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もしかして、俺達、大ピンチ?

とある神殿の中にて、3人の女性達がなにやら話し合ってる....


「選ばれしものであらせられる「神の聖騎士」をご召喚されたでございますよね?なら、何故ここで彼等のお姿はまだお見えになっておられぬままでございますの?」

「....そ、それは.....」


そう尋ねた白いローブ姿の20代後半の女性に対して、彼女より位の高い煌びやかなローブを着ている身長の低い真っ白な肌を持っている、幼い顔でありながらもどこか見た目よりも神秘で清廉な雰囲気を醸し出してる10代半ばの少女が言いよどんで答えられぬまま。


「んん......アルネス大図書館におありになる神聖なるジラン教書や他の文献によりますと、1000年も前から、ユランス枢機卿が「聖なる神の使者を仰ぐ演舞」という儀式をお行いになった時に、「神の聖騎士」は4人ほども召喚なさったので、現在は儀式をお行いになったユリン様の御前に彼等のお姿がご覧になるはずという事で間違いないでございますが、こうして何もお見えにならないという事を見ますと、やはり何か異例が生じるやもしれませんね。」


そう仮説を述べたのはさっきの20代後半の女性と同じく純白なローブを身につけてる、彼女よりも若い20代前半の女神官らしき人。


「いいえ、そんなはずがありません!私は手順通りに儀式を進ませてきましたし、「神の聖騎士」がここの神殿に姿を現すはずです。まだという事は、何か手順を間違えた可能性があったため、もう一度行いたいと思いますよ。試してみる価値がありますから、準備をお願いしていい?」

「いや、それには及ばないよ、ユリン卿」


そうユリン枢機卿と呼ばれる位の高いローブ姿の少女が儀式のやり直しを提言したが、それに対して、いきなりどこか伝達系の異能による声が木霊してきたか、その場にいる全員が真剣な顔になる。

「..ネネサ女王様?お声をかけて下さって光栄です。しかし、そうおっしゃるというのはどういうご意向でなさったかお聞きしても宜しいでしょうか?」

「はは、また堅苦しい話し方を妾の耳に聞かせてくれたのう。じゃから、前からも言ったんじゃろう?他の官僚とか政務に関わっておる仕官が周りにおらねば、ため口で良いと何度もいっておったのに、強情な娘じゃなぁ、お主は。」


「それは駄目ですよ、ネネサ女王様。親戚同士とは言いえ、周りには他の神官もいますから、そう簡単にお立場をお互いに忘れるわけには参りません。」

「ほほほう、相変わらず石頭なやつじゃのう、お主は。まあ、妾も無理強いはせんので、好きにしてよい。」

「それは有難い限りですね。本題に戻しますけど、もう一度儀式を試してみる必要がないという事をおしゃった様に聞こえますが、それについてはどうしてでしょうか、陛下?」


「ほほう、それはのう、聞いて驚くでない。エレンの探知系現神術げんしんじゅつによると、なんとお主の今いるグルゴラ神殿から200キロも北のディグラン平野に、それらしきの神使力じんしりょくを感じたといいよった。あやつの言葉からしたら、まだ微々たるものじゃが、確かに我ら「神に仕える戦乙女」(ヴァルキューロア)の身に持つ神使力より独特で異質な波動を感じ取ったということらしい。」

「そ....それは確かに興味深い情報ですね。では、「神の聖騎士」を召喚した責任者として、今すぐ私がディグラン平野に向かって彼等を出向かって参りますね。」


「いや、それもまた必要ないのう。エレンのやつと彼女の同級生数人は既にあそこへ向かっておる途中じゃ。その中には飛行系の現神術を使えるものもおるらしいから、間もなく到着するよ、あそこへ。」


