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「おい…」
ブラッドが気まずそうに声をかける…その相手は
「……なんですか?」
ハクが嫌そうな顔で答えると
「俺だって好きで声かけた訳じゃ無い!いいからちょっと来い」
ブラッドが人気の無い方へと歩いて行くと
「それで…昨日の事ですか?」
ハクが切り出すと
「ああ…リリアナの手前、ああ言ったが…どうする?」
「どうもこうもあなたと食事なんてした事も無いのに!」
「だが…あの顔を見て仲悪いなんて言えるかよ…」
「ま、まぁ…それは確かに…」
ハクも話を合わせた手前気まずそうにすると…
「お前、直前で仕事でも出来たって断れよ」
ブラッドが唐突に言うと…
「はっ?」
ハクがイラッとする。
「俺がリリアナと二人で食事に行ってきてやるよ、どっか美味しい店にでも…」
ニヤッと笑う
「いいえ…私が連れて行きますよ。彼女どうやら和食が好きそうですからね…いい店を知ってますから」
ハクがお前が断れとばかりに言うと…
「巫山戯んなよ…誰がお前と二人で行かせるか!リリアナは俺が連れてきた子だぞ」
ブラッドが牙を剥き出し唸ると…
「巫山戯てるのはどちらですか?リリアナの世話を頼まれているのは私ですからね」
ハクの瞳がギラリと細まる…
「なら!リリアナにどっちと行きたいのか決めて貰おう!」
「望むところです!」
二人は仲良く、リリアナの元へと向かい出した…。
ちょうど昼休憩に食堂に二人で行くと…
ザワザワッ…
食堂に居たもの達がザワつく…
「なんだ…あの組み合わせ…」
「知るかよ…」
「戦争でも始まるのか?」
魔族達に緊張が走ると…
「リリアナ!ちょっと!」
ブラッドがリリアナに声をかけると…
「ブラッド?あっ!ハク様も!」
リリアナが笑顔で駆け寄ると
「リリアナちゃん…よくあれに近づけるな…」
「俺…目も合わせらんねぇよ…」
食堂はシーンと静まり返り…三人の会話に注目が集まった。
「ブラッド!ハク様!昨日はありがとうございました!」
リリアナがいきなりお礼を言うと…
「見てください!エプロンどうですか?」
リリアナが恥ずかしそうにしながらもエプロン姿を見せる。
「よくお似合いです」
「可愛いなぁ…」
ブラッド達の張り詰めて居た雰囲気が崩れる…
「そうなの!可愛いから汚したくなくて…つい慎重に動いちゃうんだ…」
リリアナが困った様にしてると
「そんな…汚れてもいいんですよ。気にせず使って下さい」
ハクが言うと
「ありがとうございます、大切に使わせていただきます」
ペコッと頭を下げる。
「それで?二人ともどうしたんですか?」
リリアナが二人を見ると…
「あっ…ああ…ほら昨日話した食事の事で…」
ブラッドがどっちがいいと、聞こうとすると…
「えっ!もしかしてもう日にち決まったんですか?嬉しい!二人と行けるの本当に楽しみです!」
リリアナが弾けんばかりの笑顔を見せると…
「いえ…それが…」
ハクが困った顔をすると…
「えっ…もしかして…駄目に…」
目に見えてリリアナのテンションが下がり…寂しい顔になってしまう…
「い、いえ!えっと…どんな店がいいかと…話していて!ねぇ…ブラッド?」
「ああ!そ、そうなんだ!俺は洋風がどうかと思ったんだが…こい…ハクが和風がいいと言うんで…」
「ええ!それでリリアナにどちらがいいか聞こうと…」
リリアナはパァーと笑顔になると…
「どっちもいいですね!うーん…迷うなぁ…あっ!そうだ!今回は洋風で次回は和風なんてどうですか?」
リリアナが二人に聞くと…
「「次回…」」
ブラッドとハクが同時に答える…
「駄目?」
リリアナが伺うように聞くと…
「いいな!」
ブラッドが笑顔で答える…
ハクが信じられない…とブラッドを睨むと…
「ハク様?」
リリアナが心配そうに聞く…
「やっぱり…ご迷惑でしたか?ハクが勧める和風のお店…行ってみたかったなぁ…」
ガッカリとしてると…
「行きましょう!」
ハクがニッコリと笑った。