第三十八話 聖戦舞祭:幼馴染同士の試合
.......
「うううぅぅ.........」
「-!ネフイール!もう起きたのかー!?よかった!具合はー?」
「........ううう.....身体の至るとこにズキズキって感じがして......」
試合の結果が出た後、10分経って気を失っていたネフイールがやっと目を覚ましたけれど、さっきの戦いによる後遺症なのか、そうして痛みを訴えながら辛そうに立ち上がろうとする。
「おっと、駄目だよ、ネフイール!試合後だから、身体をもっと休ませないと全快するまで長引いてしまうかもしれないよー?神使力とか体力の回復とか。」
「んんん.....確かに。なら、早山隊長の言うとおりにするね、にし~。」
「それでいいわね。さすがにいたずら好きとして有名なネフイーでも、今回の件について物分りよくて意外とも思うわよね。ね、ルーくん?」
「まあね。」
「ふふふ.....セラッスは確かに問題児ってところもありますけれど、大事な時だけ大人しい女の子ですのよー?」
「あの.......」
この待合室の中央にあるソファーにて、チーム同士で結束固い俺たちの会話に割り込んでくる形に、遠慮がちに頬を染めながら俯いているエリーぜ先輩が近づいてきて声をかけてきた。
「うん?」
「ああ........オスーハイト?何かご用でも?」
「あたくし.........少しだけネフイーと二人っきりで話をしたいの。だめ......かしら....?」
「エリー..........」
試合が終わったけれど、気絶から目を覚ました二人の微妙な様子を察して、俺ら3人も気を使ってやるべく、彼女たちを二人っきりにするためにあそこから離れていって部屋の壁の向こうで移動した。
「エリー........。あの.......さっきの試合って、どんな結果が?わたし.....起きたばかりでまだわからない.....。さっき、隊長.....早山君たちに聞こうと思っていたところにエリーがやってきたから聞きそびれたけれど、なにか........話がしたいんでしょー?その.......。」
「.........引き。」
「えー?」
「引き分けだったわよ。あの......最初は絶対に勝てると思っていたけれど、やっぱり、この2週間だけじゃなくて2年間も前から努力して訓練を重ねてきたから、ついに第6階梯の現神術も使えるようになって、見事......だったわね。それも、お得意の雷系で。おかげであたくしはあんたのそれを抑えるのにすべての神使力量を消費せざるを得なかったからそれであんたと同じで気絶してしまったの。」
「あははは......あれをものにするために随分と苦労してきたよ.......。何してもエリーより強くなりたい一心から頑張ってきたけど、結局は引き分けにまで持ちこんできただけで、まだまだだね~~。わたしってやっぱりまだ未熟もので、馬鹿みたいなとこあるからね~~~てへ~。」
おどけてみせたネフイーが見えるけど、なに話してるんだろうな.......。
「でも、おかげでわかってきたわ。あんたの気持ちって。5年の付き合いのあるあたくしたちだけど、自分の両親にプレシャーを感じてそれに反発したり反抗しようとして勉強とか戦いに関連しない学科すべてを疎かにしたり試験もわざと失敗するように違う解答をし続けてきたっていうのを知っているから、それであたくしを負かしたことによって、それであたくしをその深いしがらみ.....というかコンプレックスみたいなものから開放してくれるつもりでなんでしょーー?」
「........それもあるね。にし。だって、エリーってストレスを感じてるから、学業をわざと怠るようにしてるんでしょー?神滅鬼との戦いにだけ専念したいからってほかはどうでもいいと親に喧嘩をなんども繰り返してきたっけー?でも.......それでも、駄目だと思うなぁ.......いつまでも1年生のままで人生を過ごすわけにはいかないし、そろそろ前へと一歩を踏み出さないと..........。」
「だから、あたくしを倒すことにより、あたくしの戦士としての誇りをへし折ることで、自分の人生における総合的な価値観を改めさせるって魂胆があるのよねー?でも.....もし計算違くなったらどうするのー?たとえあたくしがあんたに負けたとしても、学業にも熱を入れるって保証はどこにもないわよねー?むしろ、より訓練ばかりするようになり、またもあんたを倒すって目標を元にますます学業から身を遠ざけるって展開だってなきにしもあらずって思わないのかしらー?」
「まあ、まあ。その時はその時で、違う方法でエリーに目を覚ましてもらえるよう頑張るので、別にそれでもいいと思うんだけどね~~~。現に、今はエリーの口調を昔のように自然体に戻せただけでも十分に大きな成果も上がったし、にしし....」
「ネフイー............。」
(そう。彼女はいつだってそういう性格してるわよね。身勝手なところがあるけれど、芯は人懐こいいい女の子で、ちょっとお節介なとこもあるけれど優しい面もあり、いつもふぜけてる仮面をかぶってけれど、いざという時にしっかりすることの出来る、立派なヴァルキューロアなのよね。だから、あたくし......)
