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ブラッドはリリアナを部屋まで運ぶと…ベッドに横たえる…布団をかけて、離れようとすると…
クイッ…
服を引っ張られる。
リリアナを見ると寝ているようだが、無意識にブラッドの服を掴んでいた…
「リリアナ…」
ブラッドがそっと服を離そうとするが、その手は固く握られていた…
「リリアナ…離してくれないと一緒に寝ちまうぞ…」
手を開こうと小さな手を触ると…
「ブラッド…」
リリアナの口から寂しそうな声が聞こえる…
顔を覗くと今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「そんな顔を見せられて…1人になんて出来ないだろ…」
ブラッドは犬の姿になるとリリアナの側に横たわる。
リリアナはブラッドの温もりを感じると…ほっとしたように深く…眠りについていった…。
「おはよぉー」
ファイが朝からテンション高めにリリアナの部屋をノックすると…
「朝からうるさいぞ…」
リリアナの部屋からブラッドが眠そうに出てきた…
ピシッ…
ファイの足元が凍りつく…
「ブラッド…なんでリリアナの部屋から出てくるの?」
「これには訳があるんだよ…」
ブラッドが面倒くさそうに頭をかくと…
「はぁ…」
リリアナが目を覚ました…扉にいるブラッドとファイを見ると…
「おはよぉ…」
リリアナが笑顔を向ける。
「おはよう」
「おはよう」
二人が挨拶をすると…
「ブラッド…訳は後でキッチリと聞くからね!」
「わかったよ…」
リリアナが着替える間ブラッド達が外で待つこと…
「それで?」
ファイがブラッドを見上げると…
「いや…送り届けて、ベッドに寝かせたのはいいが…リリアナが服を掴んで離してくれなくてな」
「はぁ?それでなんで一緒に寝るの!」
「俺も離して帰ろうとしたんだ…だけど…リリアナの泣きそうな顔を見たら…」
「…なんでリリアナが泣くの…」
ファイもブラッドの思いもしなかった言葉に顔色を変える
「元気そうに振舞っているが…まだ15年しか生きていない子だ…人ではまだ六分の一程過ぎたぐらいだからなぁ」
「そっか…一人で寝かせるのも考えた方がいいかなぁ…だからってブラッドが寝る事ないよね!?」
「お前…寝てみろよ…いや駄目だ」
「どっちだよ」
「いちいち可愛い仕草で寝返りうって、たまに可愛い寝言も言うし…本人は寝てるし…まぁ寝顔を堪能出来たのは良かったが…」
「堪能してるじゃん…」
「ちゃんと犬の姿でいたし…俺寝てないから…これから寝る…リリアナの事頼むぞ…」
ブラッドはふらっと揺れると闇に沈んで行った…。
「まぁ…あの様子なら手は出てないかな…リリアナの承諾も無しに手を出すとは思えないけど…」
リリアナだしなぁ…
「ファイ!」
支度を終えたリリアナが外に出てきた
「リリアナ…昨日は大丈夫?」
「昨日?何かあったけ?」
リリアナが首を傾げると…
「…何も覚えて無いの?」
「なんか…夢を沢山見た気がするけど…あんまり覚えて無いんだよね」
思い出そうと額に手をあてると…
「ああ!いいよ!きっと夢だよ!さぁ行こう、今日はみんなでお出かけでしょ?」
ファイがリリアナの手を取ると
「そうなの!あれ?ファイなんで知ってるの?」
「僕も行くんだ!ルーダが用事が出来ちゃって、僕に代わりに行ってくれって」
「そうなの?ルーダさん残念だね…でもファイもいけて…嬉しい!」
リリアナが嬉しそうに笑顔を向けると
「…僕も…」
ファイは幸せな気分でリリアナの手を引いて行った…。