第12話 神崎の落胆
「もうひとつ聞きたいのだが」
神崎は重々しい口調でスライムに話しかけた。
「太郎ちゃんが犯人なら、俺のところでなく、
直接、太郎ちゃんのところへ行けば良いのではないか?」
「あの魔城には鍵がかかっているっス」
「そうか、じゃあ入れないな」
太郎ちゃんを引き渡せと言われても、神崎としても困る。
そもそも、どうして良いか分からない。
なので、このスライムのことは無視することにした。
神崎はしのぶを見た。しのぶとは白河桂里奈のことである。
「しのぶ、どちらが本体なんだ?」
「本体って?」
白河桂里奈は、いきなり「どちらが本体なんだ?」と意味不明なことを聞かれ驚いた。
「いや、しのぶとスライムはどちらが本体なんだ?」
まったく、意味不明である。
それにスライムって何のことだろうか。と彼女は思った。
「スライムって?」
「お前の頭の上に乗っているやつだ」
「私の頭の上に何か乗っかっているの?」
どういうことだろうか? 神崎は考えた。
この異世界の少女は、頭の上のスライムが見えていないのだろうか?
異世界の少女なら、スライムくらい見えるだろうと思っていたのだが……神崎は落胆したようにそう思った。
神崎が落胆していると、探偵事務所のインターホンのチャイムがなった。
来客のようである。




