第四十七話 聖戦舞祭:一人だけの問題児
あそこで、舞台へと上がるための道路をゆっくりと進んでいる梨奈や有栖川さんなのだけれど、そういえな、エリーゼ先輩ってどこにいるの?
さっきから試合に夢中で気づかなかったけど、今になって思い出せば確かにさっきの試合が進行中だった時に、エリーゼ先輩の姿や物音が完全に消されたような気がしたけど、一体どこにいるのー?
と、疑問に思って、きょろきょろとあっちこっちへと振り返ったりすると、
「...........すや............すや.........」
と、可愛らしく身体を丸めて寝ているエリーゼ先輩が見えたのだ。
おい、おい、おい、マジかよーー!
一応、お前さんの国の2番目偉い人である、お姫様も参加なさった試合だぞー?
それなのに、観戦しなかったっていくらなんでも失礼すぎないー!?
「はああ........まったくー! エリー殿はいつも困った娘でございますなー。お見苦しいところをお見せしてしまって申し訳ございません、早山殿。」
と、そんなため息と共に、そう謝罪してきたローザが俺の隣までやってきたのである。続いて、遼二も俺らの方に向かって、エレンとネフイールに対して会釈すると、
「よもや、異世界にまでやってきた僕たち4人が試合で戦うことになるとはな、ルー!.....いや、第4学女鬼殺隊を率いる、<羽山体長>!」
「その呼び方、なんか変だな、遼!俺のことをいつも通りに呼んでくれないかー?」
「でも、正式の場とかでお互いに職名で呼び合わなきゃいけない時もこれからいくらでもあるだろうー?今の内に慣れていかないと。」
「.........んん。まあ、いいっかー。」
「はは、それでこそ、ルーなんだね。....ん、そういえば......エレン....姫様?」
「はい、わたくしですのー?」
「ええ、そうですよ。その.......気になったことがあるんですけど、さっきのあのデカイ紅色の弾.....が一瞬の間でその剣から放出されたのが見えましたけど、その技の名前って、確かアロナリ....とかなんとかだったっけー?」
「<中級紅色強暴巨弾>ですわ、春介さん。」
「ああ、そうでしたね。そのアロナリズって名前、前にも聞いたことがあったような..........ほらー!あのサカラスってムカデと戦った時にですー!その時もアロナとかって言わなかったんでしたっけー?」
「ええ.....あの戦いでは確かに、第1階梯の<武器限定>現神術である<初級金色小暴弾>をサカラスに向かって打ちましたわ。」
「あの黄金色な弾でしたね。で、それがあのムカデに当たっても倒せなかったんですけど、あの時はわざと力を抜いて打ちましたか?」
「そうですわ、春介さん。神使力を極限まで抑えこんで打ちましたので、本来はあれでも<ラングル>級であるサカラスを跡形もなく倒せたんですけれど、少しだけあの時の貴方がたに対して、最初にこの世界の能力について馴染ませて差し上げたかったんですから、まずはあまり派手じゃない威力のもので決着をつけたかったんですから。」
「つまり、さっき、内のローザと戦った時に使った、<初級金色小暴弾>よりも遥かに階梯が上である<中級紅色強暴巨弾>という技は、サカラスよりも一つ上の神滅鬼ランキングである、第5階級の<カーシム級>も倒せるってことになるんですか?」
「..........んんん、倒せるには倒せるんですけれど、<カーシム級>の神滅鬼も様々な種類がありますので、一概にとは言えませんわ。」
「.......そうですか.......」
エレンの返答に対して、少し複雑な表情を浮かべる遼二がいるけど、
「でも、一つだけ確かなのは、4番目の<ロディーン級>は今の殿下.....そういえば、官僚や要人物が回りにいない限り、普段の口調でエレンと呼んでほしかったんでしたねー?........では、エレンの現在の実力では、<ロディーン級>は倒せませんよ」
まるで遼二の思考に答えるように、そう言ってくれたローザさんなのである。
「まあ、ローズバーグ会長なら、<ロディーン級>の神滅鬼も倒せそうだと思うんだけどね、にししし~~~」
と、気楽にそう付け加えたネフイールなのである。
「9,10-!始めーー!」
「やああああーーーーーーーー!!!」
「!?」
梨奈の掛け声が聞こえてきたぞー!もう始まったんだなー!俺らが話し込んじゃってる間に会長の試合開始までのカウントダウンがやっと終わったばかりみたいだ。
「おっと、話に夢中過ぎたね、僕たち。早くあの二人の試合を見にいかなくちゃー!」
「おう!(はい!)(畏まりました、春介隊長!)(にししー!)」
タタタタ.......
と、窓際に戻った俺たちなんだが、
「すや......すや.......」
あそこで、エリーゼ先輩は寝ているままなのであるー!
...........もういい。
つっこむのが馬鹿に思えてきちゃったよ、ははは.........
まあ、彼女はいつもあんな感じだったし、そっとしておこう、うん!
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