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「ルシファー様、お時間がございませんのでお嬢様は私が責任をもってお送りします」
黒服の男が声をかけると…
「娘を送る時間も無いのか…リリアナごめんね」
ルシファーが残念そうにすると
「ルシファー様大丈夫ですよ！お仕事頑張って下さい」
リリアナが笑顔で送り出した…が、ルシファー様が見えなくなると
「はぁ…」
寂しそうにため息をつく。
「リリアナ様？」
黒服が顔を覗き込むと
「あっ！すみません、えっと…ここって何処なんでしょう？言ってくれれば私一人で帰れますよ！」
男は困ったように笑うと
「そんな事をしたら私がルシファー様から殺されてしまいます。どうか送らせて下さい」
「ふふ…じゃお願いします。あっお名前をお聞きしてもいいですか？」
「私ですか？」
男が驚いていると
「えっ…失礼だったでしょか？」
リリアナが伺うと
「いえ…私アーノルドと申します」
アーノルドさんが胸に手を当て首を少し下げると
「アーノルドさんよろしくお願いします」
リリアナはにっこりと笑った。
「ではお嬢様お手を…」
アーノルドさんがリリアナに手を差し出すと
「アーノルドさん…」
リリアナが深刻そうな顔をする…アーノルドが見上げると
「お嬢様なんて緊張しちゃいます…リリアナでいいですよ」
「しかし…ルシファー様のお嬢様を呼び捨てはさすがに出来ません」
アーノルドさんが困っていると
「なら…せめて〝さん〟でどうでしょうか？」
「リリアナ〝さん〟？」
「ふふ…なんか大人になった気分です！アーノルドさんみたいな素敵な大人の人にリリアナ〝さん〟なんて呼ばれるなんて！」
リリアナの喜んでいる姿にアーノルドも思わず笑顔がこぼれた。
「では、リリアナさん行きましょうか」
アーノルドが今度こそ手を差し出すとリリアナはそっと手を乗せた。
アーノルドはその手をスっと引き出し自分の腕に組ませる。
「今度ルシファー様から手を出されたらこうやって腕を組むといいですよ」
「は、はい！勉強になります！他には何か覚えておいた方がいいマナーとかありますか？」
リリアナは歩きながら沢山の質問をアーノルドさんにしてしまった。
家につく頃にはすっかり仲良くなっていると…
「今度食堂にも来てくださいね！」
「ええ、もちろんです」
アーノルドが笑って答えると
「私もまた…アーノルドさんのお店に行きたいけど…しばらくは無理そうです…」
寂しそうに言うと
「何故ですか？いつでも来てくれていいのですよ？」
「無理です！無理です！あんな高そうなお店…私じゃ払えなそうです」
恥ずかしそうに頬を染める。
「リリアナさんならルシファー様から頼まれていますからお金なんて取りませんよ」
アーノルドさんが言うと
「駄目です！あんな素敵な料理をお金を払わないで食べるなんて！それにルシファー様の負担にもなりたくない…ですから…」
「ルシファー様ならリリアナさんの事を負担になんて思いませんよ」
「そうかも知れません…でもやっぱりアーノルドさんの素晴らしい接待や美味しい料理にお金を払わないのは失礼です！」
リリアナが興奮していると
「ふふふ…リリアナさんは意外と頑固ですね」
アーノルドさんが可笑しそうに笑う。
「す、すみません…」
「謝らないで下さい、とても…素敵な考え方だと思いますよ…では、今度来る時は私とお食事しましょう」
「えっ…それってアーノルドさんが払うって事ですか？」
アーノルドさんが嬉しそうに笑うと
「そんな事…」
リリアナが断ろうとすると
「その代わりリリアナさんの食堂では私に奢って下さい」
どうですか？
アーノルドが笑っていると
「うーん…なんか上手く誤魔化されている気がしますが…」
リリアナが首を傾げているのを可笑しそうに見つめていた。
