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どうもこの店に入ってからリリアナの顔色が悪い…
さっきまでとても楽しそうにしてたのに…
ファイが注意深くリリアナを見ていると…
「おにいさん達楽しんでますかぁ~?」
女の店員がファイ達の顔色を伺う…
さっきから、ちょこちょこと目障りな奴らだ…リリアナを見ているのにやたら間に割り込んでくる…
「楽しんでるからあっちにいってて、こっちはこっちで楽しんでるから」
ファイが興味なさげに答えると…
「えー!みんなでお話する方が楽しくないですか?ねぇそこの子だってそう思いますよねぇ~」
ルルがリリアナに話しかけると…
ビクッと肩で反応すると…
「はい。よかったら…どうぞ」
リリアナが席を空けると…
「わぁ!ありがとう!」
ここぞとばかりにルル達が男達の間に入ると、リリアナとシュカは違うテーブルへと追いやられた…。
みんなから少し離れて、リリアナがほっとして息を吐くと…
「大丈夫か?」
シュカが心配そうにリリアナの肩に手をかける…リリアナはシュカの温かい大きな手の温もりに気持ちを落ち着ける。
「ありがとうございます。シュカさん、ちょっと前の家の事を思い出しちゃって…」
リリアナが頼んだジュースを飲むと…
「に、苦い!」
甘いと思っていたジュースのあまりの苦さに口元を抑える。
「リリアナ!大丈夫か!」
ゲホゲホと咳き込むリリアナの背中をシュカがさすると…
「ちょっと飲ませてみろ!」
シュカがリリアナのジュースを取り上げて味見をする…
「これは…」
リリアナのジュースだけ苦い汁が足されていた…
「あいつらか?」
シュカの赤い顔がさらに赤くなると…
「だ、大丈夫…シュカさん…お店で大きな声とか出したら迷惑だよ…」
リリアナが目に涙を溜めながら立ち上がろうとするシュカの袖を掴むと…
「こんな不快な店は早く出よう…あいつらに声掛けて来るから、お前は先に出てろ。ほら俺のジュース飲んでろ」
リリアナにジュースを渡すと…外へと促す、シュカは迷惑そうにリリアナの視線をそらされているファイに手招きする…
ファイが気が付き、シュカに寄ると…
「リリアナは?」
ファイが見当たらないリリアナをキョロキョロと探す。
「コレをあいつらに飲まされた…他にもなにかされてるぞあれは…」
「…どういう事?」
「俺はリリアナと外にいるから、気づかれないようにやれよ…」
シュカの静かな怒りを感じ取り、リリアナに何かあったのだと…気付かされる…
「リリアナと出かけられることで浮かれすぎてた…ごめん…」
「長くかけるなよ…リリアナに気を使わせるな」
「うん…」
ファイはシュカと分かれ、リリアナのジュースを一口飲む…
ピキッ…
「あいつら…」
ファイの瞳が静かな怒りを帯びていた…