第19話 猫に関する予言の書
「田中ァ! お前、猫をどうしたァ?」
セイヤはいきなり田中に凄んだ。
いきなり凄む必要はないのだが、職業柄そうなってしまうのである。
「猫? ああ、猫のことですね。
セイヤさんも猫にご興味をお持ちで?」
「いいや、俺は猫に興味はねえよ。
神崎の兄貴が猫を探してるんだ」
「神崎の兄貴? ああ、弟さんの方ですね」
田中は神崎を見て言った。
神崎兄弟のことを知っているようだ。
「三匹の猫がいなくなった件でしょう?
この界隈でも話題になっています。」
「ああ、三匹の猫の件だ」
「その件は極秘事項です。
ここでは話せません。場所を移しましょう。」
このネットカフェには『VIPルーム』と呼ばれるその筋の人間しか入れない部屋がある。
情報屋の田中は、神崎たちをその『VIPルーム』へと案内した。
「お伽噺なんですけどね。『カリーナ姫と三匹の猫』というのはご存知ですね?」
『VIPルーム』に入ると田中は表情を変えた。
まるで、熟練の魔術師のような顔つきとなった。
「それぐれえは俺でも知ってるさ」
セイヤが言った。
「はい、カリーナ姫がこの世界に降り立つとき、三匹の猫のこの世界からいなくなった。
という文章で始まるあのお伽噺です」
「俺たちは、お伽噺を聞きに来たんじゃねえぜ」
「ええ、分かっています。
しかし、このお話しはお伽噺でないのです。
予言の書と言っても良いでしょう」
「予言の書だあ?」
神崎は、さもありなんという顔で「予言の書か」と呟いた。




