第二十九話 両陣営の視点
10日間後、
1200神援暦1月、日曜日の26日の昼下げ、午後2:00時である。
春介遼二の視点:
第5学女鬼殺隊の陣営で、今の彼らはフォルールナ王都の外に....つまり、王都を囲んでいる城壁の4箇所の門から北方面のものから2キロほど離れたところへ4人揃って繰り出していった。レクリア平野のとある場所にて、<聖戦舞際>というヴァルキューロア同士による試合大会に向けて、春介遼二は親友である早山ルーイズ率いる第4に勝利するために隊員達と一緒に訓練中である。
で、正確な場所を指すと、彼らはレクリア平野の一つの区域にチームとしての戦い方のコツや有効な戦術を練っていく。その区域は<第2教練場>といって、申請を通した聖メレディーツ女学園の学生にのみ立ち入るできる場所なのだ。
使用したいと申請を提出した学生に許可が降りたら、彼らに付き添うべき担当・兼・指導役を務める教員さんが学園長から任命されて、監視役も兼ねて訓練中の学園生を見張る形でそこの場に臨むようにと学則として定められた。要するに、使用許可が降りても、一人の教員が彼らと同伴せねばならない。
「はあああーーーーーー!!!<百発白雷突貫線>」
第5学女鬼殺隊の陣形の再先頭には神使力が膨れ上がって発光している姿のローザがいて、向かってくる何十数もの飛行してきた大型蜂に近い見た目をしている物体を(シャードゥン)という現神術を通して、悉く粉々に粉砕してみせた。
その技は前のサカラスと戦った時と同様に、<エイン・シルファース>という槍の形をしている<現神戦武装>を愛用しているローザが握って、その先端から彼女の神使力が放出され百以上にも及ぶ光線を向かってくる害意や殺害・破壊衝動のある敵とみなされるものをすべて迎え撃つ技である。サカラスと戦った時は明らかに今よりの神使力量が込められていて向かってきた複数の触手をこぼれなく消滅させた。あの時はまあ、迎え撃ち損ねる可能性も考慮しただろうローザが必要以上の力をこめて万が一にも遼二達に被害が及ばないように配慮した。まさに、完璧主義な武道家の出の文武両道な美少女なのである。貴族の娘としての立場も含めて、生まれ育った環境が指導者としての資質や教養が育みやすいって点に関して、有栖川姫子と同じタイプの人間である。
もちろん、例え敵から攻撃してこなくても、あるいは敵が一切目の前になくとも、こちらからその現神術は普通に発動できるので、その際だったら放出された百発以上の光線は術者の武器(槍)の先端から正面や円弧にかけて、横広い範囲で0.5キロも前のものを無差別に蹂躙し、無機物か有機物に問わず全てを破壊しつくすのみ。
「ナイスー!ローザっち~~!!」
向かってきた何十数の訓練用の<自動飛行型攻撃可鉄製的>を全て跡形なく爆砕したローザを称賛したのは、他の誰でもなく、エリーゼ先輩なのである。
「まだまだですよ、エリーゼ殿ー!春介隊長、ご覧になられますでしょうかー!?飛んでるものはさっきので全部片付けましたけれど、地面に沿って駆けてくる敵集団の左翼が猛烈な勢いでそちらの位置に到達しそうになっておりますので、お独りで迎え打たられるでしょうかー?」
「おうーー!任せとけってー!有栖川ー!聞こえてるかー!?君は敵軍の右翼に突撃して、あちらを蹴散らしてから、敵の陣形の背後に回りこんで、僕たちの攻勢に呼応するように二方面から敵軍を叩き潰すんだー!いいなー!?」
「はい、春介隊長!はあああーーー!!」
短く応えた有栖川は言われた通りに、早い速度で駆け出して敵軍の右翼に紅蓮禍刀を鞘に収めたまま肉薄していく。おそらく、切りつける瞬間に抜刀するんだろうなぁ........
