66ハク
私はとある国の祠に祀られていた…。
河の氾濫が起きぬように毎日祈りと供物を捧げられていた。
頼られる事は悪くない。
町の者の為に力を注ぎ守っていた…
しかしいつからだろう、社は荒れ果て人が寄り付かなくなったのは…
人の移り変わりは激しいそれでもたまに来る人の為ずっと見守っていた。
ある時…私の力では抑えきれない河の氾濫が起きた…
持てる力の限り町を守り…どうにか全滅は免れだが、人間共は自分の肉親を失った悲しみを全部私にぶつけてきた…
「何が河の神だ!みんな死んじまった!」
「こんな祠なんの意味も無い!」
ろくに祠の手入れもしなかったくせに、ここぞとばかりに好き勝手行ってくれる…
しかし守れなかった事も事実…力を使い果たした私は人間達にされるがまま…
社も壊され…行き場を失った…
近くの梅の木に身を預け…終わりが来るのを待っている時にルシファー様に拾われた。
少しでも人の邪気に触れ、上にも戻れなくなっていた私を魔族の国で暮らさないかと言って下さった…
何も答えないでいる私を、ルシファー様は梅の木事魔族の国に運んでそこで癒えるのをずっと待っていてくれた。
そんなルシファー様の為ならと一緒に魔族の国を納める手伝いが出来るならと私はルシファー様に忠誠を誓ったんだ。
魔族の国の奴らは、まぁよくも悪くも正直だ…そんな奴らの面倒を見てるうちに気がつけばルシファー様の右腕となっていた…
ルシファー様が時折何処かにふらっと出かけることはよくあったが…人間の娘を連れてきた時はさすがに信じられなかった…
そして…私と同じ様に…裏切られるのではないかと…
しかしルシファー様はその人間を大層可愛がっている…ルシファー様の頼みでそんな人間の世話も命じられた…
ルシファー様は何を考えているのだろう…私が人嫌いなのを知っているのに…
まぁ…極力関わる気はない…命じられた事だけやっていればいいんだ、ルシファー様もそうおっしゃっていた。
そう…思っていたが…
嫌に手がかかる…またそれが歯がゆく苛立つ…
そしてどんどんとここに馴染んでいった…
あの犬は…元から懐いてたな…ファイやシュカ、ガルム、シシオ、人喰いのルーダまであの娘がここに居ることを認めてしまった…
人間とは…自分の事ばかり考える愚かな奴らなのに…死を恐れ抗う為なら他の人を蹴落としてまで助かろうとする…
皆が騙されても私はルシファー様を守らねば…ルシファー様に私と同じ思いはして欲しくない…あの方は優しすぎるから…
そんな時…ファイから食事を取るように言われる…
ここの食事だけは合わない…まぁ水さえあれば死ぬ事はない…
あれを食べるまでは…そう思っていた…




