第四十二話 聖戦舞祭:王女殿下の本気の演舞2
視界が戻った俺らは舞台上で凛と佇むエレンの雄姿を眺め始める。彼女は依然として、無傷のままだ。
ソヒー・ヨセミンを片手に持つ彼女は、さっきみたいにゆっくりとローザさんに向かって、歩いていくのである。
「.....やっぱり、第5階梯の現神術だけで、殿下にダメージは負わせられませんね。<瞬殺絶消雷迅雅槍>も含めて.....。」
「当然ですわ。わたくしを誰だと思っているんですのー?」
「......ふう....なら、ワタシもそろそろ、「本物の演舞」を始めなくてはならないようでございますな...。やあああーーー!」
いきなりそう切り出すかと思えば、掛け声を上げるローザさんなのだが、今度はさっきの嵐と違って、紫色の神使力の本流をその身体から迸らせた!
シュウウウウウーーーーーーーーーーー!
吹き荒れるその凄まじいオーラに圧倒されることなく、未だに悠然と歩を進めているエレンは、
「予想通り、第6階梯の技でわたくしに挑むんですのねー?いいでしょうー。かかってきなさい、ファイットレーム!」
「はあああーーー!<裂風纏斬波凶刃>ーーー!!」
そう唱えたローザさんは、自分の持っている槍の表面の塚の上から、紫色の細長い光で包まれ始めていて、そして、それと共に生まれるのが細かいまでに一箇所一箇所に出現した小さな竜巻のようなものがその光のいくつかのところに渦を巻いているようにして、触れる者すべてを刺身にできるような禍々しい殺生力が窺われる。やばいー!あれはーー!
「第6階梯の<武器限定の現神術>で、槍使いだけが使用できるものでございますよー!これで、殿下のその剣と直接にーーー!せいやああーーー!」
刹那の間で、そういうローザさんはもう既にエレンの鼻の先まで迫り、
シュウウウウーーーーー!
かろうじて、エレンはその光に纏われた槍による振り上げをかわした。
シュウ、シュウ、シュウ、シュウ、シュウーー!!
「はああああああーーーーーー!!!」
一瞬の間で、そこの空気が歪むほどの突きの雨がローザさんが繰り出した。当たったらやばいと思ったのか、こちらでは目測ができないほどに何回か攻撃を繰り返したローザさんから安全なところに逃げるために、後ろへと跳躍したエレンが見えたー!
「お逃げにならないで下さいませんか、殿下ーーー!」
ドットーー!
またもエレンの近くまでに現れたローザさん。しかし、すぐその後、また別のところに移動したエレンが見えたー!それも残像が残るまでに早すぎて、俺の目からでは何が起こったのか、もう把握しきれないよー!多分、さっきので、マシンガンのように、何十回かの突きをあの数秒の間でやってみせたローザさんなのだろう。
ドドドドドドドドドドドドド...........
どこにいるか、もう分からなくなるまでに、二人が一秒も休まずに、あっちこっちへと残像を残しながら、移動していっては剣と槍が衝突しけたたましい音だけが聞こえてきて、この目では既に捉えることができないほどなスピードで二人は別次元にいるかのように、自分たちの世界で戦っているかのような現実離れした動きをみせている。
「.......ルーくん、あれって、すごすぎないかしらー?何かの漫画みたいだわ......」
感嘆とした声を上げる梨奈なのだが、
「あはは......わたしの目からでも何があったのか、さっぱり見えないんだよー。」
隣で苦笑いしているネフイールも同じ気持ちみたく、みんなが困っているようにどう反応すればいいのか分からないままみたいだ。
これが、学園<ナムバーズ>第3位と4位の実力かー!?
「はははーー!どうだ、ルー!今度はうちのローザさん、速度の面ではそちらのお姫様にも匹敵するんだって気づいてるだろうー!?なあ、有栖川ー!」
「そうですね、春介君。まあ、<速度>だけ、ですけど....。」
「まあね。だって、神使力の面では、あっちの方が上だしな.....。」
「その通りだよ、お二人さん。こちらのエレンの方が、より強いに決まってんだろうー?なので、今回の勝負も、うちー」
バコオオオオーーーーーーー!!!!
「「「--!!??--」」」
いきなり爆発音が聞こえたから、舞台に目をこらすとーー
「----!なあーー!?」
舞台の上に、金髪ドリルが乱れるようにして仰向けに倒れこんで、身動きもしないままのエレンの姿が見えたのだーー!で、その近くに、紫色の光が纏われている槍を握り持っているままのローザさんが見下ろしている最中なのだ。
「エレンーーー!??」
思わず、そう叫んだ俺だった......。う、嘘だろうーー!?あれー!
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