30
ブラッドに連れられて城の奥へと連れて行かれると…重々しい扉の前で止まる。
「ここがルシファー様のお部屋だ」
ブラッドがノットをすると扉が自然に開いていく…その様子を唖然と口をポカンと開けて見ていると…
クスクス…
中から優しげな笑い声が聞こえてきた…
ブラッドが失礼しますと一声かけて中に入ると、リリアナも見習って続いて入る。
広い部屋の奥の豪華な椅子に優しい表情のルシファー様が座っていた…そしてその横には冷たい目をしたブラッドとは対象的な白い魔族がリリアナを睨み付けていた…。
「チッ…なぜ彼奴が…」
ブラッドがボソッと呟くと、リリアナに耳打ちする…
「ここに膝をついてルシファー様に挨拶をするんだ…」
ブラッドがリリアナの手を名残惜しそうに離すと…ルシファー様の横につく。
リリアナは言われた通りに膝をついて頭を下げた…。
「リリアナ…もっと側においで…」
ルシファー様の言葉にブラッドと反対側に立つ魔族が不機嫌そうに声を出す…
「ルシファー様、人間の小娘等をこのような場所に連れて来るべきではありません!」
白い魔族がルシファー様に苦言を呈すと…
「リリアナは大丈夫ですよ…さぁリリアナ顔を見せて…」
ルシファー様の伸ばされた手を掴むため…リリアナは立ち上がると恐る恐る前に踏み出す、チラッとブラッドを見るとニッコリと頷く。
ブラッドの表情をみて安心すると、ルシファー様の元に向かった。
伸ばされた手にそっと手を乗せると、優しく握られ引き寄せられる。
フワッと膝に座らされると…
「えっ?」
「「なっ!」」
リリアナがびっくりしてルシファー様を見ると
「「ルシファー様!」」
二人が同時に声を上げた!
「全く…うるさい人達ですね…リリアナちょっと目を閉じてなさい」
ルシファー様が優しくリリアナの目を押さえると…
「あっ…」
周りの声が何も聞こえなくなった…
「はい…もういいですよ…」
リリアナは押さえられていた手が離れると…ゆっくりと目を開く…
「あれ?ここは…」
そこはいつものリリアナの部屋だった。
「ちょっとあの二人がうるさいので移動しました…それで…リリアナ私の国に来て本当に良かったのですか?」
ルシファー様が心配そうに見つめてくる…。
「…はい…もうあそこには私の居場所は無くなっていましたから…あそこで暮らしていられたのもブラッドやファイやギョク達がいてくれたからで…彼らがいるなら何処ででも…それに…お父様やお母様の事を知ってるルシファー様がいますから…」
ありがとうございます…と頭を下げると…
「あっ!すみません!私ったらルシファー様に座ったまま!」
慌てて立ち上がろうとするとルシファー様に捕まえられる…
「昔はこうやってよく膝の上に乗るのをせがんでいましたよね?」
懐かしそうに微笑まれると…
「そんな…子供の頃ですから!私はもうこんなに大きくなったんですよ!…あっ!」
つい口調が崩れて口を押さえると
「ふふふ…」
嬉しそう笑って頭を撫でられる…まるで子供の頃にお父様が撫でてくれたように…
「言ったでしょう、あなたの父上に変わってあなたを守ると…これからは私を父と思って下さい…それとも…やはり魔族の父などごめんですか?」
「い、いえ!そんな事は無いです!無いですけど…私なんかが…ルシファー様の子供なんて…相応しくないです…」
「それは…誰が決めたんですか?」
「誰って…きっとみんなそう思っています…私は愚図でノロマだから…周りを不快にさせるんです…」
自分で言って…悲しくなり思わず下を向いてしまうと…
ルシファー様が優しく微笑む…
「そんな事は決してありません…あなたは、リリアナは誰からも愛されるべき子ですよ」
リリアナが不安そうにルシファー様を見つめると…
「リリアナを侮辱した者の言葉と私の言葉どちらを信じますか?」
ルシファー様の言葉にハッとすると…
「ルシファー様を…信じます…」
リリアナの瞳から憂いがひとつ消えルシファーは満足そうに微笑んだ…。