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プロローグ

どうもこんにちは。


この物語は別途連載中の『異世界の女神に拾われ、底辺の奴隷にされた俺が大君たいくんに成り上ります、理由は不明です。』のクロスオーバー作品となります。


どちらか片方をお読み下さるだけでも完結するようにしていますので。


宜しくお願いします。


 現代の社会通念上、ヒエラルキーが低ければ低いほど、そいつの価値は低い。


 僕の両親、特に父親のヒエラルキーは底辺に頭付けるほど低くて。

 父さんはいつしか我が家から蒸発していなくなった。

 だから家に居るのは僕と母だけ。


 低所得でも母は頑張って僕を高校まで面倒を見てくれたけど、それ以上のことは知らないとつい先日言い捨てられた。元々専業主婦だった母親を満足に雇用してくれる場所など今の社会にはないんだ。


 折角、大学受験に合格したのに、元の木阿弥。

 奨学金で進学する手もあったんだろうけどさ――


「えー、知っている人は知っているかと思いますが、昨晩このクラスの蓬田塔矢くんが事故に遭い、急逝しました」


 登校すると、クラスメイトの蓬田くんの訃報を耳にする。

 彼はいい奴だった、と個人的には思う。


「死んだってマジ?」

「そうなんじゃね?」


 クラスから聞こえてくるのは蓬田くんへの無関心な言葉の数々だ。蓬田くんはいい奴だったと思うけど、僕と同じでヒエラルキーは低いから、居なくなってもみんな焦ったりしない。


「みんな辛く悲しいとは思うが、今みんなは分岐点に立っていることは分かってるよな? 蓬田を亡くしたが、それでもみんなは将来を左右する大学受験に何としてでも、受かっておかないと駄目だ」


 担任はその後、クラスのみんなに発破を掛けるように演説めいた。


 蓬田の死を無駄にするなと、お前らの将来は大学受験の合否で決まるなどと。


「……で、だ。今から言うメンバーはこの後、職員室に来てくれ」


 熱弁をふるった後、担任は僕含む五人の生徒を職員室に呼び出した。


「お前らが何で呼び出されたか分かるか?」


 問われた僕達は顔を見合わせ、一様に首を傾げる。


「何故ですか?」


 呼び出しを喰らった一人の女子生徒――赤城アンが訊き返すと。


「……――ッ!」


 すると担任は机の上を強く打った。


「先生は今朝言っただろ、お前らの受験は将来を左右するって。今こうして集まってもらったのは、お前らに諦めて欲しくないからだよ」


 ああ、そうなんだ。


 僕は家庭の事情から大学への進学を頓挫したけど。

 ここに集った五人は同様の理由で、進学しないんだ。


「そこでだ、先生から提案がある。俺と一緒に蓬田に会いに行かないか?」


 蓬田くんに?


「蓬田に会いに行って、献花しよう。あいつが寂しくないように」


 と言うことで、担任と一緒に蓬田くんの事故現場に向かうことになった。

 この時、五人のうちの一人は若干嫌がっていたけど。


「蓬田には罪はないし、こんな時ぐらい体裁取り繕おうぜ?」


 クラスでも特に義理堅い性格をした黒木砂道くんがたしなめていた。


 先生は学校の車を借りだし、五人を乗せて発進させる。


「……先生は未だに信じられないよ」

「何がですか?」


 赤城アンは優等生然として、律義に先生の言葉に相槌をいれる。


「それぞれに理由があるとはいえ、お前らが大学に進学しないことがだ」

「……」

「特に一番驚いたのは、赤城の事情だ。お前は嫌じゃないのか?」

「親が決めたことに、私は逆らえませんから」


 ……赤城さんがどんな理由でそう言っているのか判らない。


 彼女が隠している内容は、十八歳の僕らにとっては衝撃的な気がする。


 それとは別に、先ほどからする胸騒ぎは何だろう。


 赤城さんの気持ちを聞いた担任は、アクセルを踏み、速度を上げ始めた。


「先生、少し速度を落としてくれませんか」

「……駄目だ、やっぱり俺はお前らが許せない」


 ――このままお前らを道連れにして死のうと思うんだ。


「異存はないだろッ! お前らみたいな大学にすらいけない屑を社会に送ることは出来ないんだよッ!」


 突然、豹変した担任の形相を僕は一生忘れることは出来ない。


「みんな! シートベルトして!」


「ごめんな、先生な、昨日酒に酔って、そのまま車運転して、そして蓬田を撥ねちゃったんだ……そしたら、途端にお前らが不憫に思えた。このままお前らが苦しまないようにするのも担任の務めだと思う、思うんだ」


 と言われるや否や、峠道を高速で走っていた車はガードレールを突き破りそのまま――






 激痛に苛まれていると、いつの間にか僕は光に包まれていた。


「気付いたか?」


 意識が覚醒すれば、そこには綺麗な外国の女性がいて。


「リュウガミネ・マヒロ、今からお前を異世界ギオスに転生させてやる」


 異世界ギオスに転生?


「そうだ、異世界ギオスは剣と魔法の国。文明レベルはお前らの国よりかは劣っているが、その分自由自適な暮らしが出来るぞ……けどお生憎様、お前の転生先は奴隷と決まっている」


 ――ッ……彼女から告げられた内容に、僕は絶望を拭えない。今生きて来た人生だって、ヒエラルキーの低さから無残な最期を迎えたのに。転生後は前世よりも身分が低いって、言われたんだ。


 そんなの、絶望しかしないだろ。


「安心しろよ、奴隷は奴隷でも、身分が高い奴を主にしてやるさ。皇帝の奴隷なんてどうだ?」


 皇帝の奴隷?


 それだけじゃあ、僕は納得できない。


「じゃあ他に何が欲しい?」


 疲れた調子の彼女の問い掛けに、僕は数瞬悩んだ後――利用価値の高い力が欲しいと願った。


 ヒエラルキーの低さの元凶は、詰まるところ、そいつの能力値に依存しているから。なら、他の追随を許さない能力を付加することで、問題を解消しようと思ったんだ。


「そうか、ならお前にとっておきの力を与えてやるよ」


 ――その力を上手く使って、せいぜいのし上がれよ。


 ◇


「皇帝陛下、エミリー様が無事にお子様をご出産なされました」

「……して、性別は?」

「男の子で御座いますが」

「何か問題があるのか?」

「……エミリー様がお産みになったお子様は、瞳術を持ち合わせている様子でして」

「ほう、ならば早速エミリーの許へ参ろうか」


 帝国歴二二三年、こうして僕はエルドラード帝国の長子として生まれ。

 その存在を、世間から隠されるようにして育つのだった。


改めましてこんにちは。


拙作をお読みくださりありがとう御座います。

拙作は本日中(2020/03/08)に第一章にあたる『成り上がり編』を全部放出しようと思っております。


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