おとこの娘
「兄ちゃん、こっちだよ、早く!」
先に走り出してしまい見失っていた少年がまた戻ってきて催促してきた。
後ろでは僕らが急に走り出したことで慌てたスラムの住人たちが僕たちの入った通路へ走り込んできた。
「おわぁっ!やべぇ、兄ちゃん早く!こっちだよ!」
「おう、ありがと!でもちょっと抱えていくから道案内だけよろしく!」
「オラァ!待たんかい、ゴラァ!」
「大人しく渡すもん渡しゃあ!」
「死ねや、ボケがァ!」
うへぇ!もうすぐそこまで来とるやん!早く逃げやんと!
「なあ!次どっち曲がりゃあええんや!?」
「早く教える...!」
「はあ、はあ。次、右に曲がってその次、フウ、えっと、左」
「エリス!この子に回復魔法かけて息切れ治して!」
「わかった、『ヒール』...!」
「っ!ありがとお姉ちゃん!」
回復魔法をかけられた少年は体力が無かったのか少ししか走っていないのに息も絶え絶え、という感じだったのがスムーズに道の指示を出せるようになっていた。
ナイス、エリスとサリア!
「そろそろ撒けてきたか?」
「そうみたいね!足の早いやつがまだいるからそいつら倒したら完全に大丈夫そう!カイン、やれる?」
うん、まあ5人くらいやからな、まあ行けるか。よし!じゃぁこっからは僕の逃げ続けてきたことで出来たストレスを発散させる機械として頑張ってもらうで!
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「ここに入って!安全な場所だよ!...お母さんただいま!なんか追いかけられてたから連れてきたよ!」
「あら、それは大変ね!早くお入りなさい?こんな場所だからお茶も出せないけれど、良かったらくつろいで行ってくださいね」
「ママァ、お客さん?」
「おお!冒険者って奴?カッコイイ!」
え?めっちゃ子供いるな。いや、顔似てないし、ここは孤児院やったんか?
「ちょっと奥に行ってなさい!すいません、ここは孤児院で親の亡くなった子達を引き取って居るんですけど、まだ小さい子も多くて」
やっぱりか。まあそれやったらこの院長に協力してもらうのがええかな?なんか面倒見よさそうやし、こんな所に立ってるんやったら情報もしっかり集めてるやろうしな。
じゃないと危険な奴がこの近くに住み始めたとかなったら危ないし。
あ、ここに住んでるんやったら大概危ないヤツばっかやったわ!ハッハッハ、ハァ。
「ありがとね、あんた名前は?あたしの名前はサリアっていうんだけど」
「僕の名前?言ってなかったっけ?僕の名前はリステっていうんだ!よろしくね!」
え?走ってる感じからして男の子やと思っててんけど、名前からして女の子やったんや。
「すいません、助けて貰ったお礼として、ちょっと僕らもお金が無いもんでこの騒動が終わったあと、何かしらのお肉を持ってきます。何がいいですかね?」
「いえいえ!そんなのはいいですよ、こっちもこの子が勝手に連れてきただけですので。ただ、もしくださるのでしたら、オークのお肉、が欲しいですね」
「オッケイよ!これが終わったら持ってきてあげるわ!」
うん、バッチリ貰うつもりやん。まあこっちも向こうがなんもいらんって言っても適当に持ってくるつもりやったけど。
これ書いてる途中に思った。
ボクっ娘って、いいよね。