「そ...そうですか。しかし、いくら飛行系の現神術を使って移動していらっしゃるとは言え、ディグラン平野って確かに神滅鬼しんめつきが数多く蔓延っているロルランド山脈の近くにある土地です。もしその山脈から、神滅鬼が降りてきて彼等に襲い掛かったら、いくら彼女達でも間に合わないと思います。確かに「神の聖騎士」は我々「神に仕える戦乙女」(ヴァルキューロア)やこの世界に生きる全ての生き物より、こと現神術の行使において莫大な潜在的な成長可能性がおありなのですが、今はこの世界に来たばかりの彼等はまだ神滅鬼と戦える程の力を持ち合わせておりません。なので、自分はエレン王女様たちほどに戦いに向かない現神術を持っていても到着するまでの間に何かがあっても彼等が持ちこたえられるよう、この私が直ぐに応援に駆けつけるべきだと思うので、どうかあそこへ参るお許しを頂いても宜しいでしょうか、陛下?」


「んんん.......妾からしたら、きっと間に合うじゃろうとは思っておったけど、お主がそんなに心配しておるなら、まあよい。行ってよいぞ。但し、無事に生きて帰ってきてよのう?さもなくば、お主が幽霊になっても罰を下すからのう!」

「はい!任せて下さって真にありがとう御座います、陛下!直ぐに「神の聖騎士」を連れて戻って参りますのでご安心して下さい。」


「よい。じゃ、妾もたくさんの仕事が控えておるから、このカレバスという伝達系の現神術を切るのう。」

そう言い終わるやいなや、ネネサ女王と呼ばれた女性の声が聞こえなくなった。


「では、彼等を連れてきますね。神滅鬼の行進速度は恐ろしい程に早いから、もし彼等に気づいて襲い掛かったら、未熟なものである私が全員を無事に連れてかえるか分からないので、その場合になったら、自分の先代から代々伝わる禁術を使わざるを得なくなります。もちろん、戦闘向きではないにしても、エレン王女様達が到着するまでの間になんとか凌げると思うので、みんなはあまり心配せずに自分達の職務へ戻ってくださいね。」

「「仰せのままに、ユリン様。シェレアーツ様のご加護があらんことを!」」


そう命令したユリン枢機卿に答えるように、二人の女神官が各自ばらばらに別れて自分達に課せられた公務に戻ったのである。


「さて、行くか。シェレアーツ様、どうか私達がここへ無事に帰ってこられる様お守り下さい。そのために私自身が何を犠牲にしてもいいですから。」


そう小声で祈りを捧げたその敬虔な少女は神殿を出て、飛行系の現神術、ロアンヌを発動させたら足を地面から浮かせてディグラン平野がある方角に向かって空を飛んでいったのであった。


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「ルーくん、どうしたの?」

いきなり立ち止まった俺に対して、聞いてきた梨奈だけど直ぐに彼女や他の二人も同じように動きを停止させて俺と同様、遠いところにある讃嘆とした外見の伴う綺麗な山脈に視線を釘付けにした。


さっきから、文明の象徴たる人里を見つけるべく歩き出した俺ら4人であったが、55分も経った今、里どころか、それらしき人影も見つからないのでようやく休もうかと言い出そうとした俺だったが、あの山脈に妙な物の動きに気づいたので、直ぐに黙り込んでそれに集中して見つめている。


「あれ?僕の目、おかしくなってるのかな?」

「奇遇ですね。私も同じような事を思いましたよ。」

「ね、ね、ルールーくん!あれ、見た!?」

「え....ええ.....お前もだな?」

「....うん....」


そう。全員が固まって動かずにいるのには訳がある。そりゃ、遠いところにあるとは言え、あんなもんを見せられてちゃ、誰もびっくりして突っ立たざるを得なくなるに違いないだろうが!


なにせ、あの山脈からおぞましい蠢動をしながら下降してきたのは触手がいっぱいついている巨大な体躯をしているムカデのような化け物!というか、それは俺の夢の中に出てこないようなものだけど、どうしちゃったんだ、そりゃ!俺達、もしかして、大ピンチ?


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