第10話 スライムの姫
神崎は三島老人をなんとか無理やり帰らせると、白河桂里奈の頭の上のスライムを見た。
「もしもし? 聞こえてますっスよね?」
「ああ、聞こえているが、俺に何か用か?」
話しが通じてスライムはホッとしたようだ。
「実は、我々スライム族の姫が囚われてしまったのですっス」
「そうか、それは大変だな。しかしスライム族のことを俺に言われても困る」
「そんな無責任なっス!」
スライムは神崎に言うが、無責任と言われても困るのである。
「スライム族の姫が囚われたことに、俺に責任はないだろう」
「無くはないですっス。犯人は神崎太郎という人物っス」
「太郎ちゃん?」
神崎太郎は神崎の兄である。
太郎ちゃんが犯人だとしても、俺に責任はないだろう。とは神崎も思った。
疑問点がいくつかある。
1.このスライムはなぜ白河桂里奈 (異世界の少女?) の頭の上に乗っているのか?
2.なぜ神崎探偵事務所の場所を知っていたのか?
3.神崎太郎が犯人だとして、太郎にスライムが見えるのだろうか?
疑問には思ったが、神崎は面倒なので問いただすのはやめた。
「神崎太郎はトウトダイガクという魔城にいるっス」
「そうだな、太郎ちゃんは東都大学の教授だからな。
しかし、あそこは魔城ではないぞ」
「おそらく神崎太郎は魔城のラスボスっス」
会話が噛み合っていない。
神崎は思わずため息をついたが、ラスボスという点についてはある意味同意した。




