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ファイは魔獣の姿に変わると…ムーマの背中を脚で掴む。
「フ、ファイ…つ、爪が…」
ファイの爪がムーマの脇腹にくい込むと…
【何?落ちたら大変でしょ…しっかり掴んでおいてあげるよ】
「な、ならもっと優しく…」
ファイはさらに力を込めると空へと飛び立って行った。
「じゃリリアナを連れて行くからお前達は戻ってろ…」
二人は動かずにブラッドを見つめる…
「…そんな顔するな…あいつとは違う」
「それはわかってますけど…」
「ブラッド様抑えが効かないから…」
「うるさい!リリアナは寝てるんださっさとしろ」
ブラッドが影を作ると…二人は渋々闇に消えて行った…。
「全く…」
ブラッドがため息をつくと…
「う~ん…」
リリアナがモゾモゾと動き出し…寝ぼけ眼でブラッドを見ると…
「あー…ブラッドだぁ…」
ブラッドの大きな胸板にギュッと抱きついた…
「リ!」
ブラッドの体に力が入り動きを止めると…
「なんでブラッドがいるのかなぁ~」
寝ぼけているのか酔っ払っているのかリリアナがゆらゆらと揺れながらなブラッドを見つめる…
「リリアナ…大丈夫か…酔ってるのか?」
「えー?大丈夫だよ~なんかふわふわするけど…」
あの野郎…とブラッドがムーマを思い出すと…
「リリアナはムーマに酒を飲まされたんだ…自分の状態がよくわかってないだろ?今から家に連れててやるから」
ブラッドが優しく微笑むと
「…やだ…」
リリアナがぷいっと顔を背ける…
「やだって…」
ブラッドが困っていると、リリアナがチラッとブラッドを見て
「まだ帰りたくない…」
リリアナの言葉に再びブラッドは言葉を失った…。
「痛い!痛い!」
ムーマの服がじんわりと血に染まり出すと…
ドサッ!
城の庭先にムーマを落とす。
「ほら着いたよ」
ファイが人型に戻ると蹲るムーマを引きずって連れていく…
「ハク様…」
部屋をノックしてファイがムーマと共に入ると
「どうしました?」
ハクが机の書類に目を通しながら答えると…
「こいつがリリアナに酒を飲ませて夜中に連れ回してまして…」
ファイが説明しようとすると…
「はぁ?」
ハクが書類から目を離しファイの隣のムーマを見る…
ムーマは痛めた脇腹を抑えながらビクッと体を強ばらせると…
「詳しく…」
ハクがゆっくりと立ち上がった…