路地裏の少年?少女?
昼食をそれぞれ済ませ、スラムにやってきた僕達は予想以上の惨状に早くも入るのを躊躇っていた。
「カイン、どうする?ここ、すっごい臭いがするんだけど!」
「一言で言うなら、汚染地帯。絶対入りたくない」
サリアとエリスが言うのも分かる。何せスラムを少し入った所からは糞尿は地面にぶちまけられており、老若男女問わず痩せこけた顔でこちらに視線をやってきた。その視線はまさに獲物を狙うハンターであり、一言で言うならば、追い剥ぎ、であろうか。
「いや、でもなぁ、僕もこれ以上入りたかないんやけどさぁ、しゃあないやん。依頼受けてここにサリアがいるって分かってしもたんやからさ」
「じゃあカインだけで行ってきてよ!あたし達は宿で待ってるからさ?」
「そうそう、カイン、頑張ってね?」
「いやいやいや、お二人さん?そうは問屋が卸しませんよって!ちゃあんと二人にも着いてきてもらうからな!なんせ同じパーティの仲間やろ?」
なんとしてても連れてってやる!こんなとこに一人でいてたら、いくら所詮チンピラやし囲まれても負けることはないにせよ、雰囲気から顔から全部怖くてたまらんからな。強さとメンタルは別モンなんやで?
「後生やから着いてきて!な?な?一生のお願いやから!まあ大抵一生のお願いとか守ってる人ほぼ居やんやろうけど」
「カイン、それは言ったらダメなやつよ?たとえ何回も使ってるってわかっていてもよ?...ハア、でもしょうが無いわねカインがそこまで言うのなら着いてってあげないこともないわ!感謝してよね!」
「姉さん、カインが心配なだけじゃ?...まあいいや、わたしも姉さんを1人にするもは嫌だから、着いてく」
「おお、やった!ありがとう、二人ともよしゃ!じゃあ張り切って行くで!エイ、エイ、オー!」
決意を固めたところで更に進んでいくとひび割れはあったとはいえ、一応石造りの家だったのが木造の家に変わっていきさらに陰気さを醸し出してきた。
...ちょっと嫌な感じがして、あえて気付かんふりをしとったけど、やっぱこれ、入口から付けられてきてるよな?巻いた方がええか?流石にぞろぞろ付けてきてる奴から金をやって道案内を貰う気にはならんしな。撒くか?
そんなことを悩みながら歩いていた時、家と家の間から顔を出した少年?いや、女の子か?がこっちに手招きをしてきた。
「...兄ちゃん!こっちだ!」
それを言った瞬間少年?少女?は路地裏に入って行った。どうやら着いてきて欲しいらしい。
「ちょっと着いてってええか?後ろのやつも撒きたいし」
「うん、賛成。あいつらちょっと気持ち悪かったから」
「あたしも賛成ね。って言うか早くしないと見失っちゃうわよ!」
あっ、確かに。既に少年?は元いた路地を走り始めている。スラムという特性上、無駄に入り組みもはや迷路になっているので多分一度でも見失えば見つけられなくなってしまうだろう。
「すまん、ちょっと走んで」