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「歴史的文学女子会」シリーズ

ようこそ!歴史的文学女子会へ「少し遅めのバレンタイン」

作者: のん太

 歴史的文学女子会の第二弾です! 第一弾・クリスマスはこちらのURLから

https://ncode.syosetu.com/n0855ff/


 それではお楽しみください!

  私の名前は紫式部(むらさきしきぶ)。平安時代に仕事の傍ら趣味で同人小説『源氏物語』を出版したあの紫式部よ。そうよ、クリスマスのときにヤケ酒して酷い二日酔いになった紫式部よ!

 いつもの様に私の妄想の産物、イケない恋愛小説を書いていると突然、紀貫之(きのつらゆき)がドアをバンっと開けて入ってきた。


「そんなに焦ってどうしたの? っらゅき」


 私は尋ねる。どうせまたっらゅきのことだから「ブログのネタがない!」だの「新商品のレビューするから手伝って」だの言うのよ、と思っていると。


「違うの! 昨日はバレンタインだったのよ!」


「ば、ばれんたいんって何なの?」


「どうやらバレンタインって言うのは好きな殿方にチョコレートをあげる日らしいの! ぶ、ブログのネタがぁぁぁ……」


  っらゅきこと紀貫之はブロガーで『っらゅき☆ぶろぐ』っていう今話題のブログを書いているの。書籍化もされていて、この時代に来たときは驚いたわ。おっと、少し脱線してしまったわね。


「そのバレンタインっていうのは好きな殿方が居なければ関係のない催しでしょう?」


「それがそうでもないの。ワテクシが調べたところによると友達にあげる『友チョコ』、取り敢えず渡しておく『義理チョコ』何ていうものもあるようね。それからアナタみたいな嗜好の子は推しカプにチョコを渡したりす……」


「買いに行くわ!」


「決断が早いのはアナタらしいわね。それじゃあ、ワテクシもご一緒させてもらうわ。ワテクシもブログのネタが欲しいの」


 なんて素晴らしい文化なの! アニメや漫画にはもう慣れたけれど、推しカプに愛を示すことが出来る機会まで与えられているだなんて! これこそ『いとをかし』、よ!


「あら? わたくしの持ちネタパクるのやめてもらえるかしら? 不快よ」


「何よ少納言! 『をかし』はもののあはれを表す私達の時代の言葉で、あなただけのものじゃないでしょ?」


 こいつは清少納言。私のやることなす事にケチを付けてくるの。


「いいえ、この時代の人の多くは『をかし』が私の専売特許だと思っているわ。私の持ちネタと言っても過言ではないわ!」


「何よそのガバガバ理論! それに『をかし』がネタ扱いで言いのかしら? この前テレビで自称ロマンチックな殿方が少納言と『をかし』をネタにしてたわよ?」


 渾身の悪口。これで少納言も……。


「それは……。わたくし、……きなの」


「何? 聞こえなぁい」


 少納言は顔を真赤にして震えている。


「だから好きなのよ! わたくしはお笑いが好きなの!」


「えっ……?」


 嘘っ、あの堅苦しい少納言が?

 私は思わず吹き出してしまう。


「わたくしもチョコを買いに行くわ。……さんに渡したいから」


 少納言が付いてきて、っらゅきと私の3人でチョコを買いに来た。


「ほら、アレを見なさい。ゴ○ィバよゴ○ィバ。高級チョコのお店よ」


 な、なんですって!? 推しには高級チョコをあげたい! 横目で少納言を見ると、キラキラと目を輝かせていた。高級感が遠目からでも強く感じられる。私は何を買おうかとあれこれ考えていた。しかし、私は店内に入って一気に青ざめることになる。


「何……これ。高すぎでしょ!」


 並んでいる商品は0が3つだったり4つだったりするものばかり。まともな仕事もしてない私がこんな値段のもの買えるわけないじゃない!


「……わたくし、これにしますわ」


 少納言が手に取ったのは35粒入りで1万800円もする箱だ。そうか、少納言は売れっ子小説家でお金には困らないんだった!


「アテクシはこれとこれとこれ、あとあれも映えるわね……」


 っらゅきはブログに上げるために大量買い……。私どうすれば。このままじゃ推しにチョコが買えない!


「あれ? 紫先生に、皆さん揃ってチョコ買いに来たんですか? 私も誘ってくださいよぉ」


 店の奥から出てきた店員が突然話しかけてきた……と思ったら菅原(すがわらの)孝標女(たかすえのむすめ)じゃない。彼女は私の書いた源氏物語のレビューのようなもの『更級日記(さらしなにっき)』を書いた子で私のファンなの。でもなんで彼女がゴ○ィバにいるのかしら?


「昨日、今日で休日だったじゃないっすか。だからアタシ臨時でバイトしてるっす! ホントは昨日だけのはずだったんすが、どうにももう一日働いてほしいって……いらっしゃいませお客様、こちらの商品季節限定となっておりますが如何でしょうか?」


 接客との切り替がすごい。っていうか仕事休みの日にも働くとか……お疲れ様です。


「……私、そろそろ働かなきゃなぁ」


 そんなことを思いながらまだ寒い2月の夜道を進む。っらゅきはオフ会?とかいうのに行くとかでいなくなっちゃったし、少納言は急に仕事が入ったみたい。私なんか今じゃニートって呼ばれる状態じゃない。昔はエリートだった……ってそうだ、平安時代の時みたいに教育の仕事をすればいいのよ!

 そうと決まったら明日はハロワよ。


「あ、私住所ないわ」


 就活はまだもう少し先になりそう。

 次回、紫式部が就職!?

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― 新着の感想 ―
[良い点]  今作も楽しく読ませていただきました。  前作では可愛げのない女性だった清少納言の意外な一面が見られて良かったです。 [気になる点]  たぶん単純なミスだと思いますが、紀貫之の一人称が前作…
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