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第二十四話 早山ルーイズサイド:立腹になる少女

「それはできかねる」

「なんでだよー?」

俺の懇願を断ったアイシャ王女だが、どうして俺の身体の上に乗ってるままでどけてくれないんだよー?もしかして、俺に気でもあるのかなー?だから、それで俺を押し倒して誘惑しようとしてるのー?


「だって、こうした体勢にすると、検証するのにぴったりだからな。」

「だから、さっきも言ったけど、何の話なのかさっぱりわからんよー!説明してくれよ。」

「百聞は一見にしかずというし、言葉で説明するよりやっぱり行動で示した方が早いので、失礼するね。」


ガチーっ

「!?」

両手で俺の両頬を掴んできたアイシャ王女はよほほと笑いながら、今度は舌なめずりすると同時に妖艶な表情を浮かべて、俺を見下ろしながらどんどんと顔を近づけてくる。近い近いよーー!


「じゃ、黒い少年よ。君の唾液、味わわせてもらおうーー。」

「--!?--」

今度はあろうことか、目と鼻の先まで真っ白い顔を近づけてきた彼女はその瑞々しいピンク色の唇を寄せてきて、俺のそれと接触しようとするー!ええー!これって、キスしようとするのかーー!?


バタンーー!!!

「ルーくんー!」

アイシャ王女の唇が俺のと触れる寸前のところで、このトイレの豪華なドアを乱暴に開いた梨奈が俺の名前を叫びながら、ここへと駆け込んできたー!俺は床で横になってるから、彼女の全身が真っ逆様として見えた。


かなり深刻そうな顔してるので、もしかして俺のことを心配し様子を確かめるがために迎えにやってきたのー!?まあ、神使力が身体中に流れてるのでこんな近距離で走ってきて息を切らさないのは当然ではあるが.........


「梨奈.......」

「よほほよひひ.....。どうやら、予定と違う展開になってるんで、どうしたものか.....」

俺たちのこんな体勢を見て、唖然とした梨奈だったが、見るみる内になんか両肩を振るわせ出して、ぶるぶると全身を強張らせている様だ。その反応ーーやばいー!散々みてきたけど、ああいう状態の梨奈は大抵の場合、(ぶち切れ寸前)のものだー!


「ルーくん......トイレが長いから、心配になって様子を確かめに行ってみたら.........なにやってんのよ、あんたは~~~!!知らない女の子とトイレでイチャイチャなんかしてーー!!」

真っ赤な顔になりながら、若干目が潤みそうになってる彼女がそう声を上げながら、爆発寸前の怒り顔で、あろうことか跳躍してきて、俺の上に乗ってるアイシャ王女に跳び蹴りをかまそうとしてきたーー!ううううおおおおおーーー!パンツが見えるぞーー!


「はああああーーーーー!!!ルーくんからどきなさいよーーそこの色情狂女がーーー!」

「--おっとととーー。」

梨奈の跳び蹴りを見事にかわした。もちろん、それで俺の上からどいてくれて解放されたけどーーってー!それしたら、結果はどうなるか明白じゃないかーー!!!


「げふうううーーーーーっ!」

そう。狙いが外された梨奈の両脚は俺の太ももに着地したーー!勢い余ったのなら、俺からもっと前へと着地したかもしれないけれど、梨奈は力を抑えながら飛び掛ってきたので、そんな距離は離れずに脚が床に降ろされた。


「ルーくん!ごめんー!痛かったのー!って、まずはそこの変態女を縛り付けて風紀を取り締まる生徒会下の役員に身柄を渡した方が先決よねー!」

「よほほ.......できるのかな、赤い少女よー?」


「あんた........どういった経緯でルーくんに馬乗りになってたのか知らないけど、会ったこともない男の子にそういうことするのって、相当な者のようねーー。それにしても.......トイレは女子立ち入り禁止でしょーー!?用を足すなら、あの<現神術>を使っちゃえばいいのに、わざわざここへ入ってくるってことはルーくん狙いなのねーー!?」


俺の太ももから身体をどかしてくれた梨奈は壁際まで後ずさったアイシャ王女を睨みながら、真相を問いただそうとする。

いかんー!あれってまずくないー!?

「梨奈、彼女に手を出すなーー!!あのお嬢さんは、他国の王女だそうだよーー!」

「--?....そうなのーー?......でも、王女だからって、何の関わりも縁もないあんたさっきの........あれ.......をしようとしただなんて~~~~。どう考えても間違ってるわよーー!そして、王族だからこそ慎みなさいよねーー?あんなのを軽々しく初対面の異性にやっちゃうだんて、明らかに変なのよーー。」

どうやら、まだ怒り心頭の彼女はずっと視線をあの姫様に据えたままで、自体が好転する兆しがなさそうだ。どうするの、これー?


と、そんなことを悩んでると、梨奈はあろうことか、腰の周りに括り付けられたベルトの一本のシリンダーに片手で触れて、何かを取り出そうとしてるようだーー。


シュウウーーーーーーー!

<キルスカ>だ。梨奈の<現神戦武装>で、常に肌身離さずに持ち歩いてきたその金属製の鞭の柄の部分を右手で握り締めながら、お姫さんに対して臨戦態勢を見せるようだ。梨奈の<現神戦武装>って、俺のと違って縮小できる形態にするのも可能なので、俺みたいにエレンに<武器縮小兼元形戻ニスファル>をかけてもらう必要性がない。今、梨奈が王女と一触即発な場に臨むけどこりゃーーこの状況ってかなりやばくないのかーー!?