「~~~~~もう~~。なに、この健気で可愛い思考してる娘は~~~~~~。」
彼女の思いやりや親切な意図がたまらなく大切で、感動になっちゃうあたくしはたえられずに、思わずハグしてしました。
「あああ~~。エリー、なにしてるのーー~?ちょおーくすぐったいからやめてよ~~。あー?あははははーーー!!こちょこちょしないで~~!?なー?どこ触ってるのー?やああぁぁ~~ん」
たまらなく彼女の可愛い反応に突き動かされるように、胸にまで手が伸びてしまってーー。ああー!いけないわー!貴族の娘としてはしたない!でも、なでなでもみもみするの気持ちよすぎて止まらないの.....。
昔、こんな風にじゃれつくことは一回だけあったんで、それ以外はライバル同然のきびきびとした演技みたいな態度で関係を続いてきたけれど、こうすると、なんか今まで担いできた肩の荷が降ろされるような感じがしていい気持ちになる。
「こほんーー!」
「「--!?」」
「お二人さん......。随分と貴重な破廉恥なスキンシップタイムを楽しんでいるようですけれど、公衆の面前でそれを控えてもらえませんのー?」
おおおーー!見てみると、青筋をたてているエレンが彼女二人まで、早いスピードで近づいていっていまでも拳骨を振り下ろそうって剣幕で彼女たちを睨んでいるようだ。
それから、お休みのタイムも順調に進んでいって、軽食も提供されておなか一杯な俺たち8人が待合室にて、のんびり過ごしていって30分近くが過ぎると、
「これより、第2試合を開始するぞー! エレン・フォン・シェールベット対ローザ・フォン・ファイットレームだ!両者、直ちに舞台へ上がってきてくれ!」
ローズバーグ会長の声がここまで響いてきた。
エレンがあっちのローザと戦うだとー!?
まあ、それぞれの実力が近い<ナムバーズ>3位や4位だから当然か......。
「どうやら、次の試合はわたくしの番になるようですけれど、予想通りにファイットレームと戦うことになったようで腕が鳴りますわよね。」
「エレン......。俺もそう予感してたけど、ローザさんはお前より1位ランキングが下のようだけど、彼女の戦闘スタイルや能力すべてを把握してるのか?」
「うん........確かに他の誰よりも彼女とは一番長い付き合いがありますけれど、多少は彼女の戦い方とか能力全般は見せてもらってきたともありましたけれど、それでも未知数もまだ残っていますからね。なにせ、わたくしたちはいつも行動を共にしてきたってわけでもなかったんですし、彼女が一人っきりの時に訓練した際に身につけた新しい技という展開もあるかもしれませんので今回の試合は手を抜くつもりは微塵もありませんから.....心配しなくていいですわよ。決して、油断もしないつもりですから。」
「それは頼もしい限りなのよね。ね、そうでしょう、ルーくん、じゃなくてルー隊長ー?」
「ああ.....そうだね、梨奈。なら、俺から言うことはこれ以上なにもなさそうだね。じゃ、頑張って勝利を掴みに行ってきてくれー!エレン!」
「はいー!かしこまりましたわ、ルーイズ隊長!ファイットレームとは幼い頃から.....詳しくいうと5歳からの幼馴染で親友っていう感覚もある長年の大切な仲間でもありますが、試合に関しては絶対にチャンスを与えないで全力で行きますから、戦いの最中に応援や声援をしてくださると嬉しいですわー!」
「おう!(わかったわ!)(任せてよ!)」
エレンの元気な盛り上がり宣言にそう返事した俺、梨奈やネフィールなのであった。
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