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一触即発

「..........ありえない.........」

まるで目の前の出来事が何かの悪い夢みたいに、驚愕してる彼女の顔が見る見る内、汗が滲み出すようになり、全身をブルブルと震わしている。やっぱり、怖いんだなー?


まあ、無理もない話しだ。目の前で信じられない事が起こったら、誰でもそうなるよなー。だって、ついさっきはあそこで、骨や皮膚の複数の箇所が大損傷を被って倒れている奴がいたってのに、今はぴんぴんな状態になってるんだけじゃなくて、神使力が見えるほどに身体中を輝かせてるからな。


「........なんで.....?....遂さっきのあんた、あそこで傷だらけでくたばってて全然びくっともしなかったじゃない!?なんで!?なんで今は立っていて、更にさっき負った傷が全部なくなってるの!?私を簡単に打ち倒せなかったあんたがいきなり、ローズバーグ会長が張った<ネリガー>という現神術を凌駕できるほどの治癒系現神術を使える訳がないじゃないー!!」


後ずさりながら、ブルブルと体中を震わしてるフェルリーナであるが、構わずにさっき彼女が俺にしてくれたように、今度はこっちからも彼女の方へゆっくりと歩を進めていく。


そう。彼女の言うとおりに、普通はこの学園の生徒会長、ローズバーグさん....だっけ?、が普段、常時発動にしてる<ネリガー>という結界みたいな効果のお陰で、彼女より格下なヴァルキューロアは治癒系も含めて全ての現神術の使用が封じられているが、生憎と俺は<神の聖騎士>の一人でもあるので、大母神がさっき、俺に二つの権能を授けてくれた。


一つ目は<グルガーハム>という常時発動型な現神術。<グルガーハム>は神の聖騎士しか使えない特殊な現神術で、効果は相手から気絶させられたような攻撃を受けても、5秒内に全治すると同時に目覚める!まあ、首さえ刎ねられなければ、多分、大丈夫だと思う。


「来ないでー!」

と叫んだ彼女だったが、無視して無言でゆっくりとしたペースを崩さずに向かっていく。


「......くっ!な!舐めないでよ、この黒犬がーー!!」

勇気と活気を振り絞って、気を取り直した彼女は俺の行動に対抗するように、こっちへと駆け出してきた!


「..........はああああっー!!!!!」

雷撃のような鋭い上段向け蹴りが放たれてきたけど、何もせずにそれを顔面に直撃させた!

「ガッー!!!!」


そう。今、俺の顔に乗っている彼女の靴があるが、痛みも感じずに無傷のままである。それもそのはず、今は二つ目の権能、<ラニエル>という常時発動型な現神術が働いているからだ。<ラニエル>もさっきのと同じで、何も唱えなくても常に神の聖騎士の身体中を覆っていて、効果は相手からの物理攻撃を無効化する。


前にちょっとだけ気絶した時に内なる世界で大母神と話し合ってたが、この現神術が効くのは攻撃を加えてくる相手が自分の神使力量より3倍も上までだ。それ以上は普通に俺を傷つけられるようになる。


で、このフェルリーナ嬢から食らった蹴りを無効化できるものだから、彼女の身に宿る神使力量も俺と同じ程度にあるかも。少なくと、2倍以上とかは絶対にないように感じるね。前のムカデと戦ってたあの何発の光線を放ったローザさんの方がこいつより遥かに強かったしね。


俺が何も感じずに影響が一切ないと悟った彼女の目は見る見る内に驚愕に満ちてきて、大きく開いているようだ。まあ、無理もないね。彼女の蹴りを顔面に平然と受けて無事のままでいる奴が目の前にいるんだから、驚くも納得できる話だ。

で、彼女の足を掴んだ俺であった。


「ぐっー!放せー!」

彼女の抵抗も虚しく、今度は彼女の足首に強く握ったまま、足全体ごと、明後日の方角へと捻ってやったー!


「!ぎいやああああーーー!!」

と、鼻にかかったようなくぐもった悲鳴を上げる彼女はバランスを崩して、地面へと足を抱えて転げまわった。涙目になりながら痛みを堪えるようだけど、あまりこんな顔してる女の子は見たくないので、早く気絶させるべく、目にとどまるような速さで、彼女の頭の裏に神使力の纏われた拳を強く突き落としたー!


