サソリ型、やと!
それからも数体程奇襲で襲ってくる個体はいたが流石に何回も僕らが同じ手を食らうわけが無い。
むしろ普通に待ち構えている個体とは違って、頭上から降ってくるタイプは降ってきたタイミングで接続部分を切断すればいいし、たまにあった横の壁に空いている穴からの奇襲でも攻撃する腕は絶対に出てくるのでそれを切断すれば簡単に武器を敵から引き剥がすことが出来る。
だが、面倒くさいのが合成されている生物が違うところだ。上半身が溶けたような人間というのは変わっていないが、下半身はトカゲだったり闘牛だったり馬だったりする。
それで何が困るかと言えば、一つ腕を切断するというのでも体高が大幅に違うので同じ位置を攻撃し続ける、ということが出来ないのだ。そして、今通っている通路がサリアの『ライト』を使っているとはいえ、薄暗くて細かい回避ができないので、大幅に攻撃を避ける必要がある。そういう面で集中力も体力もどんどん削れて行った。
「なあ?そろそろ休憩しいひんのか?」
「ダメだな。疲れているのは俺もそうだから分かっているが、館に攻め込んでいる組と足並みを揃えなければ犯人に逃げられてしまうかもしれないだろう?そういう意味でもまだ行けるのであれば出来るだけ先に進んでおきたいのだ」
「ま、そうやんなぁ。分かってはいるんやけどなぁ」
ほら、『まだ行けるは、もう行けない』って言うじゃん?はあ、休みてぇ。そう思うんはまだまだレベルが低いからかな?そろそろ息が切れ始めてんけどな。
「カイン、わたしも『アンチヒール』、使おっか?」
「うんにゃ?まだ温存しとってよ。もうちょっとしたら頼むかもやからそんとき頼むわ」
この前聞いたらエリスの『アンチヒール』は『バラバラの心』も併用で使わなければいけない関係上、MP消費がアホみたいに高いのだ。それこそ僕の『纏血』が1秒につき、大体三消費するのに比べ、エリスの『アンチヒール』は毎秒15消費し、『アンチヒール』完全に効果が出るまで役三秒掛かるので1回使う事に45MP消費するのだ。
「なあカイン、その、エリスの『アンチヒール』?ってのは何なんだ?」
「いやあそれは流石に教えられんなぁ。幾らジャクソンのパーティメンバーやからってな。『アンチヒール』は僕ら『血術士』の切り札的なやつやからな」
まあそりゃあ、アンチヒールなんて単語聞いたらちょっとは気になるもんな。名前からヒールの反対でなんかダメージ与えるもんとは分かるやろうけど、詳しくどんなんかは全くわからんもんな。
「ん?ジャクソン!前にいるキメラ、見えるよな?あいつなんか杖持ってない?」
「ああ、確かに。それにあいつの下半身、サソリになってるな。ハサミの気をつけんのは勿論だが、尻尾の攻撃も食らったら相当不味いことになりそうだ。カイン、気をつけとけよ」
「了解、まあ最悪しっぽの攻撃以外の傷はヒーラーの二人が何とかしてくれるやろう?やったら先に危ない尻尾狙いで。じゃあ、行くで!」
毒持ちとか怖ぇけどな!これもお仕事お仕事!
でも実際サソリって結構ロマンあるよね?
確かブラックライトで光る蠍もいるんやとか?