第31話 転生と転移
「え? は? 死んだまま異世界に転移させちゃった? はあ? 何やってんのよ! あなた!」
転生の女神、リンカ・オ・パーイは電話の相手に対して苛立っていた。
「そんなこと、私に相談されても困るっつーの! ああ、もう、とにかくちょっと待って、何か良い方法を考えてみるわ」
リンカ・オ・パーイは「まったくもう!」と言いながら、電話を切った。
そして、セイヤの方へ向き直り「ええと、何でしたっけ?」と聞いた。
「『転生の間』とは何か? と聞いたのだ」
「ああ、そうね。あなた、拳銃で撃たれて死んだの」
「俺は死んだのか?」
「ええ、死んだの。死ぬとほとんどの場合、天国か地獄に行くんだけど、抽選で何名様かがこの『転生の間』に来ることができるの」
リンカ・オ・パーイはドヤ顔をしてそう言った。
「俺はガキの頃からロクな生き方をしてこなかった。死んだら地獄行きかと思っていたが」
「あなた、地獄行き希望なの? 普通、『転生の間』に来るとみんな喜ぶんだけど!」
『転生の間』に来ているのに、テンションが上がらないセイヤを見て、リンカは不満そうであった。
「それで、『転生の間』に来るとどうなるんだ?」
「異世界へ転生するか、転移するか、どちらかを選ぶことができるわ。通常、死んじゃった場合は『転生』なんだけど、ご希望であれば生き返らせて『転移』させることもできるの」
「『転生』と『転移』とは何が違うのだ?」
「あなた、何も知らないのね! 『転生』は異世界でもう一度赤ちゃんからやり直すの。『転移』は今の状態のまま異世界へ行くの。どっちがいい?」
「どっちがいいと聞かれても困る。なにがなんだか訳がわからない」
リンカは、" ああそうだ、いいことを思いついた " という顔をした。
「最近、転生の女神になった私の後輩が、やらかしちゃったみたいで、死んだまま異世界に転移させちゃったみたいなの。その、申し訳ないんだけど、あなた、その幽霊を捕まえて来てくれないかしら?」
「なんで、俺がお前の後輩のやらかしの尻ぬぐいをせにゃいかんのだ?」
「もちろん、ただでとは言わないわ。あなたの希望する場所へ『転生』でも『転移』でもさせてあげるわ。ついでにレベルMAXのスキルもつけてあげる!」
セイヤは少し考えてから、聞いた。
「その『転移』ってのは、俺が元にいた地球へ戻ることもできるか?」
「え? 戻りたいの? 珍しい人ね。別にできなくはないわ」
「元にいた場所へ戻してくれ」
「そう。じゃあ、幽霊さんのいる所へいったん『転移』させるから、この霊気箱に幽霊さんを入れて来て欲しいの」
リンカ・オ・パーイはセイヤに霊気箱なる箱を渡した。
霊気箱には紫色に光る魔法陣が描かれている。
「霊気箱に幽霊さんを入れたら自動的にここへ戻ってくるから」
そう言って、転生の女神は何か呪文を唱えた。