「ガッー!!」

それを受けた彼女は白めを向いてから瞼を落として、動けなくなった。終わった。


「7,8,9...10!!」

勝者、新入生である早山ルーイズだー!」


と、彼女が立ち上がらないのを見て10まで数えたミルフォン先生であるが、そこで横たわったままで動かないままなので、それで試合を勝ち取るのは俺であると告げてくれた。


「「「-----!!!!!きゃあああああー!!!あの序列9位のフェルリーナ嬢を素手で打ち負かしたわ、彼!!!」

「「ーーーー!!<奇跡の子>であるという事実は急すぎて実感ないけれど、今の目の前にいる黒い方の彼、素敵ー!!!!ねね!こっちへ向いてー!!」


と、俺の勝利に対して、大勢の女子生徒が歓喜を迸らせて、祝っているかのように興奮した目で高揚してるまま騒がしく拍手と称賛の言葉をこちらへと送っているようだ。やばいー!なんか、感動する。


さっきは痛みで死んじゃいそうな感覚にあったのに今は俺の奮闘や今まで堪えてきた苦痛を凌げた自分への肯定の言葉が大衆から聞こえてきて、なんかすっきりしてるねー!ふうー!


「勝ったね、ルーの奴?」

「ええ!やっぱり、ネフィールさんの言うとおりでしたね!」

「にしし!当然でしょー!早山君があんなんに負ける訳ないでしょー?って、森川さん?待って!? わたし達もいくよ!」


周りを見回して見ると、ああ!あった!仲間の面々が!え!?あの階段を真っ直ぐに突き進んでこちらへと走り出してくる人影が見えたが、あれって、ってー!梨奈じゃんー!!よかったー!!俺はずっと、お前がやってくると信じてるよ、我が幼馴染よー!!


と、安堵みたいな心境にあると感じた俺は梨奈がこっちへ向かってくるのに身構えて、言おとしたが、

「梨奈、時間あまり経ってない気がするけど、ひさしぶーゲフッー!」

と、言い終える前に俺に抱きついてきた梨奈であるー!

「ルーくん!!大丈夫!?怪我はもうなくなってるように見えるけど、異常とかないー??もう!心配したんだからねー!トイレへ行くと言ってきたから教室で待ってたのに一向戻ってこないから、騒ぎで他の子達と見に行ったら、舞台で試合中だもん!」


と、凄い取り乱した感じで俺にしがみ付いたまま、そう捲くし立てた梨奈であるが、「もう心配する必要がなくなるよ。俺はこの通り、無事だから。」

と、優しく言ってやった。ああ!やっぱこの至近距離にいる梨奈っていい匂いがしたよね!それに、なんか柔らかい感触もしたし、これは女の子特有のものなんだなー。

「......ん.....うぐっ....ひくっ...」

と、そんな事を思っていると、我が幼馴染が急に涙を堪えてるように見えて、俺の胸板に額を擦り付けて、しきしく泣き出そうとする声を発した。


「心配させてごめん、梨奈!もうあんなような事にはならないから。だから、泣かないで。」

梨奈を両腕で抱き返してそう慰めると、彼女も顔を上げて、何粒かの涙を零しながら、微笑んで見せた!

「うん!絶対だからね!あんたに何が起きると思うと、あたし......それにオバサンも悲しいからね。」

分かるよ。日本にも帰れないままで、こんなところで自由を失ってたまるかよー。絶対、全員であのカンとかなんとかを倒して、日本へ帰るんだ!


「ひゅー!ひゅー!相変わらず、やっぱりカップルしてるじゃないっすか、君達!」

「そのようですね。あんなに熱烈な抱擁をしている最中ですし、もう言い訳は通じませんよ、二人共。」

「あははは......早山君と森川さんって、そんな関係なんだー?」


と、こっちへ歩いてきながらそんな反応を見せてきた仲間である遼二、有栖川さんとネフィールさん。

「ゴホン、ゴホン....これは!ただ心配してたから、思わず....思わず何となく抱きついてしまっただけよ、みんな!ルーくんとはただの.....ただの.....えっと....」

と、素早く俺から身体ごと手を離した梨奈は3人に弁明でもしようか、どもりながら何か言い難いような表情になってるんだけど、仕方ないか。助け舟を出すよ。


「ただの家族同士だろう?」

「え?....ええ.....うん!そうよ!あたしはルーくんの事をただの手のかかる弟だと思ってるだけなのよー!だから、さっき、大怪我をして倒れていたルーくんをはっきりと見たから、それでずっと心配してきただけなのよー!別に変な意味で抱きついたわけじゃないし。いい!?」


と、俺の言葉を肯定し、3人にそう反論した。まったく、何ムキになってるんだよ、我が幼馴染よ。いつもの二人だけじゃないか!そういうの軽く受け流そうぜー!ただ心配したが故に抱きついてただけだし他意がないのはあいつらも分かってるはず。からかいも得意だからね、あの二人は。


「はい、はい。分かってるすよー、森川さん!」

「ふふふ.....そういうのは前からずっと知ってるじゃないですか?ただからかってるだけなのに何故そんなに必死になって否定する必要がありますか?」

「うぐ....それはー。」

と、そんな漫才を交し合った俺たちであったがー。


「まだー!まだ終わらないわよ、そこの黒犬がー!」


なんか、耳が腐るような声がまたも木霊してきたので、元を辿ればやはり、あそこでさっき倒れて気絶させたはずのフェルリーナが憎悪のこもった目つきでよろよろと頭や首を手で押さえて、苦しく膝を震わせて立ちあがろうとしたのが見えた。