「なので、懲らしめてから、身柄を確保し風起員に突き出してやるわーー!この学園の生徒はみんなヴァルキューロアだから、あたしさえ力を十二分に押さえ込んだまま縛り付けたら多少は傷をあまりつけないで済むので、安心してね、ルー隊長。」


真剣顔に切り替えた梨奈はあえて俺の職務の呼び名でよんで、王女と対峙するように戦う構えをとりはじめる。


あれーー!?もしかして俺、お姫様は<ナムバーズ>2位で伝えるの忘れちゃったーー?それに、アイシャ王女の学年もまだ聞いてないので、同学園か先輩かまだわからないんだなぁ......でも、彼女の余裕と自信満ち溢れる口ぶりや身長からみれば、後輩ってことはないだろう。

..............................


と、その同日のゼンダル王城にて、ネネサ女王の公式の事務室で:


デスクで書類の束から一枚一枚の紙面を取り出しては調印をしていく女王がいて、多忙の様子である。その中に、ノックする音が聞こえてきた、


トントンー!トントンー!

「入れー。」

女王の許可を得て中へと入ってきたのは、青い髪をしているローブ姿のユリン卿だ。いつもきりっとした真面目な顔であるけど、幼い容姿も備え付けられたところからすれば、その大人しい性格とはギャップがあって、たくさんの男性の神官の心を奪ったり、慕われたきた。


もちろん、本人は少し鈍感なところがあるので、自分と関わってきたすべての異性からどんな風に思われるのか気にする様子もないんだけれど。たぶん、枢機卿としての責務や職務が一番で、色恋沙汰や周りの意見が念頭にないだけかも。だから、巷からこう呼ばれることも多々ある。<勤勉なる若き聖女>という。


「お久しぶりです、ネネサ女王陛下。」

「何をいう?一週間前、御主と会ったばかりじゃないのうー?妾のこの王城内にある饗宴場で。ほら、<神の聖騎士>であるあやつらが召喚当日にあの平野へ飛ばされて神滅鬼<サカラス>の襲撃から助けた御主じゃろうーー?」


「はい、そうですね。あの時は本当に限界に近い感じでしたね。もしエレン姫様がお助けにいらっしゃらなければ、私と彼ら4人はあの世送りでしたね。」

「ほほほうー。そうじゃなー。大霊界ファルートロス行きになるの確定じゃったが、腐っても鯛。この世へ召喚されてきたばかりとはいえ、彼らも<神の聖騎士>なる者なのじゃ。たぶん、死んでおってもきっと蘇ってくれるんじゃろう、シェーレアツ様のお与えになられるお力で。」

「そうですね。」


「じゃ、妾は御主を本日、ここへ呼びよせたのは他でもない、彼らについて話し合うためなんじゃ。聖メレディーツ女学園へ入学して4日間がたったんじゃが、彼らに関連する話は既に耳に入ったんじゃろうー?」

「はい。まさか、一週間もたたずに<ナムバーズ>9位であるフェルリーナ嬢を倒しただけじゃなくて、二つの学女鬼殺隊が編成されてそれが男性二人の<神の聖騎士>の方々が隊長職に任命されたり、早山さんの率いる第4がゾウーレツ町に襲撃をかけた神滅鬼の大群を撃退したとか、我らが未来の救世主達はみんな順風満帆な成長をお見せしてらっしゃるし、急ピッチな大進歩ですね。」


「例の件も知ってるんじゃのうー?」

「はい。<ミスダン族>と酷似してる姿に変貌したフェルリーナ嬢でしたね?後、何故、私の行った<聖なる神の使者を仰ぐ演舞>なる儀式で彼らが私の側にではなく、あの平野へと飛ばされたのか、原因を調べるための一環として老人蒸発の捜査も進みましたけど、進展が何もなかったとか.......」


「うむ。神使力の痕跡を辿ろうとメラニスをあそこへ派遣したが、機器を使ってもそれらしきものが見つからなかったと報告を受けたんじゃ。」

「おかしすぎるですよねー?何があったのか、......ひょっとしたら、またあの秘密結社の仕業なんですかーー?」

「おそらく.......」

「..........」


俯いて何か考え込んでる二人。少しの沈黙の後、居住まいを正した女王はユリン卿へ深刻な表情を向けて、こういう、

「じゃーー。それは本題じゃないし、今は御主を呼んだ最大の理由を話す。聖なるジラン教書って最近、どれぐらいの頻度で聖言を呼んだ?」

「もちろん、シェーレアツ様の僕として、高位な神官でもある私は毎日欠かさずに読みましたよ。それも、総てで。」


「うむ。大母神の敬虔なる信徒である御主なら、そうこなきちゃなー。 じゃが.......この国の枢機卿として勤めておる御主でも未だに知られてないことがあるんじゃー。」

「あの.....それって、どういう意味でしょうか、女王陛下?」


「これは王女となった者にしか言い伝えてもらえなかった真実なので、よく聴くがよい。」

「はい(ごっくりー)」


「神聖なるジラン教書の内容には秘められた部分が綴られておる。特殊な現神術をとある空いているページに発動しないと、読めない形となっておる。

そして、それを使用することができるのは聖虔白女のみ。で、これを知ってるものこの周辺国の現統治者である妾と数人の他国の女王のみ。」

「女王にだけーーですか?」


「そうじゃ。で、その秘められた内容とは.......」

いっそう厳かな表情になった女王はユリン枢機卿に、真実を伝えようとしたのである........。


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