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「お呼びですか？ハク様」
リリアナがハクに向き合うと…
「今日の…」
「はい？」
「今日のおにぎりは美味かった…」
「梅がお気に入りなんですね！喜んで貰えて嬉しいです」
リリアナが喜んでいると
「なぜ梅を」
「私に料理を教えてくれた方から習いました。こちらでは珍しい食材ですよね」
「そうだな…この国に来て初めて食べた」
「そうなんですか？庭にあんなに立派な木があるのに！」
「私は…作り方は知らないからな」
ハク様が何処か寂しそうに梅の木を見つめる…
「良ければあの木の梅で作りましょうか？」
「できるのか？」
ハクが驚きリリアナを見ると
「はい！作り方を聞いてますから…あっ！よかったら一緒に作りますか？」
「何故私が…」
「だってそうすれば私がいなくなってもいつでも食べれますよ」
リリアナがにっこりと笑う。
「いなくなるとは…」
「だって…私と皆さんは寿命が大分違いますよね？私はみんなより早く死んじゃうから…作り方を教えておけばハク様はいつでも食べれますよ」
あっけらかんと答えるリリアナに…
「お前は…死が怖くはないのか？」
「えっ！怖いですよ、でもそれはしょうがない事だってわかってます…誰にでも訪れる事ですから…遅いか早いかだけです」
「そうか…人間にもそんな考えのやつがいるんだな…」
ハクがボソッと言うと…
「何か？」
「いや…では梅の実がなったら…な」
「はい！約束です！」
リリアナが手を差し出すと
「なんだ？」
ハクが怪訝な顔をしながらリリアナの手を見つめる。
「約束の握手です！」
ハクは渋々リリアナの手を握った。
その後リリアナを部屋まで届けると…
「送っていただきありがとうございました」
部屋の前でリリアナがペコッと頭を下げると…
「何かあればルシファー様に申し訳がたたないからな…仕方なくだ」
ハクが面倒臭そうに言うと…
ふふふ…
リリアナが可笑しそうに笑う。
「何が可笑しい！」
「だって…ファイの言った通り…ハク様って本当は優しいんですね」
「はっ？」
ハクが何を言ってるんだと…目を見開くと…
「文句を言いながらも…全部私の為ですね…やっぱり魔族が恐ろしいなんて人間の嘘だったんだ…」
リリアナがすまなそうな顔をする。
「私はここに来て魔族のみんなの方がよっぽど人間らしいと感じました…表現方法は独特ですけど…」
リリアナが苦笑すると…
「そんな事はない…魔族の中には恐ろしい奴らも人間が好物の奴もいるんだ…十分気をつける事だ」
「はい」
リリアナがニコニコ笑っていると
「これは…お前に何かあったら梅が食べられなくなるからな…仕方なくだ…」
「ふふふ…そうですね、そういう事にしておきます」
ハクが気まずそうに顔を逸らしていたが…思わず笑い出す。
「ハハ…一体何を言ってるんだが…」
苦笑すると…
「ハク様…そっちの笑った顔の方が素敵ですよ。じゃおやすみなさい」
リリアナは挨拶をすると部屋へと戻っていった。
「小娘が…言ってくれる」
しかし前ほどリリアナに対して嫌な気分では無いことにハクはまだ気が付かずにいた…。
