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ファイは目の前の扉を乱暴に開けると…部屋には項垂れるブラッドが一人で座っている…。


「何してるの?ブラッド」


ファイがカツカツと足音を立ててブラッドに近づくと


「すまなかった…」


「ブラッド!ルシファー様から言われたよね?リリアナに手を出したらいけないって!」


「だが…あんな可愛い顔をされて…手を出さないでいるなんて…」


「なんなの可愛い顔って?」


ファイがブラッドを睨むと…


「あっ…いや…」


ブラッドが顔を背ける


「全く…ブラッドは油断も隙もないんだから!だからルシファー様から担当外されたんでしょ!」


「うっ…」


痛い所を突かれてブラッドが顔を背けると…


「なんでまた来ちゃったの?」


「つい…気になって…隠れて見ていたら…あの鳥頭野郎がリリアナの怪我した指を舐めやがったんだ!」


徐々にまた思い出し語尾を強めて話していくと…


「何それ…」


聞いてない…ファイの周りがパキッパキッっと音を立てて凍りつく…。


「許せないね…それは…」


「だろ?だから飛び込んで行ってそいつを消そうとしたんだが…リリアナに止められた…」


「もう…リリアナは甘いんだから…」


「まぁ…よく言ったから…大丈夫だとは思うが…ファイ、アイツに一応報告しておいてくれ…」


「アイツって…はいはい。ハク様に言っておくよ…リードとナッツ借りてもいい?あの二人を側に置いておこうか?」


「それはいいな!頼む…夜にでも連れて行く」


「今連れてけば?」


ファイが首を傾げると…


「ルシファー様に一応お伺いをたてておく、そうすればアイツも文句はないだろう」


ファイは苦笑すると部屋を出ていった…ブラッドは自分の欲望を抑えるべくしばらく部屋で座り込んでしまった…。



「すみませんでした!」


リリアナは急いで厨房に戻ると…


「ひいっ…」


ルーダがリリアナを見て怯える…。


「ルーダさん?」


「何なんだよ…お前…」


ルーダはブラッドに握られた左腕を抑えてリリアナから後ずさる…


「ごめんなさい…腕…大丈夫ですか?」


「さわるな!」


ルーダが腕を引くが痛みに顔を顰める…


「ルーダさん!それ!折れてますよね?ちゃんと治療しないと駄目ですよ!」


急に強い口調で言われ、ルーダがたじろぐと…


「ここに座って下さい!」


リリアナが椅子を指さす。


ルーダが仕方なさそうにすごすごと座ると…


「これ借りますね」


近くにあった木の棒を手に当てて布を破いて添え木代わりにして腕を固定する。


「こんな事しなくても…明日には治る…」


「えっ?そんなに早く?」


ルーダの言葉にリリアナが驚くと…


「俺は魔族だぞ…人と一緒にするな…」


「そっか…でもちゃんと伸ばして骨をくっつけないとしっかりと治らないと思いますよ」


ギュッっと強く結び目を縛ると、折れた腕をそっと撫でる…


「ブラッド…がごめんなさい」


「なんでお前が謝るんだ…」


「ブラッドは私の為に怒ってくれたみたいだから…」


「お前はブラッド様の何なんだよ?ペットじゃないのか?」


「ペット?ブラッドとは…友達…なのかな?」


「俺に聞くなよ!」


ルーダとリリアナが話していると奥からシュカの怒鳴り声が響く!


「なに遊んでんだ!さっさと用意しろ!」


「シュカさん!ルーダさんが怪我をしてしまって…」


「怪我~?」


シュカが顔を覗かせると…


「腕が…」


リリアナがルーダの怪我した腕をみせると…


「なら怪我してない方の腕を使え!」


「へーい」


ルーダが立ち上がると


「ルーダさん!私がやりますから指示をお願いします!」


リリアナは急いで手を洗うと…高速で野菜を切っていった。

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