60
ファイはハク様の部屋に向かうとノックをして入る。
「ハク様、リリアナを食堂に連れて行きました。ハク様に挨拶をと言っていましたが忙しいから遠慮しておくように伝えました」
「ああ…それでいい、ファイも常に見てなくていいぞ…食堂ならシュカ達の目もあるからな」
「いえ!大丈夫です!」
ファイが力強く否定するので…
「わ、わかった…引き続き娘の世話を頼む…」
「はい!」
ファイは嬉しそうに返事をした。
「それと…ハク様少しは部屋を片して飯食べた方がいいですよ…」
ファイは書類に埋もれるハク様を見つめると…
「大丈夫だ、2、3日食べなくてもなんて事はない…それに食事は苦手だ…」
「リリアナのご飯は美味しいのになぁ~」
ファイがボソッと言うと…
「シュカと変わらんだろ」
ハクが顔も上げずに答えると…
バン!
ファイがいつの間にか机の前に来て両手で机を叩く。
「全然違うんですよ!一回でいいから食べて見て下さい!ハク様もリリアナを見直すはずです!」
ファイが真剣な顔でハクを見つめると…
「わ、わかった…機会があればな…」
その言葉に納得すると
「絶対ですからね!」
ファイは部屋を出ていった…。
「なんだ?ファイまであの態度とは…あの娘…何かあるのか…」
ハクは一瞬手を止めるが、直ぐに考えを振り払い仕事へと向かった…。
「今日のご飯はなんだろなぁ~」
魔族達が食堂に続く廊下をスキップでもしそうなテンションで歩いている。
時間をズラし食堂に着くともう既に列が出来ている、
食堂も誰も騒ぎを起こすこと無く穏やかに食事を楽しんでいた…。
「おはようございます!」
料理を渡しながらリリアナの声が聞こえる…あと少しで番が来ると言うところで…
「リリアナ、交代するよ」
シシオの声がするとリリアナと代わってしまった…。
「「「え~!」」」
並んでた魔族から不満の声が出る。
「シシオからもらってもなぁ…」
ボソッっと文句を言うと…
「なら食うな!今日は具沢山サンドイッチとポタージュなのになぁ…」
「すみませんでした!いただきます!」
「全く分かればいい、誰から貰ったって味は一緒だろ」
シシオが文句を言うと…
「いや!朝から無愛想なルーダから貰うのとリリアナちゃんみたいな可愛い子から貰うのとどっちがいいよ?」
「そりゃ、リリアナだ」
「だろ?そういう事だよ」
シシオも思わず納得する。
当のリリアナは朝ごはんを手に食堂で席を探していると…
「リリアナ!」
リードとナッツが席を確保してくれていた。
「リード、ナッツありがとう」
二人がサッと自分達の間の席を開けると!リリアナがそこに座る。
「じゃ一緒にご飯食べよ!いただきます」
「「いただきま~す」」
リリアナの言葉にリードとナッツが続くと…
「美味い!」
「美味しいです!」
サンドイッチにかぶりつき目を真ん丸に輝かせてリリアナを見る。
「ふふ…よかった」
三人で仲良く食べていると…
「ここいいかな~」
見慣れない魔族がリリアナの前の席を指さしニッコリと笑っていた。