後、さっきは飛べる型だったけど、名称に忠実ではなく、普通に飛べない型の<自動飛行型攻撃可鉄製的>もあるので、そういった群れに襲い掛かっていく有栖川がいる。
ザクーーーーー!!カチャンーーーーー!!!ザクーーーーー!!
遥か斜め右の前方に駆けていった有栖川を見てみれば、もう既に何十数体もの神滅鬼の様々な姿を模した<自動飛行型攻撃可鉄製的>が数十線までに細かく切り刻まれていて破壊された。でも、あくまでも模造体であって、本物の神滅鬼ではないため本来の怪物の持つ攻撃の仕方が正確に発揮されずに済む。つまり、<神使力>が纏われた<現神戦武装>や<現神術>からの攻撃を受けて破壊されるまでにどれほど堪えられるかにのみ、似せようとした神滅鬼の種類の性質が再現できる。
だって、神滅鬼の階級によって、<神使力>の込められた攻撃に対する耐性が違うからだ。それは、その怪物の持つ<反神力>が強さのランキングによって異なるので、とある高度な現神術を唱えて合成や練成も加えて頑丈に作り上げられた<自動飛行型攻撃可鉄製的>があれば、神滅鬼の持つ<反神力>なる防御膜みたいなものを真似ることができる。まあ、真似られるのは階級7位までなので、まるで攻撃手段なしのサカラスと戦うような<イリーズ>は作れないらしいけど.......。
因みに、有栖川が破壊したあれらは神滅鬼7位、ソリグ級の持つ<反神力>と同じような<神使力>に対する耐性が備え付けられているので、容易く粉砕してみせた有栖川の実力はソリグ級以上ということだ。すげえなーー!こんな短い間なのに、ルーから聞いた話によると前のゾウーレツ戦で無双した時は8位グラチーサ級が相手の大半だったらしいので、やはり<神の聖騎士>の特性である<異常な成長速度>がまたも活かされてるようだな。
で、僕たちの陣形は四角い尖った矢に近い形をしていて、一番前にいるのはローザで、左翼にいるのは僕で右翼にいるのは有栖川だ。で、彼女の熱心な懇願もあって一番後ろの配置にはエリーゼ先輩に任せてやった。なんか、まるでサボりやすそうな位置での担当を強く希望してきた感が否めないなぁ.......あの面倒くさがりっ娘はーー!
「春介隊長ー!そちらへ来てますよー!」
「-!?」
いけないー!有栖川の活躍を見て呆然としていたが、僕の方にもあのドローンみたいな(イリーズ)が押し寄せてくることに意識から完全に抜け落ちてしまった。目の前の敵に集中しないとー!
「はああああーーーーー!!!」
巨人みたいな二足歩行ゴーレムのような形をしているイリーズが10体以上こっちへと猛進してきたので、自分を奮いたたせるつもりで掛け声をあげた僕はすぐさま跳躍して、鬼殺大聖金棒という金色の棍棒の形をしている<現神戦武装>を天高く振りかざしながら、神使力を武器に通して激しい勢いで振り下ろしたー!
バコオオオオーーーーーー!!!!!!
僕の攻撃から生じる衝撃波や破壊力はあまりにも凄まじくて、振り下ろされた棍棒は一体のゴーレムだけを狙い打つつもりでいたのに、そいつだけじゃなくて回り直径10メートル以上もが破砕され、草だらけ地面が砂埃を上げてクレーターが出来上がった。
「ええ.........これが僕の今の力ーー!??」
正直にいうと、かなり驚いた。この10日間、いくつかチームとしてここで練習を重ねてきたけど、本日の成長には本当に別格なんだなー!有栖川もー!これぞ異世界ラノベによく読んだことあるチート要素だな、<異常な成長速度>って......。
「はあああーー!!」
「せいーーーー!!」
「やあああーーー!!」
それぞれ掛け声を上げながら、ローザ、有栖川や僕は向かってくるイリーズをすべて打ち砕いていく。
「隊長!敵軍の陣形が崩れたー!今、中心部分で最前線の突撃役割を担当中のワタシの前には敵陣の中央だったとこががら空きでございますよー!リーダー格のあれがあそこに控えー」
カチャアーーーーン!