加減してやったとはいえ、よく俺の拳を食らったも尚、意識を失わずにいるとは.......内面はさておき、美麗な顔をしているのに身体の方は案外、頑丈すぎるね。大したものだな! よく見てみれば、彼女の制服は前に見た通りに、生地の数箇所が破かれき引きちぎられていて、肌の露出した面積も多くなったので、いっそエッチな見た目になってる。


胸元のとこもほぼ全開って感じで、唯一隠れてるとこは乳首のある位置ぐらい.....かな?やばい!股間にくるー!と、顔が熱くなってしまいそうになるけど...さっき自分に対して行ってきた酷い事の数々を思い出すと、急に別な感情が沸いてきてるのでそれを自覚した途端、急に怒りのようなものを感じはじめた。


「私はまだ終わってないと言ってるわよー!確かにミルフォン先生が10まで数えても起きれないままだったけど、あれはあれ、これはこれなの!今回の勝負は私の負けではあるけど、悪までこれは「物理的勝負」での敗北であって、完全な負けではないわー!よって、今度は、会長が「学戦舞祭<バトルエンタメー>」に近い形式な試合に立ち会ってもらって、「現神戦武装」の使用も許可された決闘として、再戦...というか、最終の決定勝負をあんたに申し込むわー!さっきと同じく、断るとは言えば、私の家の持つ全力で以って、確実にあんたを八つ裂きにしてやるわよー!」


と、理不尽にまで聞こえたような再戦を望んだ彼女の挑戦宣言に対し、

「なん....ですって....?散々ルーくんにあんな酷いな事をしてきただけに飽き足らずに、まだルーくんを痛めつけようというのー?........許さない.....絶対に.....あんたの事!あんたが!!ルーくんに!!今度はさせないわ、この人でなしが!あたしが今、あんたが二度と口が利けなくなるようにしてやるわー!ついでに、ルーくんとあたしたち4人に二度と残酷で非道なことをしてこないよう、物理的にあんたをこの学園から追い出してみせるわー!!」


と、感情に任せて憤怒に身を委ねようとした梨奈がフェルリーナに襲い掛かるべく駆け出そうとしたが、彼女を羽交い絞めにして止めた。

「梨奈、冷静になって!彼女.....フェルリーナ嬢は伯爵家の令嬢だそうだよ!今、お前が彼女に報復のつもりで襲っても無駄だ!だって、さっきは正式な決闘によって行われたものだった!例え、彼女が俺に対して、無慈悲な攻撃や暴行を加えようとしても全てが許される状況にあったんだ!だから、頼むから矛を収めてくれ!今のお前が先に彼女に手を出そうとしたら、お前の方が学園側から厳しき罰されるぞー!」


と、梨奈を諭してみると、彼女も冷静になってきたか、腕の中にいる梨奈が暴れるのを止めて大人しくなってきた。


「くっー!分かったわよ、ルーくん!でも、だからといって、そこの女の次の挑戦を受ける必要がどこにもないじゃないー!それに、彼女もあんたを脅迫するような事をいってたし、先に面倒事を解決するのに動いておいた方がー!」

「でもー!俺だって、できるなら、またもあの女の顔を見たくない!だから、今度は二度と負かして、納得させてやるように同じ結果に持っていけばいいじゃんかー!」


「それはいやー!もうあんたがあの女と戦って、傷付くのが見たくないーー!だから、今度はあたしの方から決闘に応じて、あんたの変わりにあの女とー」

「なにごちゃごちゃ話してるのか知らないけれど、あんたが再戦を受けないなら、今でも捨て身であんたを八つ裂きにしてみせるわー、そこの黒犬と側にいる口うるさいメス犬がー!」

「なんですってー!!!!!あたしをメス犬呼ばわりにー!!!離せ、ルーくん!もう我慢できないーー!!そこの女の吼え面はもう見たくないし聞きたくない、直ぐに黙らせてやりたいから離せよールーくんーー!!!!」


と、ヒットアップしてる梨奈と再戦の希望を諦めないフェルリーナ嬢が一緒になって、一触即発の状況になってると、


「そこまでよー!あそこにいる全員よー!!」


そんな凛とした声が聞こえてきたので、声のした方向へと振り向いて見ると、エレン姫やローザさんに挟まれる形で、この舞台へと上がるための階段を昇ってきた銀髪ロングな髪をしている美少女と言っても差し支えない程の美貌を誇る女子生徒が歩いてくるのが見えた! あれってー!?


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