94第二島
ハッ!
ムーマは恐ろしい悪夢から目覚めると…
「インキュバスの癖に悪夢見ちゃったよ…」
流れる汗を拭うと…
「悪夢じゃねぇよ、現実だよ」
ルーダが呆れてつっこむと…
「…悪夢がよかった…」
頭を抱え込んだ…
「足は治ったか?」
ルーダが立ち上がると…ムーマも問題なく立ち上がる…。
「残念ながら…問題無い…」
ガックリと自分の足を踏み鳴らす。
「じゃ…行くぞ…」
ルーダがムーマをガッチリと掴むと…
「…やっぱり…見逃して…」
「くれる訳無いだろう!お前見逃したら俺が何されか!俺だってあそこに入るの嫌なんだからな!」
「…はぁ…」
全く飛ぶ気が無いムーマを掴むとルーダは第二島入口に向かった…。
第二島は周りを氷の海に囲まれていて、大きな鳥籠の様に島全体が鉄格子で覆われている。
鳥籠の入口に小さな小屋があり、そこでのみ出入りができるようになっていた…。
入口に降り立つと…小屋の扉をノックする…
「すみません。ムーマを連れて来ました…」
「は~い」
扉の向こうから野太い声が聞こえる…
その声にルーダもムーマも背筋が寒くなる…
「あら!いらっしゃい!ムーマちゃん待ってたわよ~!ルーダちゃんもありがとうね♡」
扉からは扉をやっと通れる様なムキムキの黒光りする肉体の男(?)が出て来て笑顔で挨拶をした。
「ジャマルさん…こんにちは…ではよろしくお願いします!」
ルーダは挨拶もそこそこに飛び立とうとすると…
ガシッ!
足を掴まれ引き戻される…
「ぎゃっ!」
いきなり足を掴まれバランスを崩し地面に顔から落ちると…
「あらごめんね!だって~いきなり帰ろうとするからぁ~お茶でも飲んでってよ!寒い海を渡るのは疲れたでしょ?」
ジャマルはルーダの返事も聞かずに足を掴んで離す気は無い。
「そ、そうだ!ルーダ寒がってただろ!休んでけよ」
ムーマが震えながら声をかけると…
「あら!それは是非とも休んでって!ほら、ムーマちゃんも入って!二人ともそんな青い顔してるんだもの…体を温めてあげないと…」
ふふふっと笑いながらウインクする…
「お、俺は大丈夫です!俺は届けるだけって言われてたんで、直ぐ、直ぐに帰りますから!ジャマルさん足離して!」
必死に足を掴むと手を離そうとするが、ビクともしない…
右手でルーダを左腕でムーマの肩を組むと…
「大丈夫!大丈夫!優しくするからねぇ~ほら入って入って!」
ジャマルは小屋に二人を入れると扉に鍵をかける。
ガチャリ…
「ジ、ジャマルさん?なんで鍵かけたんですか?」
ようやく手を離されたルーダが慌てると…
「あらヤダ…つい癖で!てへっ!」
ジャマルが自分の頭を小突く…
その仕草にムーマがさらに震える…
「みんなすぐ逃げようとするからねぇ~つい鍵をかけちゃうのよね~でも大丈夫よ!一度来ちゃえばこの小屋のよさがわかるわ!」
そう言うと鍵をかけたままキッチンに立つ。
「お茶入れるから適当に座っててね♡」
ジャマルが2人にウインクをすると…
「お前のせいで俺まで巻き込まれたじゃ無いか!」
ルーダが小声でムーマを睨みつける!その顔は今にも殺しそうな表情だった…
「五月蝿いぞ!こんな所に一人にするなよ!お前もいろ!いやいて下さい!」
ムーマはジャマルに見えないように土下座した。