶に触ってください」
あっぶねぇ!何とか躱せたな。絶対に脱げって言われたらどうしよっかなって思ってたからな。この街が平和ボケしとって助かったわ。
んで?この水晶玉か?これが異世界あるあるの指名手配犯発見器か。
ポチッとな
「...はい、結構です。犯罪歴は無いですね。改めて、ようこそラトリアへ、この街はあなた方を歓迎します。出口はこちらを出て左へ行くと街へ出られます」
「「「ありがとうございました!」」」
兄ちゃん達2人は椅子から立ち、しっかり背筋を伸ばして、こちらに礼をしてくる。多分僕らがこっから出るまで頭下げてるつもりやろう。
なんかこう言うのってなんか気まずいよなぁ。
「はあ、緊張したな」
「ほんとに。でも通り抜けられて良かった」
「早く身分証明できるものを作らないとね!」
「ホントやで。さて、じゃあ次はギルド登録やな」
「うん、目標は冒険者ギルドナンバーワン」
「そうね、夢はでっかくよ!」
という事で次は冒険者ギルドへ!
こっから僕らの英雄譚が始まる!うっわ自分で言ったらめっちゃ恥ずかし!言わんかったらよかった。