第1話 神崎と美少女
神崎探偵事務所は新宿の雑居ビルの二階にある。
探偵事務所の主の名はもちろん神崎である。
当然ながら、探偵という仕事をしている。
しかしながら、このお話しは探偵の仕事がメインというわけでもない。
おそらく、メインではないはずである。
いや、メインかもしれないが、
むしろ、神崎という男そのもののお話し……のはずである。
彼は自分が中年であると思っている。どちらかと言えば「キモい」と評される容貌をしている……と彼は思っている。
年齢は35歳である。
世間一般として35歳という年齢が中年なのかどうかは、微妙かもしれない。
中年と言えば中年だし、まだまだ若いといえば、まだまだ若いと言える。
ともかく、彼は自分を中年だと思っている。
探偵事務所には住人がいた。
住人というのは、読んで字のごとくであるが、そこに住んでいる人という意味だ。
少女であった。年齢は16歳である。
これもまた、世間一般として16歳という年齢を少女と言うのかどうかは、微妙かもしれない。
美少女であった。
神崎はテレビを見ないし、芸能界にも興味がない。
しかし、芸能人になれそうなくらいの美少女だ。と彼は思う。
とある日に、神崎探偵事務所の前にうずくまっていたのだ。
困ったなと彼は思った。