ローザがいい終える前に、あれ.....つまり、あの敵軍の指揮官みたいなもんがあって、なんか戦車みたいな形をしている鉄製の山の様な機動性の低くて重そうな塊の中心に砲塔みたいなのが出っ張ってきて、目測で見ると口径100mmぐらいかな....。それが、いきなり照準をこちらに向けてくるのだ、それもローザ方向へ。
ちなみに、あれは重装機動戦塞といって、イリーズと同じく、古代の人間族の栄えた文明が作り上げた機械の数々の一つであり、製作方法はこの世界リルナの現代人には謎で、再現して作るのは不可能と言われている。
現在、このグロスカート大陸にある国々に、こういった<古代人の作りし機械>を数多く所有している国家はこの7ヶ国のみ:ゼンダル王国、アスリン王国、シュフリード王国、シャリン王国、シェファイーアス王国やジャスタールズ王国
その7ヶ国に、シェファイーアス王国やジャスタールズ王国を除いて、すべてはゼンダル王国を中心に国境が隣り合わせの国々ばかりだなぁ......。地図を見ても、このゼンダル王国が大陸の中央に位置するように見えるし、本当に影響力はすごいな、シュフリード王国という大国ほどの面積を持たなくても........。
「甘いー!エリーゼ殿ーー!君の出番だー!」
「はい~~~。」
物思いにふけっていたら、ローザが横に身体をずらして、後ろにいるエリーゼ先輩が阻まれることなく一直線へと前方の重装機動戦塞へ現神術を遠慮なくぶっ放せるようにしてくれた。
「やあああーーー!!<一直線前方放出大破猛速太氷壁>」
神使力を迸らせたエリーゼ先輩は青白い光を全身に帯びながら、<グラエンズ>という小型ロッドの形をしている<現神戦武装>の先端から周りが凍てつくような超低温な空気が発生されていき、それに伴って、太くて高くて横長い大きな氷の壁が地面から生え上がって、凄まじい勢いであの<重装機動戦塞>へと向かって一直線に伸びていくーー!
ピキピキピキピキーーーーーカーチンーー!!!!!!
前方へ伸びていったあの大きくてぶっとい氷の壁は容赦なく軌道上にある物を凍らせていった。もちろん、あの戦車のような形をしている<レティーネット>も......。
「すげえーー。」
思わずそれが口から漏れた。<レティーネット>が凍ったので、もう大損害を被って動けずに完全に終わったけれど、神滅鬼との実戦を考慮した戦い方を練習したければ、ここは追撃して凍ったあれを直接、攻撃を仕掛けて粉々に打ち砕いた方が先生から貰うポイントが高くなるはず。なので........
「みんな、僕がとどめをさしにいくから、任せてよねー!?」
「「「了解ですー!(分かりましたー!)(はい~~~~~)」
「はあああああーーーーー!!」
金色の大きな棍棒をしている僕の<現神戦武装>を両手で握りしめながら駆け出していった。あまり速度を上げずにいる僕だったけど、ものの数秒だけであの<レティーネット>の近くまで到達して、これで終わらせようーー。
カチャアアアアーーーーー!!!
けたたましい音を立てて僕の打撃によって、この戦車みたいなのが粉々に砕け散った。やったねー!
でも、さっきの<レティーネット>、あの100mm口径の宝塔から砲弾を打ち出してくるところだったんだよなぁーー。レーギナ先生が前もってあの機械から打ち出せる攻撃手段を教えてくれたから間違いないはず。先生によれば、僕たちのように<神使力量>がある程度高いなら、砲撃に当たってしまってあまり傷を負わずに無事に受けきれるだろう。まあ、元の世界だったら、木っ端微塵にされた僕たちの肉片がこの辺りに飛び散るだけなんだけど、はははぁぁ......(笑えない冗談なのに......)
パチパチパチー!
「これで終わりな、諸君ー!」
僕たち2年E組の担任先生、この<第2教練場>でこんなチーム戦を重視した訓練を終えた僕らはみんな集まろうとしたところにレーギナ先生がこの広い教練場を囲むようにしたそこの石製の城壁の上から飛び降りて、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
「90ポイントだ。春介、見事だったわね、敵軍の頭を徹底的に始末したのを。大抵の素人なヴァルキューロア学生は敵が本当に戦闘不能にまで破られたのか最後まで確認せずに勝利に浮かれていたけれど、あんた達は違うようで優秀なのねー。」
「はは......お褒めに預かり、光栄っすよ、先生ー。なあ、有栖川ー?」
「そうですねーー。春介君は戦局の変化に素早く対応できましたし、臨機応変の才がありますね。後、ローザさんの采配や的確な指示、戦いながらの他の隊員への戦況報告および配慮や敵への攻撃誘導も完璧でしたね。」
「エリーは~~~~?エリは~~~~~?」
「エリーゼはローザからの指示がくるまでにずっと後ろで草の上に寝転がってんじゃんー!?まったく!しっかりしろよなー、このサボり気味女子ー!」
「へえええ~~~~!?またも変な呼び名がついてるエリーだけど~~~遼二っちのいじわる~~~~。」
「いいえ、戦場で寝転がってるとか普通ありえないことですよ、エリーゼさん。」
「まったくだなー!もっと真面目に訓練に挑んでくれないのか、エリーゼ殿はー!?」
「うううぅぅぅぅ..........わかったよ~~~。姫子っち、ローザっち~~~そんなに怒らなくても..........。本物の神滅鬼との実戦じゃないのに夢中すぎだよ~~。」
自業自得ですよ、エリーゼ先輩。まあ、先輩も大会が近いからってもう(あんなこと)するのは<聖戦舞祭>が終わってからにしようと提案したら、渋々ながらも承諾してくれたので、今のところ先輩とあんな秘め事しなくて済むようにはなった。なので、それで落ち込んで訓練やチームとして戦う練習に対して気合があまり出ずにいるだろう。でも、大会が終わってからでも止めにしないかと切り出す決意を固めないとだな。
だって、僕はもうそういうの間違ってると思うよ。僕は確かに人並みにエッチなことに興味があるけど彼女にもなっていない女の子とあんなことするのはどうかと思うから......。
で、<聖戦舞祭>にはルーの部隊の隊員と一対一でやり合うって話らしいだったけど、こうして神滅鬼との実戦に重きを置いた訓練方法にしたのは、レーギナ先生から決められたことだから。まあ、きっと当日には役に立つと思う、たぶん......。
それにしても、急激な成長を見せた僕と有栖川だったけど、<あっち>もたぶん同じだろうなぁ........。待ってくれよな、ルー!<ナムバーズ>3位である金髪お姫様を隊員として抱えてるからといって、いい気になりすぎるなよー?
正々堂々ときみの部隊を叩きのめしてやるからなあーー!
なんか、こっちも熱くなってきてるんだけども、もしかして親友の部隊と戦うのって、はしゃぎ過ぎなのかなーー。
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同日の午後4:30時、レクリア平野の<第1教練場>にて、
早山ルーイズ、及び第4学女鬼殺隊の陣営の視点:
「せいーーーー!!」
さっきの俺の苦労して覚えたばかりの<煙幕発生霧陣>という現神術のお陰で、エレンの視界に捕捉されずに接近できた俺は<朝寝邪魔鬼両断大刃>と名づけた大型鎌の形をしている<現神戦武装>をエレンの頭上に向かって振り下ろしたが、
ガチャアーーーン!!!!
という金属音が響き渡ったので、数秒たって霧の雲が徐々に消えていったら、俺のアサネを見事に<ソヒー・ヨセミン>というガンブレイドっぽい大剣で受け止めてみせたエレンが下にいる。
「いい作戦でしたわよ、ルーイズ隊長。でも、残念でしたわね。予測しましたのよ、隊長がどの方向・角度から攻撃を仕掛けにくるのをー」
ゴドーーッ!!
「ぐはあーーーっ!!」
エレンにそう言われて、鳩尾に痛みを感じながら後方へと突き飛ばされた俺。
神使力の込められたお姫様の鋭い雷撃のような蹴りがクリーンヒットしたからだ。どうやら、さっきは俺のアサネを受け止めたエレンは自分の持つ剣の振り上げで俺の大鎌をはじき返してきて、かろうじてこれに手を離さずに両腕も上へと弾かれそのがら空き状態の俺を狙って蹴りを放ってきたんだな。やはり、腕力だけでも神使力量の差がものをいうんだなぁ.....。
しかし.......さっきはぶっ飛ばされながらでも蹴ってきた瞬間にエレンのスカートがひらひら上がってパンツがかろうじてチラ見できたけど、あれはラッキだったぜー!
ドーーッ!
草の上に背中から落ちた俺の顔面に、
「チェックメートですわよ。」
銃口のついた大剣の切っ先を自分の顔の数センチ近くまで突きつけたエレンにそう言われた。
「降参だ。」
「よろしい。いい勝負でしたわよ、ルーイズ隊長。」
仕方なく負けを認めた俺に対して、ニコニコと微笑みながら、こちらに右手を差し出してきた我が第4の綺麗な金髪お姫様であるエレン。嗚呼、今日も美しいね、エレン........。
「いや、それほどでもないよ、エレン。またもお前に負けたなぁ、はあぁ.......」
「いいえ、いいえ、さっきは本当に素晴らしかったですのよー?この前、2回もここで訓練してきましたけれど、その時はわたくしからの反撃を食らって一回目は気絶、2回目は激痛を訴えながら地面に胴体のあっちこっちを両手で押さえて呻いたり、唸ったりしてましたのに、本日はわたくしの蹴りを受けてもさほど痛がらずに済みましたのは恐るべき成長ですわよー?」
エレンの右手を握って立ち上がった俺にそう評価してくれた彼女だったけど、素直に喜べないというか.......。だって、隊長としてもっと強くならないと駄目だと思うし、リーダーが弱いままだと士気の問題にも関わるしね。それにー
「やああああーーーー!」
「--!?」
梨奈の掛け声が聞こえてきたので、あちらへ振り向いてみると、
カチャアアーーーーン!!!カチャアアーーン!!カチャアアーーン!!
「くっーー!」
なんか苦戦しているネフィールが見えた。梨奈の金属製の鞭の形をしている<現神戦武装>、<キルスカ>が猛然と振り出されてそれを巧みな両手による動作で<ジェシー・クレファス>という鎖に繋がっている二本の短刀でさばき切った。でも、あまりにも勢いの全然衰えていない梨奈の猛攻がさっきから5分近くまで続いてきたらしくて、両手に痺れを感じて焦っているネフィールの様子が窺われた。
カチャン!カチャカチャーーン!カチャーーン!!キシーーン!!!カチャンーー!!
梨奈の攻撃はとどまる事を知らずに加速していくばかり。鞭を操っている方の右腕が霞んでみえるほどの速度で振り乱されてそれに呼応するように手に持っている<キルスカ>がモーションブラーを起こしているように軌道が全然みえないー!梨奈も分かっていると思うんだけど、ネフィールの<ジェシー・クレファス>の方がリーチの長い武器であるのを知ってるので、あっちの優位性を活かさせないように攻勢に転じるような展開を封じるべく攻撃の雨を緩めずに続いていくようだ。梨奈のやつ、我慢比べであっちが疲れ果てるまでに鞭を振りつづけていくつもりみたいだなぁ.......
「せいやーー!ふうぅぅ.....」
えー?最後に一振りだけ放って手元に戻した梨奈がいるけど、なんでー?
攻撃の雨を続けるんじゃかったのかーー!?
「降参なのよ、ネフィー。よく受けきれてみせたわよね、あたしの<キルスカ>の数々の薙ぎ払い攻撃。たくさん弾け返したりもしたし、優れた反応速度だったわ。」
涼しい顔して降参を告げた梨奈は微笑を浮かべながら、ネフィールに背を向けてこっちへと歩いてくる。
「勝者、ネフィール・フォン・セッラスだーー!押されっぱなしで、ポイントは40点にするーー!」
シーラ先生があの城壁の上からこっちへと跳び下りて歩んできながら、そんな判定を下した。
3分後:
「ね、ね、森川さん~~。なんで圧していた側なのに、いきなり負けを宣言したのーー?訳わかんないよーー。」
ネフィールに聞かれた梨奈ははああーと嘆息し、こう答える、
「だって、ネフィーと一騎打ちの時にあたしの目的はただ、自分の実力とあんたの実力を比較して、どの程度の差が出るか見極めたいだけだったわ。さっきので分かったことがいっぱいあったので、試合を終わらせてもらっただけなのよ。」
「本当にすごかったですわ、森川さんー!<ナムバーズ>7位であるセラッスをそこまで圧倒していたなんて、<神の聖騎士>として流石でしたねー。わたくしの観測に間違いがなければ、今の森川さんなら恐らくセラッスと同程度の実力を持っていると思いますわ。」
「でも、ネフィールの必殺技の中に、<ケルドアーン>という現神術があるだろう?ほら、あの竜の頭が二つも形作られたやつ。もしあれで梨奈に放ってみたら、凌げると思うー?」
俺の問いに対して、揃って困った顔しだしたネフィールや梨奈がいる。なんかえへへへ~~と苦笑いしてるネフィールや複雑そうな表情になった梨奈なんだが、そんなに難しい質問だったのー?
「にしし.......たぶん、そうなったら、わたしが勝つと思うよーー?」
「うううぅぅぅん........まあ、そうね。でも、いずれネフィーより強くなってみせるわー。」
「まあ、森川さんは神の聖騎士ですので、セラッスを超える日がそうそう遠くないはずですわ。そうでしょう、隊長さんー?」
エレンに意見を求められたので、
「そうだな、なにせ、ラノベみたいに異世界チート能力をもらってるからね、俺ら。」
「-はいーー?ラノベー?チート?何の単語ですのー?」
「いや、こっちの話だ。気にするな。」
その後、チームとして4人での会話が続いたけど、ふとある事件を思い出した。
そう。10日前、ルゼーヴィンヌ先輩からキスされそうになった俺や梨奈だったが、その後、ローズバーグ会長の登場によって連行されていったけど、後になって知ったことは、会長があの変人にとある超高度な現神術をかけたらしくて、それで先輩が<神の聖騎士>である俺、梨奈、遼二や有栖川さんの半径1メートルの距離内に入ってこれないようにした。聞いてみれば、その現神術の影響でなんか見えぬ障壁っぽいものが先輩の体の回りに張られていて、<神の聖騎士>なる者の持つ特殊な神使力の波長に反発反応を起こして、近づけなくなる。
ローズバーグ会長って本当になんでもありのスパー超人だなぁ.....。まあ、会長のお陰で、俺ら4人はあの日以来、その変わった先輩からちょっかい出されずに済むのでマジで助かるわー。
それにしても、<聖戦舞祭>までに4日しか残ってない。
いよいよ、遼二率いる第5学女鬼殺隊の隊員と一対一の個人戦に挑む時間がくる。
負けないぜー俺たち!
そして、遼二、お前も手を抜くなよー!とあるFPSゲームであいつに負けたことが何度もあるが、今回、この世界で本物の武器を使って絶対に勝つぞーー!親友だから、試合でもお互い気兼ねなく暴れていこうなーー!
後、梨奈もエレンもネフィールも!絶対に負けるなよー!信じるからな、お前らの力をー!
第5に一人も脱落せずに完全勝利しようー!
なんかわくわくしてきたなぁ.......。
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